TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「辰樹と天樹」24

2016年11月18日 | T.B.2017年

 東一族が、走り回っている。

 市場もすべて閉め、
 家の扉を、固く閉ざす。

 辰樹はあたりを警戒しながら、走る。

 相手は、東一族の村に入り込んだ砂一族。
 相当の実力者のはずだ。

「どこにいるんだ」

 辰樹は耳を澄ます。

 耳を澄ましながら、

 先ほどの、補佐の話を思い出す。

 補佐は、目に病がある使用人、と云っていた。

 目の病。

 それだけで、どの東一族の者かはずいぶんと絞られる。

 しかも、女。
 屋敷の使用人。

「…………」

 一番に思い付くのは、未央子の友人。

「いやいや。まさか」

 立ち止まり、辰樹は首を振る。

 未央子の元に行って、その友人の所在を確認するべきだろうか。
 確認出来れば、その友人の疑いは晴れる。

「名まえは、何と云ってたかな……」

 辰樹は、口元に手をやる。

「えーっと。……小夜子(さよこ)、だったか?」

 と。

 何かの音。
 話し声。

「誰だ?」

 ……とりあえず証拠隠滅。

「これは、」

 ……君を、殺す。

「もしや」

 辰樹の額に汗が流れる。
 武器を握り、走り出す。

「どこだ!」

 辰樹の頭の中で状況が浮かぶ。
 このままでは、東一族が危ない。

 辰樹は声の元を追う。

「東一族に殺されたように、傷を入れてあげるし」

 砂一族の声。

「宗主付きの蛇に近い毒も入れてあげるからねー」
「や、」
「そうすれば、少しは俺の時間が稼げるだろー」
「いや……」
「ん? 誰か来るな」
「いや、」
「急ぐわ」
「助け、」

「やめろ!」

 辰樹は叫ぶ。

「あーあ。来ちゃったか」
「下がれ、砂一族!」
「何でだよ」

 薄笑い。

 そして、

「だめだ、やめろ!」

 辰樹は、紋章術を作動しようとする。

 が

 間に合わない。

 東一族の少女が何かを云う。

 砂一族は
 容赦なく手を振り下ろす。

 東一族の少女が倒れる。

 血が、流れる。

「おい、待て!」

 瞬間、

 砂一族は、走り去る。



NEXT

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。