TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」120

2014年11月21日 | 物語「水辺ノ夢」

扉を叩く音で、圭は目を覚ます。

・・・何事だろう。

そう、ぼんやり思い、
次の瞬間、圭は、慌てて体を起こす。
入り口へと駆け寄り、扉を押し開ける。

「杏子っ!!」

「え!?」

外に立っていたのは、杏子ではない。

「たか、・・・こ?」

圭は、辺りを見る。
高子が、そこにいる。
杏子はいない。

「杏子!!」

圭は、裏の小屋へ走る。

「ちょっと!」

高子も慌てて、圭に続く。
圭は、小屋の中へ入る。
「杏子っ」
小屋の中には、誰もいない。
「杏子!」
圭は叫ぶ。
「杏子、どこだ!」
必死になる圭を、高子は慌てて止める。

「ちょっと、落ち着きなさい!」

「杏子っ」

「ねえ、落ち着いて!」

高子は、圭を落ち着かせようとする。

圭は、辺りを見る。
誰もいない。

空を見る。
日は高い。

圭は、昨夜のことを思い出す。

日が出たら、杏子を中へ入れようと起きていたつもりだった。
けれども
いつのまにか、眠っていて
しかも
日は高くなっている。

圭は、再度、家へ向かう。

高子が何かを云うが、圭の耳には入らない。

圭は、家の中に入り、部屋を見る。
誰もいない。

「・・・杏子」

圭は、発作を抑える。

「大丈夫?」

高子が、圭を覗く。

「高子・・・」

圭は、言葉を絞り出す。
「昨日・・・、」
「ええ」
「・・・杏子が」
「杏子が?」
「杏子が、その・・・、いない」

「杏子なら、うちの病院にいるわよ」

圭は目を見開く。
高子を見る。

高子を見て、圭は、息をのむ。

高子の表情が、冷たい。

「うちに、運ばれて来たの」
「・・・運ばれたって」
「なかなか、あなたが来ないから、呼びに来たんじゃない」
「だって、・・・いったい、何が」

「状況は、詳しくは判らない」

高子が云う。
「まだ、意識が戻らないの」
「意識?」
「なのに、なぜ、あなたはすぐに来ないの?」

高子は、圭を見る。

「まあ、その様子を見ると、何かあったようね」
「・・・高子」
「私は病院へ戻るわ」

高子は、圭に背を向ける。

「伝えることは、伝えたから」

そう云うと、高子は足早に去っていく。

「杏子・・・」

突然のこと。

何もかも、突然のことに、

ただ

圭は、戸惑う。

もはや、高子の姿は見えない。

圭は、無意識に空を見る。

・・・そうだ。

自分は

杏子を、・・・助けられなかったのだ。


NEXT 121

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。