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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」190

2017年03月17日 | 物語「水辺ノ夢」

「真都葉行くよ」

また、数日経って。

圭は、出かける準備をする。
怪我の経過を見せに、真都葉を病院に連れて行くのだ。

「真都葉、何か持っていくの?」
「いろがみー!」

真都葉は、手にいろいろと持っている。
持っていくつもりなのだ。

「まあ、そんなに」
「せんせいにみせるのー」

杏子は、真都葉にカバンを持たせる。

「ほら、これに入れて。ね?」
「うん!」

圭は外を見る。

日は落ちようとしている。
辺りには誰もいない。

「さあ、真都葉」
「いってきまーす」

圭は真都葉と手をつなぎ、歩く。

「おそと、くらいねー」
「そうだね」
「おつきさまくるの」
「うん」

真都葉は、久しぶりの外に、うろうろしようとする。

が、
圭は出来るだけ、真都葉を歩かせようとする。

真都葉は、人に見られてはいけない。
急がなければ。

「つかれちゃったよー」
「仕方ないな」

圭は、真都葉を抱き上げ、歩き出す。

足早に病院へと入る。

圭は、高子の診察室へと向かう。
中には、高子しかいない。

「いらっしゃい」
「せんせー!」
「真都葉、怪我はどうかしら?」
「いたくないよー」

云いながら、真都葉は色紙を出す。

「これね、せんせーに」
「あら、何かしら」
「真都葉、診察が先だ」

圭が止めるのも聞かずに、真都葉はどんどん色紙を出す。

「こっちがおはなで、こっちがけーき!」
「真都葉が作ったの?」
「うん!」
「すごいわね」

高子は云いながら、真都葉の診察をする。
その横で、真都葉はおしゃべりを続ける。

「高子、すまない」
「いいのよ」

高子が云う。

「家族以外の人に会う機会が少ないだろうから」
「・・・ああ」
「誰か、ほかの人と接したいんだと思うわ」
「・・・・・・」

「せんせーこれね!」
「真都葉、たくさん作ったのね」
「こっちがへびで、こっちがふうせん!」

「はい終わり!」

てきぱきと高子は、診察を終わらせる。

「もう、大丈夫そうね」
「よかった・・・」
「傷口の痕は、出来るだけ清潔にするようにして」
「わかった」

高子は、真都葉を見る。

「真都葉、新しい色紙は持って来たのかしら?」
「もってきた!」
「何か作ってもらえる?」

その言葉に、真都葉の顔が明るくなる。

「せんせー、ここでつくってもいい?」
真都葉は、机を指さす。
「いいわよ」

真都葉が色紙に夢中になっているのを見て、
高子は圭に向く。

「圭」
「・・・高子?」

「よくない噂を、聞いたのだけど」

「・・・噂?」

「ほら。覚えてる?」

高子の表情は硬い。

「いやな予感がするって、云ったこと」



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