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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」180

2017年02月10日 | 物語「水辺ノ夢」

「悟・・・」

「伝えることは伝えたぞ」
「・・・・・・」

つまりは、警告。

東一族の杏子を棄てろ、と。

圭は首を振る。
歩き出す。

悟は何も云わない。

圭は悟の横を通り過ぎる。
そのまま、歩く。

振り返らない。

圭の頭の中を、悟の言葉が繰り返される。

村人の疑心。

もしかしたら
これから、同じようなことが起きるかもしれない。
誰か
また、別の人によって
杏子や真都葉に、危害が及ぶかもしれない。

このまま

自分と杏子、真都葉の3人で
静かに暮らすことは出来ないのだろうか。

自分たちは、

いや、

杏子と真都葉は、西から出ることが出来ない。
悟にどう云われても
これ以上、何もすることが出来ないのだ。

「圭?」

家の扉が開く。

杏子が顔を出す。

「ああ、よかった。やっぱり圭だった」

杏子が云う。

「誰かいるような気がしたけれど、なかなか扉が開かないから」
「・・・ごめん」

杏子は圭を見る。

「どうかしたの?」
「ああ。いや、」

圭は、額に手をやる。
少し、不自然だったかもしれない。

「真都葉に、何か・・・?」
「違う違う」

圭が云う。

「今日の夕方、退院出来ることになったんだ」
「まあ、本当に」

杏子の顔に笑顔が戻る。

「よかったわ」
「また、すぐに病院に戻るよ」

「夕食は、何か真都葉の好きなものを、」

云いながら、杏子は動き出す。

圭は、その後ろ姿を見る。

悟の言葉が、また、聞こえてくるのを振り払う。

「圭?」

杏子は、驚いて顔を上げる。

圭は、杏子を抱きしめる。



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