TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」110

2014年10月17日 | 物語「水辺ノ夢」

杏子は、圭の祖母を見る。

ただ、敵としてしか、知らなかった西一族。
実際に、東一族と戦っていた西一族。

それなのに、
今は、

杏子の手を握り、感謝をしてくれている。

杏子は、下を向く。
圭の祖母の手を、握り返す。

「両一族の事情で、もう、向こうへは帰れないだろうから」

祖母が云う。

「あんな圭でも、頼っておくれ」

杏子は、小さく頷く。

「さ。それをしまって」
圭の祖母は、杏子が握る装飾品を指さす。
「まあ、・・・圭の母親には気付かれない方がいいかもねぇ」
冗談っぽく笑う圭の祖母に、杏子の表情も緩む。

圭の祖母を見つめ、杏子は、装飾品を握り締める。



突然、圭の祖母が咳き込む。

「おばあさま!?」

杏子は慌てて、圭の祖母を支える。

「・・・だっ」
「血が!!」

杏子は圭を呼ぶ。

「どうした!?」
「圭、医師様を! ・・・お医者様を!!」

圭は、祖母に駆け寄る。

「おばあさまが血を!」
「ばあちゃん!」

圭が、祖母の顔をのぞき込む。
祖母は、苦しそうに息をし、その目は閉じられている。

「ばあちゃん、しっかり!」
「おばあさま!」
「今、高子を呼んでくるから!」

圭は、走って部屋を出る。

「おばあさま!」

杏子は、圭の祖母を呼ぶ。

けれども、反応は、ない。


NEXT 111

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。