杏子は、圭の祖母を見る。
ただ、敵としてしか、知らなかった西一族。
実際に、東一族と戦っていた西一族。
それなのに、
今は、
杏子の手を握り、感謝をしてくれている。
杏子は、下を向く。
圭の祖母の手を、握り返す。
「両一族の事情で、もう、向こうへは帰れないだろうから」
祖母が云う。
「あんな圭でも、頼っておくれ」
杏子は、小さく頷く。
「さ。それをしまって」
圭の祖母は、杏子が握る装飾品を指さす。
「まあ、・・・圭の母親には気付かれない方がいいかもねぇ」
冗談っぽく笑う圭の祖母に、杏子の表情も緩む。
圭の祖母を見つめ、杏子は、装飾品を握り締める。
と
突然、圭の祖母が咳き込む。
「おばあさま!?」
杏子は慌てて、圭の祖母を支える。
「・・・だっ」
「血が!!」
杏子は圭を呼ぶ。
「どうした!?」
「圭、医師様を! ・・・お医者様を!!」
圭は、祖母に駆け寄る。
「おばあさまが血を!」
「ばあちゃん!」
圭が、祖母の顔をのぞき込む。
祖母は、苦しそうに息をし、その目は閉じられている。
「ばあちゃん、しっかり!」
「おばあさま!」
「今、高子を呼んでくるから!」
圭は、走って部屋を出る。
「おばあさま!」
杏子は、圭の祖母を呼ぶ。
けれども、反応は、ない。
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