TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」33

2017年12月05日 | 物語「約束の夜」

「ええっと、ええっと」

どこに行けば良いのだろう、と
京子はあてもなく走る。

「美和子を捜さないとだし、
 満樹もどこに行ったの~」

敵対している一族同士とはいえ
まさか、このまま
さようならという事も無いだろう。

「お宿代も返さなきゃ」

すでに会計済みだった。

「それにしても、お腹空いた」
「………」
「朝ご飯食べてないし。
 フラフラする」
「………子」
「どうしよう。
 少し口に入れておくか、それとも」
「………京子」
「ここはあえて、
 みんな合流してから
 パーッと盛大に」
「京子!!」
「!!!?」

いつの間にか村の外れまで来ていた京子は
呼び止める声に振り返る。

「ちょっと、早いってば。
 待って京子」
「み」

京子は思わず飛び跳ねる。

「美和子!!!」

「やっと見つけたと思ったら、
 なかなか止まらないんだから」
「美和子―!!!
 何処にいたの、心配したんだから!!」

昨晩に関してはお互い様だと
分かりながらも
京子は立て続けに話しかける。

「良かった。
 事件に巻き込まれたんじゃないかって
 気が気じゃ無かったのよ」

寝坊、したけれど。

「会えて良かったわ京子」

にっこりと、美和子が言う。

「私もよ、
 色々あったのよ昨日」
「ねぇ、京子。
 もう一人は何処に行ったの?」
「………ん?」
「もう一人居たでしょう。
 東一族の男」
「その話どこで?」
「東一族と西一族が一緒に歩いていたのだもの。
 そりゃあ目立つわ」

美和子は京子の手をぎゅっと握る。

「でも、美和子」

なんだろう。
なにか少し怖い、と
京子は一歩後ずさる。

「私達。
 誰にも見られていないのよ」

南一族の民家を二人で抜け出したのは夜遅く。
可能性があるとすれば宿だが
そこから話しが伝わるには早すぎる。

「そう、それなら
 仕方ないわね」

美和子はため息をつく。
けれど、
京子の手を離してくれない。

ぐっと腕を掴み、
手袋を剥がす。

「このアザがある男は、
 どこに行ったのって聴いてるの」

「満樹の事なら分からないの。
 宿にはもう居なくて。
 美和子、どうしたの、こわいよ」

京子は背後に、気配を感じて振り返る。
フード付きのマントを羽織った者が二人。

顔も性別も良く分からない。
でも、
昨日京子達を襲った者達も
こういう格好ではなかったか。

「この子、知らないみたいよ」

身構えようとしていた京子は
美和子の言葉に驚く。
今、美和子は彼らに向かってそう言ったのだ。

「じゃあ、とっとと連れて行きましょう。
 こんな事なら
 北一族の村で済ませとけばよかったわ」

「みわこ?」

北一族の村?
美和子は何を言っているのだろう。
なぜ彼らと話しているのだろう。
連れて行こうとはどこに。

理解出来ずに、
京子は頭の中が真っ白になる。

このままではいけないが
3人を相手にしては
動くことも出来ない。

「っぐああ」

近寄ってきていた一人が吹き飛ばされる。

「誰だ!?」

あぁ、昨日から
満樹には助けられっぱなしだ。

京子は振り向く。

「そこの嬢ちゃんを
 よってたかって三人がかりとはなにごとだーーー!!」

どーん、と
南一族の飛鳥が立っている。

京子は思わず呟く。

「あ、違った」



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