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枕営業はビジネス?東京地裁、驚きの判決に至った要因

2015-06-06 | 報道・ニュース
夫と長年にわたって肉体関係にあったことを根拠として、その妻が銀座のクラブのママを相手に不貞の慰謝料を求めました。

昨年4月の裁判では、東京地裁が「クラブのママやホステスが顧客と反覆・継続的に性交渉をした場合でも、それが『枕営業』であると認められる場合には、売春婦の場合と同様に、顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではなく、妻との関係で不法行為を構成しない」との判決を下し物議を醸しています。

最高裁は、昭和54年3月30日に「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の情愛によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである」との判決を下しており、これが裁判実務の基軸に据えられてきました。

そして、この最高裁判決による限り、第三者が枕営業をして夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った場合であっても、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯びるというのが伝統的な解釈でした。

しかし、前記の東京地裁はこのような伝統的な解釈を覆し「『枕営業』の場合には何ら婚姻共同生活の平和を害するものではない」と判断しているのです。確かに、伝統的な裁判実務の考え方からは外れたような判断で、首を傾げてしまうところですが、第三者に対する不貞の慰謝料請求権を認めることそのものに、否定的な見解も根強いところです。

夫と妻は自由意思で婚姻関係を結んだのであり、婚姻共同生活の平和を維持する義務も、そのような婚姻関係から導かれる相互の義務であって、それとは無関係な第三者の義務ではなく、配偶者以外の第三者と肉体関係を持つかどうかも他方配偶者が自由意思で決めたものであるから、責任を負うべきなのはあくまでも他方配偶者だというものです。

また民法711条によれば、被害者のみならずその近親者が加害者に慰謝料請求できるのは、被害者の生命が侵害され、あるいはそれと比肩し得る重大な傷害を負わされた場合に限定されています。

それゆえ、妻が第三者から強姦の被害を受けたに止まる場合、夫は第三者に対し慰謝料請求できない可能性が高く、そうであれば、強姦ではなく妻が自由意思で第三者と肉体関係を持った場合には、なおさらのこと夫は第三者に対し「慰謝料請求できないはずではないか」ということも根拠に挙げられています。このような第三者に対する不貞の慰謝料請求そのものを否定する立場からすれば、この東京地裁の判決は、理由はどうであれ、結論そのものは支持されることになります。

夫婦というものが、それぞれ独立した自由な人格的主体であって、相互に身分的・人格的支配を有しないものであるということが強調されてくるようになれば、伝統的な裁判実務の考え方そのものが変わってくるかも知れません。

なるほど。


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