週末の東京株式相場は大幅安。日経平均株価は3日ぶりに反落し、一時は275円安まで下げる場面があった。海外為替市場で円高が進行したため、トヨタ自動車などの自動車、ソニーなどの電機、オリンパスなどの精密機器といった輸出関連株が総じて下落。収益状況が期待ほどではないとされた銀行株もメガバンク中心に売られ、銀行株指数は業種別値下がり率首位となり、終値では2日ぶり年初来安値を更新した。
三菱UFJ投信運用戦略部の石金淳シニアストラテジストは、「内需の勢いが弱いだけに、為替の円高は企業業績の増益率鈍化につながる可能性がある。ただし、円高が急激に進展するとは予想しておらず、短期的には反発に備える局面に入ったのではないか」と見ていた。
日経平均株価の終値は179円63銭(1.1%)安の1万5734円60銭、TOPIXは14.83ポイント(1.0%)安の1538.04。東証1部の売買高は概算で14億 5059万株。値上がり銘柄数は561、値下がり銘柄数は1064。 日経平均はこの日、10月24日に直近高値1万6901円を付けて以降の調整相場における安値を更新。今週の週間ベース下落率は2.2%安と、7月2週(3%)以来の大きさとなった。
東証業種別33指数の騰落状況では、値下がり業種が26、値上がり業種が7となっている。値下がりが顕著なのは銀行や保険、その他金融などの金融株、非鉄金属や鉱業などの資源関連、輸送用機器や精密機器などの輸出関連株。半面、景気変動に影響を受けにくい医薬品、原油安メリットが期待される海運、不動産などが高い。
海外で円高進行、来週は日銀幹部の講演週
23日の海外為替市場では、米新規失業保険申請件数(季節調整済み)が増加したことで米鈍化懸念が台頭。さらに欧州当局者の円安けん制発言も円買いにつながり、ドル・円相場では一時1ドル=116円4銭と9月7日以来、約3カ月ぶりの円高水準をつけた。
東京市場では上昇スピードの早さに対する警戒感から円売り圧力が高まったものの、円高への警戒ムードは休日の谷間の東京市場にとって新たな売り材料となった。大和住銀投信投資顧問の門司総一郎チーフストラテジストは、「上半期の企業業績は円安で底上げされていたため、円高傾向は悪材料と受け止められやすい」と話していた。
もっとも、三菱UFJ投信運用戦略部の石金氏によると、「日米金利差の大きさは円安圧力になる半面、欧州やアジアで高まる政治的な円安けん制は円高圧力につながる。両者の力がきっ抗して1ドル=114-121円のゾーンでの範囲内の動きが続きそうで、一方的かつ急激な円高が続く可能性は低いだろう」と指摘していた。
なお、来週には27日大阪を皮切りとする日本銀行福井俊彦総裁の講演や30 日には野田忠男審議委員の講演会が岡山市で開かれる。日本銀行の福間年勝審議委員は24日午後の講演で早期利上げに踏み込まなかったが、市場が利上げと為替動向をにらむ状況は来週も続く公算がある。
銀行株が売られる、三菱UFJは安値に並ぶ
この日は為替の円高が要因となって輸出関連株中心に下げる中、特に下げのきつかったのは銀行株。中間決算で連結純利益が大幅減益となった三井住友フィナンシャルグループは売買代金トップで5%安の113万円まで下げ、9月安値 112万円に接近。三菱UFJフィナンシャル・グループは一時5万円安の137万円と年初来安値に並んだ。みずほフィナンシャルグループも反落。
銀行株について、市場では「貸し出し増加や利ざや改善が期待ほど進んでいない上、景気先行きに不安な見方が出ていることも影響している」(三井住友アセットマネジメント国内株式アクティブグループ・生永正則ヘッド)との声があった。
テクニカル的にはボトム接近も
日経平均が直近安値を下回り、下値不安が浮上してきた一方、テクニカル的には底値が接近したとの見方も出ている。日興シティグループ証券の吉野豊テクニカルアナリストは、「今回の下げは新たな波動ではなく、6月以降のリバウンドの調整の範囲。日柄的には10日に底打ちが失敗したことから、28日をめどに終了する可能性が高い」と指摘した。
吉野氏によると、日経平均の下げのめどは6月以降の調整の最大幅1200円を今回に当てはめた1万5600円どころか、6月底入れから7月4日までの上げ幅1400円を当てはめた1万5390円が想定されると分析。RSIや騰落レシオなどの指標でも売られ過ぎによる底入れ接近シグナルが出ているという。
ゼンリンやニトリが急騰、医薬品も堅調
半面、上昇銘柄では、ネット新時代のコンテンツ企業として野村証券が投資判断を新規「買い」としたゼンリンが東証1部値上がり率2位。粗利率悪化幅が大きく低減したとしてゴールドマン・サックス証券が投資判断を引き上げたニトリ、経営スピードの早さが業績好調につながったと評価されているメガネトップなどが急伸した。 医薬品株では、クレディ・スイス証券が投資判断を引き上げた第一三共が上げ幅を拡大し、武田薬品工業も堅調。