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Nikon D80
2008/01/27 11:36:42.8
レンズ: 17-70mm F/2.8-4.5 G
焦点距離: 70mm
露出モード: 絞り優先オート
測光モード: 中央部重点測光
1/2000 秒 - F/4.5
露出補正: 0 EV
感度: ISO 100
私は昔からほとんど本を読まない不勉強家だが、<ネット未来地図>に引き続き<過剰と破壊の経済学「ムーアの法則」で何が変わるのか?、池田信夫著>を昨日の出勤途中の東海道線の中で読み終えた。<ネット未来地図>を読み終えたのは1月27日のことなので、私にしてはハイペースである。
さて、この<「ムーアの法則」で何が変わるのか?>は、読んだ後にこの本のことを人に語りたくて仕方がない興奮を覚えた久しぶりの本となった。「ムーアの法則」とは、インテルの創業者であるゴードン・ムーアが1965年に提唱した経験則で「半導体の集積度は18ヶ月で2倍になる」という法則である。そして、私が新入社員となり研究所に配属されて(1983年)、並列コンピュータの研究を開始した直後から意識し始めた法則である。このころは、半導体の集積技術がどんどん進み1Mbit DRAM、2万ゲートのゲートアレイ、アドレス変換等の汎用機の技術を組み込んだインテル80386CPUが出てくる直前くらいの時期で(今となっては古い技術)、かつ、「ムーアの法則」の限界が見え始めたのでそれを並列処理で補って性能を上げるべしと言われていた時期である。それで一生懸命並列処理の研究開発をしていた。
ところが、その1983年から25年も経っているのにまだ、「ムーアの法則」が成り立っている。また、この本によればあと10年もこの法則は効力を発揮続けるのだそうだ。私が思うには、10年後にはまた何らかのブレークスルー技術が開発され、私が生きている間はまだこの法則が成り立っているような気がする。何故かと言えば、1983年ころにも大学の先生達が技術的な根拠を基に「ムーアの法則」はもう限界で、その限界を打ち破るのは「並列処理」しかないと言っていたにも関わらず、いまだ限界となっていないからである。
1980年代から「ムーアの法則」が続くことによって世の中が劇的な変化が起こり、現在に至っているのは感慨深いのと、この変遷を学生時代からITを専門とした技術者として見続けられているという事実に少しうきうきしている(1993年に、ウェブが米国(の大学)で広まり始めた現場を見たのもラッキー)。私が入社した1983年当時は、インターネット(電子メール、ウェブ)、携帯電話、デジタルカメラ、ハードディスクレコーダ、デジタルテレビもなかった。インテル8086の上で16ビットOSのCP/Mが動く普及パソコン(マイコンはその前からあるが)が出始めたばかりであった。余談であるが「並列処理」に話を戻すと、私の経験から言えば、この「並列処理」は、「アムダールの法則」というのがあり、この本で述べられているボトルネック、つまりソフトウェア(=人間)に依存するため、一部の特殊な分野を除いてそう簡単に劇的な性能向上が望めるものでない。
さて、本書は、第1章で、ムーアの法則が成り立つ技術的な根拠を述べ、第2章で約40年間で1億分の1のコストとなった半導体のもたらす変化、つまり、ムーアの法則がもたらす変化を9項目に分けて述べている。その9項目は以下の通り。
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情報インフラはコモディティ化(日用品化)する
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問題はボトルネックだ
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人間がボトルネックになる
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情報は個人化する
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垂直統合から水平分業へ
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業界の境界はなくなる
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中央集権から自律分散へ
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系列関係から資本の論理へ
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国際化からグローバル化へ
第3章では、この変化にどう対応するか、以下の4項目に分けて書かれている。
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情報コスト1/100の世界を想定する
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水平分業で生き残るには
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ものづくりからサービスへ
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産業政策から資本市場へ
この目次を見るとタイトルどおり経済学的な記述が中心のように見えるが、その中にはコンピュータ、通信、放送に関わる技術の進歩、ビジネスの変遷が書かれており、技術者が読んでもよく調べてまとめられており関心した。IBM、DEC、インテル、マイクロソフト、アップル、モザイク、ネットスケープ、Google、光ファイバー、DSL、MPEG、NHK、BBC、iPOD、Wii、ユーチューブ、個人情報保護法、著作権、携帯電話、インターネット等の話題も出てくる。
少し話が飛ぶが、本書の結論に近い部分。今後の新しいメディアの本命が何になるのかは誰もわからず、いろいろなものに幅広く投資してステージごとに成果を見て取捨選択し、結果として10の内、ひとつでも成功すればよいと割り切るしかない。また、この考え方は、多様なオプションを持つことでリスクをヘッジする金融商品のようなもので合理的であるといっているのはその通りと思う。この当たり前のように見えることを実行できないことが、独創的な技術、アイディアで業績を伸ばす企業が出てこない日本社会の課題のような気がした。ベンチャー企業を育成する仕組みがないこと、企業の内部もそのような組織構成、考え方になっていることがボトルネックか。
とにかく、切れのある本であり、ITの今後10年を考える上でヒントを与えてくれるお勧めの書である。