期待の2台目「シルバーマニア」も素人の自分にはどうにもならない状態な様です。
残された方法は
・更にもう1台、起動するCZ-800Cを手に入れてメイン基盤ごと移植。
・レッドマニアにシルバーマニアのパーツを移植してみる。
これぐらいしか思いつきません。
起動する個体からパーツ取りするのは少し勿体ない気がするので
まずはシルバーマニアのメイン基板パーツを使って、レッドマニアの修理を試みます。
修理出来ない場合は、再び不動のマニアタイプを待つしかないorz
その前に、レッドマニアとシルバーマニアの故障個所の違いを比較してみましょう。
キーボードの修理が完了しているので、主にカセットドライブの動作確認などです。
●レッドマニア復活へ向けての挙動テストと考察
まずはソケットに刺さっているICや、カセットドライブのテストをしてみましょう。
○「Z80」 : メインCPU(ボード右下IC77)
これが無いと画面表示すらされません。
しかし、これが無くてもイジェクトは可能です。
だから何だと言う話なのですが、意外とこの様な些細な情報は発信されませんので
故障個所の切り分け用にログに残しておこうと思います。
つまり、「イジェクト出来ます」=「起動します」の式は成り立ちません。(「自動でイジェクトされます」ならOKかな?)
この事から、レッドマニアはZ80CPU以外に問題がある可能性が高いと思います。
・レッドマニアはIPL起動はするがIPL待機まで行かない。イジェクトも出来ない。
・シルバーマニアはIPL起動しているのかすら不明。イジェクトは出来る。
○「IX309CE」 : IPL-ROM(ボード右下、Z80のすぐ上IC76)
レッドマニア、シルバーマニアともに挙動は変わらず。
これが無いと、画面表示すらされません。
レッドマニアのIPL-ROMの故障を疑って、シルバーマニアのIPL-ROMをレッドマニアに積んでみましたが挙動は変わりません。
レッドマニアは一応IPLは動作している風なので、どちらのIPL-ROMも生きているのではないでしょうか。
○「M80C49-22」 : サブCPU(ボード左下IC2)
これが無いと、タイマーランプが付きっぱなしになります。
タイマー制御をこのICで行っているのでしょうか?
カセット制御にも関係しているらしく、イジェクトすら動きません。
レッドマニアはICを積んでいてもイジェクト出来ない事から
このIC周りの回路が損傷している可能性があります。
○「IX0286CE」 : ANKフォントROM(ボード左上IC4)
このICが無いと、画面に文字が全く出ずに画面が真っ白になります。
シルバーマニアは文字が正常に表示されない為に、
最初はフォントROMが壊れて文字が化け化けなのかと思ってましたがそうでは無いらしい。
電源を入れ直す度に表示される文字が少し違う為、一応動いていると思われます。
レッドマニアにシルバーマニアのANKフォントICを付けてみると文字が表示される為、
シルバーマニアの表示がバクっている原因は他にありそうです。
○今回の故障とは関係なさそうなIC(ボード左上)
「MB8416A-15」ソケットに3個。X1センターさんの情報によるとPCG-RAM?の様です。
「AY-3-8910」SOUNDチップの様です。
どちらも起動しない状態では変化がありませんでした。
○「D8255AC-5」 : メインボードに直付けされているIC(ボード左中央IC1)
回路図を見た感じ、サブCPUと一緒にカセット関係の制御をしているのでしょうか?
その他IC10から外部装置に繋がっている感じです。
レッドマニアはイジェクトが効かない事から、このICがお亡くなりの可能性も否定できません。
レッドマニアの最初の方の写真で、足がかなり錆びていたのがこのICです。
怪しいのでテストしてみたいのですが、基盤直付けなのでお手軽にテストとはいきませんでした。
○カセットドライブの制御テスト
レッドマニアのパーツは(R)、シルバーマニアのパーツは(S)です。電源は全てレッドマニアの物でテストしました。
メイン基板(S)+カセット基盤(S)+カセットドライブ(S): イジェクト、早送り、停止、巻き戻し 全て動きます。
メイン基板(S)+カセット基盤(R)+カセットドライブ(R): イジェクト、早送り、停止、巻き戻し 全て動きます。
メイン基板(R)+カセット基盤(R)+カセットドライブ(R): 早送り、停止、巻き戻しはOK。イジェクトのみ動きません。
メイン基板(R)+カセット基盤(R)+カセットドライブ(S): 早送り、停止、巻き戻しはOK。イジェクトのみ動きません。
メイン基板(R)+カセット基盤(S)+カセットドライブ(S): 早送り、停止、巻き戻しはOK。イジェクトのみ動きません。
以上のカセットドライブの検証から、カセット基盤やカセットドライブが悪くてイジェクトされない訳では無さそうで
結局はメインボードの故障個所の違いだけな気がします。
再生はIPL待ち受けからしか動かないと思いますが、レッドマニアのイジェクトが動かないのは” 問題あり ”な気がします。
そしてレッドマニアは改造品で、改造によりメインボードが損傷した可能性も否定できません。
改造個所は、カセット制御基盤の15ピンコネクタ「F」の裏側で
14,15番ピンに同軸ケーブルがハンダ付けされており、現在はその同軸ケーブルが鋭利なもので切断された状態。
コネクタF15は「GND」,コネクタF14は「WRITE DATA」なので、直接データのやり取りをしようとしたのでしょうか?
そんな事が可能なのかどうなのか素人の自分には分かりませんが、他にこの線を繋ぐ理由が思いつきません。
●故障個所の特定と修理
では、メインボードのどこが悪いのか?
まずは、先ほど「問題あり」と判断したイジェクトを直す事から考えてみようと思います。
最初は、IPLが起動完了と同時に自動イジェクトされるのかとも思いましたが
現時点でもIPLが起動しようとしているのは間違いなく、途中でエラーが出ている雰囲気です。
だとすると、「ひょっとするとイジェクト出来ないからIPLが正常に起動しないのではないか?」と考えたからです。
カセット制御の15ピンコネクタ「F」から逆に辿っていくとIC1とIC2に辿り着きます。
IC2はサブCPUで主にモーター制御を担当しているのでしょうか?
IC1はLED表示や、スイッチ判定の入出力と繋がっている気がします。
イジェクトを見てみると、バッテリー直ぐ横のIC20(例のNOT回路っぽいインバータ?)を通って、そのままIC1に繋がっています。
なので、素人の頭で考えられるイジェクトが出来ない原因は
1、カセット制御コネクタFからIC1までの回路の断線
2、IC20の内部損傷
3、IC1の内部損傷
4、IC1と連携している他の回路の損傷
の何れかだろうと言うのが素人判断。
ハッキリ言って4番だと自分にはお手上げ。調べる範囲が広くなって回路を追っても動作が分かりません。
2番と3番なら、ジャンクのシルバーマニアのICを付け変えてみる事は可能(シルバーマニアはイジェクト出来る為)
1番ならジャンパー線を飛ばせば特に問題無さそう。
と言う訳で、1番から順番にテストしてみましょう。
まずは導通テストをしてみた結果、基盤の断線は無さそうでした。
となると、次はICの交換に挑戦してみるしかありません。
怪しいICがいくつかありますが、1個交換する度にテストしていては色々と手間と時間がかかるので
どの道シルバーマニアの復活は難しいと判断して、レッドマニアで怪しいICはシルバーマニアより纏めて移植してみる事にしました。
IC1、IC2の下駄、IC9、IC20辺りですかね。
IC2は交換しても動作は変わらなかったのですが、レッドマニアの方は足が変色していた為、ソケットも交換しておきましょう。
IC1とIC2(サブCPU)の下駄は、足の数が多いですが割とすんなりハンダが吸い取れたので比較的楽に外れましたが
バッテリー周りのIC9とIC20は、以前見て頂いた通り表面が黒化&硬化してしまっていて、なかなか外れないorz
何とかIC3個と下駄1個の取り外しに成功。
IC9とIC20は、かなり時間がかかって苦労しました...
ハンダが吸い取れないので、溶かしながらジワジワ足を浮かす方法しか外す手を思い付かず
ボロボロになりながらも何とか外す事が出来ました。頑丈なビアとパターンに助けられた感じですね。
レッドマニアのサブCPUのICソケット内部を見ても怪しかったので、外して正解でした。
左2枚がレッドマニアのソケットで、右下が腐食して変色しています。軽く掃除しただけでは全く取れてなかった...
一番右の写真の右側がシルバーマニアのソケット。写真で見ると分かりにくいですがこちらの方が綺麗です。
IC9がビア含めて結構ヤバいですが、カセット制御回路に繋がっているIC20の方が今回は関係ありそうな気がします。
IC1とIC2のスルーホールは綺麗でしたが後々黒化してくるのが心配だったので、ハンダを入れ替えました。
一応、パターンの怪しい所は導通チェックしておきます。
慎重にICを取り付けます。
ハンダ不良が無いか点検して、見た目は一応完成♪
●動作テストです。結果は....?
カセット部分はまともそうなシルバーマニアのドライブに、レッドマニアのメインボードと電源を付けてテストです。
ドキドキが止まらない!!!
満を持して電源ON!!
うわ~~~~~~~!!!!
!!1!11!111!!!!!
来たぞぉ~!!!
長らく見たかった、マニアのIPL待ち受け画面が表示されカセットデッキが自動でイジェクトされました。
「よーし。ロードテストもするぞぉ!!」
初めて再生ランプが付いたと思ったら、一瞬で消えたorz
うん、ピンボケで再生ランプと認識できないw
再生してすぐ止まる症状は、X1Cではテープエンドスイッチが入りっぱなしか
巻き取り駆動用のプーリーが回っていなくて、テープエンドと勘違いしている可能性があります。
カセットデッキ内部を見てみると、巻き取り駆動ベルトがモーター側プーリーのさらに内側の軸にかかっていました。
どうやら組み付けの時に外れてしまったらしいです。
元々付いていたベルトで張りも弱い為に後々付け替えたい所。
何はともあれ、最大の難所である基盤修理が完了したと思われるため、ホッと胸を撫で下ろしています。
これでダメなら、もう1台ジャンクを買って色々実験するしかありませんでした。
雰囲気も大事と言う事で、折角なのでカセットデッキのフロントパネルをレッドマニアパネルに付け替えてテストを続けます。
JODAN-DOSのロードテスト。問題ありません。
みんな大好き「ゼビウス」です。しかしPCG定義を通過しても画面が表示されません。
はい。G-RAMが必要なのです。G-RAMのないマニアタイプは多くのゲームが動かないのです。
勿論、その事を承知していたためG-RAM付きのレッドマニアを最初に購入したのでした。
G-RAM、合体!!
再びロード
あれ?表示がオカシイ気が...まだ完全に直ってないのか、それとも壊れた...?
アプコンの設定を切り替えてみるとタイトルでた!!けど、明らかにオカシイw
しかしこの画面はギャラクシアンがPCG定義でバグった表示になったのに似ています。
なのでアプコンの設定を色々触ってみると「V Position」を調整すると正常に表示されました。
まだ100%ではありませんが、一応の目標は達成です。
長い道のりでしたorz
●少しだけ綺麗にしてみた
窓より上だけ艶出ししてみました。
下側に白い擦り傷があります。塗料が付いてる感じなので磨けば色は落とせそう。
白色は落ちたけど、一部だけ磨くと光の加減でこうなりますw
背面パネルも意外と綺麗でした。
光の加減で角のボコボコが目立ちますね。
無理やりゴリゴリやって角を整えた方がマシになるかのかな?
さらなる仕上げは、また別の機会にでも。
現状でも、レトロインテリアとして十分機能するぐらいまでは回復しました。
●まとめ
最初は「無謀な事に挑戦してしまった...」と落ち込んでいましたが
なんとか素人作業でも復活出来たので良かったです。
苦労した分だけ愛着が沸きそうですねw
ICに問題があった様なので、修理と言うよりニコイチに近い形ですが、両方ともメイン基盤がダメな
どうしようもない状態の2台を組み合わせて1台が動くようになったと言う事で、御の字ではないでしょうか。
今回はたまたま運が良かっただけで、同じICが全て壊れている個体に当たっても不思議ではありません。
特にバッテリー周りが今の所2/2台の100%の確率でダメージを負っていて、
サブCPU周りや、カセット制御ボードへと繋がる端子がある辺りなので、ダメージ量によっては修復不可能かもしれません。
○今回のポイント
IPLはBIOSと同じ役割をしていて、電源投入時に各回路のチェックを行っているようです。
その一部でエラーが返ってくると「Please turn on the Power SW slowly again !」と表示されIPL待ち受けまで行きません。
IPLが電源廻りのみをチェックしているのか、IC同士のやりとりもチェックしているのかは自分には分かりませんが
今回はIPL起動時のカセット自動イジェクトか、その辺りの制御 ICチェックでエラーが返された為に起動しなかったと思われます。
IC1とIC9とIC20を交換する事で正常になりましたが、
調べてみるとIC9はタイマー関係のICの様なのでIC1かIC20のどちらかが損傷していた可能性が高いですね。
ただし、ICを交換する前にバッテリー周りの部品も一通り交換しているので
そちらにも一部原因があった可能性は否定できませんが、動いてしまった今となっては確認のしようがありません。
故障の原因ですが、カセットデッキやカセット基盤に問題があった訳では無く、IC自体が錆びやショートなどにより損傷したのか
メイン基盤上のカセット信号線がバッテリー付近を通過する為にバッテリーの液漏れ又は腐食で付近のICが損傷したのか、
同軸ケーブルを繋ぐ改造によりカセット制御関連回路のIC1かIC20が損傷したと思われます。(あくまでも素人判断)
伊藤園さんからコメントを頂けたので記事の増設です。
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「Please turn on the Power SW slowly again !」のメッセージは、
電源リセット後CPU(Z80)がサブCPUに対してキーボード入力時の割り込みベクタ等をセットするのですが、
この時ににサブCPUから応答がなかったりすると表示されるようです。(IPLROMの逆アセンブルの結果)
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と言う事ですので、IC2(サブCPU)とIC1は回路図を見ると隣合わせに書かれるほど関連性の高いICである事は一目瞭然で、
サブCPUがIC1との連携が取れなくてエラーが出ていた可能性が高そうですね。
ちなみに「CPU(Z80)がサブCPUに対してキーボード入力時の割り込みベクタ等をセットするのですが」
の部分は、8割がた理解出来ないズブの素人ですのでご勘弁下さいorz
IPLの動作に関しては中々検索にかからないので、とても貴重な情報を提供して頂いて、ありがとう御座いました。
今回交換したパーツは下の写真の赤丸で囲んだ部品で、ICはシルバーマニアからの移植、その他のパーツは新品を使いました。
ピンク色のトリマコンデンサが安っぽく見えて少し気になるので、気が向いたらシルバーマニアのを移植するかもしれません。
(まぁ気にするほど綺麗な修理でもないのですが...)
こうして改めて見ると、基盤左下の多くのパーツを交換しましたね。
素人修理でよく動く様になったものだと...かなりラッキーだったのかもしれません。
素人修理と言えば、電解コンデンサの交換がレストアの初級作業の様ですが、
一々メモるのが面倒だったり外した場所が分からなくなったりする事もあります。
折角なので自分がメモった電解コンデンサの配置図をペイントに起こしたので貼っておきます。
電解コンデンサの交換を考えている方は”実機と見比べてから”ご利用下さい。
修理メモ枠内は参考程度に留めてください。(X1センターさんの情報を自分用に貼っただけの可能性)
稀にマイナス側のマークが間違っている事もあるらしいのでマイナス側もメモっておけばよかったですねorz
ダラダラと長い修理記事にお付き合い下さり有り難う御座いました。
以上、CZ-800C(X1マニアタイプ)の修理でした。
おわり