お手本のNZでは国営企業が復活~『民営化で誰が得をするのか 国際比較で考える』石井陽一著(評:荻野進介)
いつの時代も世の中には誰もが表立って反対できない“錦の御旗”が存在する。今の時代、その“御旗”のひとつが「民営化」だろう。
一昨年9月、小泉前首相が乾坤一擲の勝負に出、前代未聞の勝利に終わった、いわゆる郵政民営化一点選挙が記憶に新しいが、最近は「社会保険庁は民営化して一から出直せ」という声もかまびすしい。
本書は、民営化とは何か、なぜ必要なのか、そのメリットならびにデメリットは、といった問題を、世界の実例をひもときながら解説した入門書である。入門書といっても、ぴりりと辛い“わさび”が随所に練り込まれている。
著者はまず、一口に民営化といっても、動機や事情はさまざまであり、手法も千差万別であることを示す。例えば手法ひとつ取っても、直接売却型、株式公開型、経営陣や従業員に売却するMBO(Management Buy-out)型といった「所有移転型」と、一定期間の運営を民間に委託する「コンセッション型」の2つがある。日本では後者の形の民営化の例はまだ少なく、所有移転型のうち株式公開型が民営化の典型と見られている。
国鉄民営化は「偽装破綻」?
続いて日本の民営化の歴史を振り返る。俎上に載せるのは、直近の郵政と道路公団であり、さらには国鉄、電電公社、専売公社といった1980年代の事例である。このうち特に、郵政と道路公団、それに国鉄の民営化に厳しい目を向ける。
郵政と道路公団の民営化がなぜ問題なのかといえば、どちらも「なぜ民営化が必要なのか」という理念が不明確なまま、「構造改革」という美辞麗句にくるまれ、強引な政治の力で民営化が進行しているからだ。
国鉄民営化については、主導者である中曽根元首相が、本来の目的は国労や総評、さらには最大野党の社会党つぶしだったことをマスコミに明かしており、動機が不純であること、もともと国鉄の経営破綻は資産価値を低めに評価した偽装破綻であった疑いもあることなどを指摘し、かなり批判的である。
そして、ここからがこの新書の真骨頂である。イギリス、ニュージーランド、ドイツといった日本が民営化のお手本としてきた国から、米国、フランス、スペイン、さらには東欧各国、ロシア、中国、ラテンアメリカ諸国まで、世界18カ国の民営化の実情をコンパクトに紹介していく。
例えば、郵政民営化の模範とされ、日本が真っ先に学ぶべき国とされてきたニュージーランドである。
郵便貯金が郵便銀行に衣替えされた揚げ句、豪州系銀行に売却されたが、支店の4割を削減するという大リストラが行われた。結果、失業者が増加し、サービスの質も大きく低下した。これに対する国民の不満が高まり、政府は郵便公社の傘下に国営銀行を復活させざるを得なかった。
さらに米国である。新自由主義の急先鋒であるこの国は、さぞかし民営化“先進国”かと思いきや、事実はまったく異なる。日本の郵政にあたるUSPS(アメリカ合衆国郵政公社)の民営化構想は、ネット技術などの進歩によって民営化しても採算を取るのが難しい、国土が広大なため、全国一律のサービスの維持が難しいなどの理由で、まったく進んでいない。日本の国鉄にあたるアムトラックも株式会社ではあるが、経営陣も資金も政府のひも付きであり、民営化とはほど遠い実態である。さすがダブルスタンダードの国だ。
フランスは委託型民営化の先進国であり、伝統的に水道や清掃事業を民間企業に任せてきた。でも、そのフランスで、水道の水質が悪く、ミネラルウォーターのエビアンがバカ売れしている。なぜだろうか。
競争原理がきちんと働くか
実は水道受託業者は水質向上の技術を持ち合わせているのだが、エビアンの製造元と裏で結託しているため、わざと水質を悪いままに保っているという説があるのだという。
著者は最後に民営化の是非を見極める尺度を提出する。それは、国有財産の売却による【1】財政効果と、民間に任せたことによって起こった【2】競争導入効果および【3】海外進出効果の3つである。
ちなみに、国鉄民営化を例に取ると、【1】はJR3島3社(北海道、四国、九州)ならびにJR貨物の財政効果は政府も公表できないほど悪く落第点、【2】も渋谷?横浜間など、同一区間で私鉄より大幅に運賃が高い箇所があり落第点、【3】のみ、JR西日本が台湾へ新幹線を輸出しているため及第点、というのが著者の評価である。
民営化とは平たく言えば「ビジネス化」のことである。どんな手続きでビジネス化が進み、誰がその資産を譲り受けるのか。お役所仕事がビジネスになると、どんなメリット、デメリットがあるのか。見極めるための手引き書として読まれたい。
(文/荻野進介、企画・編集/須藤輝&連結社)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20070801/131461/
<日本道路公団オリックス化を暴露している記事>
サイゾーの2006年11月号
84ページ~85ページ
司法記者座談会
「水谷建設事件でねらわれる議員
検事総長交代が及ぼす意外な影響」
の85ページの
下段から2段目と1段目
にこう書いてある。
A(全国紙司法デスク)
近藤総裁直轄の
公団改革チーム
の有力メンバーは
オリックス幹部達。
国有化が決まっていた
高速道路や関連施設を
自社に有利な払い下げや
リース契約にできないかどうか
内内に画策していたことも暴露されている。
B(司法クラブ男性記者(新聞)
特捜部は
この道路公団の捜査を通じて
、小泉の側近が
「構造改革」の名のもと、自分の
利権のために奔走していた実態に
気づき、リベンジ戦として
小泉改革で甘い汁を吸っている
業者の洗い出しを始めるんです。
C(司法クラブ女性記者(民放)
その捜査がライブドアや村上ファンド事件へと
結実するわけですね。
A(全国紙司法デスク
そう、道路公団事件を指揮した北島孝久副部長が
時を置かずに
この2つの事件の内偵捜査に着手したことが
何よりの証拠さ。
2つの事件の背後には、小泉政権そのものが
見え隠れしたから
こそ特捜部は果敢に挑んだんだが、
その立役者となるべきだった
北島は、検察首脳の意向で
捜査半ばで異動を命じられ
抗議の辞職をしている。
C(司法クラブ女性記者(民放)
そのおかしな異動を了承したのが
今度検事総長になった
但木敬一だといわれていますね。
B(司法クラブ男性記者(新聞)
7代の法務大臣に秘書官として
つかえ、「ザ法務官僚」
と呼ばれる人物だ。
特捜部を向こうにまわして
いつもバッジに事件が波及しないように
いつもブレーキをかけてきたといわれる人物
小野寺注)実際には、この総長の背後に首相官邸の「亡国の人物」がいる。
いつの時代も世の中には誰もが表立って反対できない“錦の御旗”が存在する。今の時代、その“御旗”のひとつが「民営化」だろう。
一昨年9月、小泉前首相が乾坤一擲の勝負に出、前代未聞の勝利に終わった、いわゆる郵政民営化一点選挙が記憶に新しいが、最近は「社会保険庁は民営化して一から出直せ」という声もかまびすしい。
本書は、民営化とは何か、なぜ必要なのか、そのメリットならびにデメリットは、といった問題を、世界の実例をひもときながら解説した入門書である。入門書といっても、ぴりりと辛い“わさび”が随所に練り込まれている。
著者はまず、一口に民営化といっても、動機や事情はさまざまであり、手法も千差万別であることを示す。例えば手法ひとつ取っても、直接売却型、株式公開型、経営陣や従業員に売却するMBO(Management Buy-out)型といった「所有移転型」と、一定期間の運営を民間に委託する「コンセッション型」の2つがある。日本では後者の形の民営化の例はまだ少なく、所有移転型のうち株式公開型が民営化の典型と見られている。
国鉄民営化は「偽装破綻」?
続いて日本の民営化の歴史を振り返る。俎上に載せるのは、直近の郵政と道路公団であり、さらには国鉄、電電公社、専売公社といった1980年代の事例である。このうち特に、郵政と道路公団、それに国鉄の民営化に厳しい目を向ける。
郵政と道路公団の民営化がなぜ問題なのかといえば、どちらも「なぜ民営化が必要なのか」という理念が不明確なまま、「構造改革」という美辞麗句にくるまれ、強引な政治の力で民営化が進行しているからだ。
国鉄民営化については、主導者である中曽根元首相が、本来の目的は国労や総評、さらには最大野党の社会党つぶしだったことをマスコミに明かしており、動機が不純であること、もともと国鉄の経営破綻は資産価値を低めに評価した偽装破綻であった疑いもあることなどを指摘し、かなり批判的である。
そして、ここからがこの新書の真骨頂である。イギリス、ニュージーランド、ドイツといった日本が民営化のお手本としてきた国から、米国、フランス、スペイン、さらには東欧各国、ロシア、中国、ラテンアメリカ諸国まで、世界18カ国の民営化の実情をコンパクトに紹介していく。
例えば、郵政民営化の模範とされ、日本が真っ先に学ぶべき国とされてきたニュージーランドである。
郵便貯金が郵便銀行に衣替えされた揚げ句、豪州系銀行に売却されたが、支店の4割を削減するという大リストラが行われた。結果、失業者が増加し、サービスの質も大きく低下した。これに対する国民の不満が高まり、政府は郵便公社の傘下に国営銀行を復活させざるを得なかった。
さらに米国である。新自由主義の急先鋒であるこの国は、さぞかし民営化“先進国”かと思いきや、事実はまったく異なる。日本の郵政にあたるUSPS(アメリカ合衆国郵政公社)の民営化構想は、ネット技術などの進歩によって民営化しても採算を取るのが難しい、国土が広大なため、全国一律のサービスの維持が難しいなどの理由で、まったく進んでいない。日本の国鉄にあたるアムトラックも株式会社ではあるが、経営陣も資金も政府のひも付きであり、民営化とはほど遠い実態である。さすがダブルスタンダードの国だ。
フランスは委託型民営化の先進国であり、伝統的に水道や清掃事業を民間企業に任せてきた。でも、そのフランスで、水道の水質が悪く、ミネラルウォーターのエビアンがバカ売れしている。なぜだろうか。
競争原理がきちんと働くか
実は水道受託業者は水質向上の技術を持ち合わせているのだが、エビアンの製造元と裏で結託しているため、わざと水質を悪いままに保っているという説があるのだという。
著者は最後に民営化の是非を見極める尺度を提出する。それは、国有財産の売却による【1】財政効果と、民間に任せたことによって起こった【2】競争導入効果および【3】海外進出効果の3つである。
ちなみに、国鉄民営化を例に取ると、【1】はJR3島3社(北海道、四国、九州)ならびにJR貨物の財政効果は政府も公表できないほど悪く落第点、【2】も渋谷?横浜間など、同一区間で私鉄より大幅に運賃が高い箇所があり落第点、【3】のみ、JR西日本が台湾へ新幹線を輸出しているため及第点、というのが著者の評価である。
民営化とは平たく言えば「ビジネス化」のことである。どんな手続きでビジネス化が進み、誰がその資産を譲り受けるのか。お役所仕事がビジネスになると、どんなメリット、デメリットがあるのか。見極めるための手引き書として読まれたい。
(文/荻野進介、企画・編集/須藤輝&連結社)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20070801/131461/
<日本道路公団オリックス化を暴露している記事>
サイゾーの2006年11月号
84ページ~85ページ
司法記者座談会
「水谷建設事件でねらわれる議員
検事総長交代が及ぼす意外な影響」
の85ページの
下段から2段目と1段目
にこう書いてある。
A(全国紙司法デスク)
近藤総裁直轄の
公団改革チーム
の有力メンバーは
オリックス幹部達。
国有化が決まっていた
高速道路や関連施設を
自社に有利な払い下げや
リース契約にできないかどうか
内内に画策していたことも暴露されている。
B(司法クラブ男性記者(新聞)
特捜部は
この道路公団の捜査を通じて
、小泉の側近が
「構造改革」の名のもと、自分の
利権のために奔走していた実態に
気づき、リベンジ戦として
小泉改革で甘い汁を吸っている
業者の洗い出しを始めるんです。
C(司法クラブ女性記者(民放)
その捜査がライブドアや村上ファンド事件へと
結実するわけですね。
A(全国紙司法デスク
そう、道路公団事件を指揮した北島孝久副部長が
時を置かずに
この2つの事件の内偵捜査に着手したことが
何よりの証拠さ。
2つの事件の背後には、小泉政権そのものが
見え隠れしたから
こそ特捜部は果敢に挑んだんだが、
その立役者となるべきだった
北島は、検察首脳の意向で
捜査半ばで異動を命じられ
抗議の辞職をしている。
C(司法クラブ女性記者(民放)
そのおかしな異動を了承したのが
今度検事総長になった
但木敬一だといわれていますね。
B(司法クラブ男性記者(新聞)
7代の法務大臣に秘書官として
つかえ、「ザ法務官僚」
と呼ばれる人物だ。
特捜部を向こうにまわして
いつもバッジに事件が波及しないように
いつもブレーキをかけてきたといわれる人物
小野寺注)実際には、この総長の背後に首相官邸の「亡国の人物」がいる。