福田さん「はた迷惑だ」と/加藤君は言語道断だな/首相のやり方忘れた方が
自民党森派会長の森喜朗元首相は4日、産経新聞のインタビューに応じ、福田康夫元官房長官不出馬の経緯や総裁選の行方などについて語った。
【福田不出馬の経緯】
福田さんが総裁選に出ると言ったことは一度もない。去年から、福田さんは「はた迷惑なことだ」と言っていたし、私にはずっと「自分にはそういう気持ちはない」といってきた。
だが、いろんな人から「福田さんはどうするんですか。早く決めてください」といわれるので、6月末に本人に聞いた。すると「自分が出ると言っていないのに、出ないと言うのも変な話だ」と。「それもそうだよな」ということで7月になった。
7月20日に電話をかけて「何か言わないとみんな困っているんじゃないのか」と聞いたときも同じだった。翌日に彼が私の事務所に来たとき「国民の期待もある。何らかの意思表示はすべきじゃないかな」と言った。ただ、彼はいろいろなところで自分の気持ちを伝えていた。そのときも「あるマスコミの人に話した」と言うんだ。それが山崎拓元副総裁に伝わり、彼は加藤紘一元幹事長らに話したらしい。
だから21日に福田さんに「もう抑えることはできないと思うよ」といったら、「そうですかねえ」という。「週末、(報道されずに)無事にすむとは思わない」とも言っておいた。福田さんはその晩、自宅で意思を表明したという経緯だ。
【総裁選の行方】
自民党のためには、多くの候補が競い合う総裁選が望ましい。谷垣禎一財務相、麻生太郎外相も総裁選で自分の派閥以上の票を取れば評価される。津島派も額賀福志郎防衛庁長官で決まれば青木(幹雄参院議員会長)さんの参院は全員一致しますよ。うまく2番手になれば次のレースで、谷垣、麻生両氏より有利になる。
他派閥の人が心の底から安倍晋三官房長官を、ということであれば大変ありがたいけど、若い人たちの中には「安倍は人気がある、だから安倍の側近になりたい、その方が選挙区にイメージがいい」という連中もいる。上の方になると入閣待ちでビチビチしている人たちがいる。そういう人たちが周りを囲み始めた。党や仲間、国家のためじゃないな、個人の欲のためだ。そういう人たちだけでいいのかな、という心配はある。
一方で他派の領袖、幹部たちはそういう人たちを抑え切れない。
山崎さんにしても加藤さんにしても心が揺れているのは、自分たちもやりたいという未練があるんだよ。だから安倍君を阻止しないといけない。自分は出られないが、福田さんが出てくれたらつかまっていこうと。
山崎君はかわいそうに、「場合によっては出るかもしれん。8月のお盆過ぎに考える」と言っている。それを幹事長たる武部勤君が「そんなことをいえばおれは山崎派に帰らない」と言い、山崎君は「おれが会長だ。出るといって推せないなら辞めてもらうか、この会をつぶすだけだ」と醜態を演じている。そういうことが派閥に対するマイナスイメージになる。「武部はなに、まだ山崎派だったの」とおれはいいたいくらいだよ。
加藤君にいたっては言語道断だな。週刊誌をみていたら「福田さんが出られなかったのは森さんのせいだ」と。私はいっぺんも止めたこともないよ。それになんで他人の家の者を表に出せといわなきゃならんのかな。じゃあ自分がやればいいんじゃないですか。そうでしょう。もっといえば、谷垣君のために、命を張ってやるのが本当じゃないのかな。谷垣君は「加藤の乱」のときにいさめた、泣きながらね。それだけやってくれた男でしょう。だったら、せめて丹羽(雄哉元厚相)さんや古賀(誠元幹事長)さんに頭を下げて頼むぐらいのことがあってもいい。おれからいわせれば、自分がプロポーズしないで、好きな女が他のところに行っちゃったとケチをつけているのと同じだよ。あそこまで愚かになったかと思うと情けないね。
【安倍氏について】
僕は小泉純一郎首相の亜流ではいかんといっている。改革はいわないといけないが、女性や民間人を無理やり入れた小泉首相の独断的な人事で、乱れたわけですよ、秩序が。努力したものが報われなかったり、自分よりもランクが下の若い人が閣僚になったり。みんなまじめに努力しているんだ。ただ当選回数を積み重ねているんじゃないんだよ。そういう人事をやって小泉だけが光ってあとはみんなただ働きさせられた。そして一つの政策ミスや一つの反対で首を切っちゃう。刺客を出す。まあ織田信長の小説の読みすぎだと思うな。昔のクレムリンじゃない。みんなバッタバッタと切り捨ててきた、そういうやり方をしちゃいかん。安倍君は小泉とまったくのイコールだとみられているから、かわいそうなところがある。だけど総裁選で当選したら安倍イズムでやらなきゃ。私は安倍君にいっているんです。「もう小泉のやり方は忘れた方がいい」と。総裁選が終われば、ノーサイド、みんな仲良くやろうと呼びかければいいんですよ。全員が奮起して気持ちよく戦えるようにしていくことを安倍君は若いだけにやらないといけないのじゃないですか。
次の幹事長もただ事ではない。重要法案山積で、これから勉強しますというわけにはいかない。参院選で小沢一郎・民主党代表は徹底的につぶしにくるから、それに耐えうる幹事長でないと。公明党だけでなく創価学会とも連絡をとれる人でないと難局を乗り切るのは難しい。
小泉首相退陣後、私も森派会長を辞める。私の後は私が決めることではない。今決めても閣僚や党三役になったら自動的に派閥を離れなきゃならん。みんなでどうするか考えればいい。
Sankei Web 産経朝刊 【加速 06総裁選】森・元首相、大いに語る(08/05 05:00)
http://www.sankei.co.jp/news/060805/morning/05pol001.htm
自民党森派会長の森喜朗元首相は4日、産経新聞のインタビューに応じ、福田康夫元官房長官不出馬の経緯や総裁選の行方などについて語った。
【福田不出馬の経緯】
福田さんが総裁選に出ると言ったことは一度もない。去年から、福田さんは「はた迷惑なことだ」と言っていたし、私にはずっと「自分にはそういう気持ちはない」といってきた。
だが、いろんな人から「福田さんはどうするんですか。早く決めてください」といわれるので、6月末に本人に聞いた。すると「自分が出ると言っていないのに、出ないと言うのも変な話だ」と。「それもそうだよな」ということで7月になった。
7月20日に電話をかけて「何か言わないとみんな困っているんじゃないのか」と聞いたときも同じだった。翌日に彼が私の事務所に来たとき「国民の期待もある。何らかの意思表示はすべきじゃないかな」と言った。ただ、彼はいろいろなところで自分の気持ちを伝えていた。そのときも「あるマスコミの人に話した」と言うんだ。それが山崎拓元副総裁に伝わり、彼は加藤紘一元幹事長らに話したらしい。
だから21日に福田さんに「もう抑えることはできないと思うよ」といったら、「そうですかねえ」という。「週末、(報道されずに)無事にすむとは思わない」とも言っておいた。福田さんはその晩、自宅で意思を表明したという経緯だ。
【総裁選の行方】
自民党のためには、多くの候補が競い合う総裁選が望ましい。谷垣禎一財務相、麻生太郎外相も総裁選で自分の派閥以上の票を取れば評価される。津島派も額賀福志郎防衛庁長官で決まれば青木(幹雄参院議員会長)さんの参院は全員一致しますよ。うまく2番手になれば次のレースで、谷垣、麻生両氏より有利になる。
他派閥の人が心の底から安倍晋三官房長官を、ということであれば大変ありがたいけど、若い人たちの中には「安倍は人気がある、だから安倍の側近になりたい、その方が選挙区にイメージがいい」という連中もいる。上の方になると入閣待ちでビチビチしている人たちがいる。そういう人たちが周りを囲み始めた。党や仲間、国家のためじゃないな、個人の欲のためだ。そういう人たちだけでいいのかな、という心配はある。
一方で他派の領袖、幹部たちはそういう人たちを抑え切れない。
山崎さんにしても加藤さんにしても心が揺れているのは、自分たちもやりたいという未練があるんだよ。だから安倍君を阻止しないといけない。自分は出られないが、福田さんが出てくれたらつかまっていこうと。
山崎君はかわいそうに、「場合によっては出るかもしれん。8月のお盆過ぎに考える」と言っている。それを幹事長たる武部勤君が「そんなことをいえばおれは山崎派に帰らない」と言い、山崎君は「おれが会長だ。出るといって推せないなら辞めてもらうか、この会をつぶすだけだ」と醜態を演じている。そういうことが派閥に対するマイナスイメージになる。「武部はなに、まだ山崎派だったの」とおれはいいたいくらいだよ。
加藤君にいたっては言語道断だな。週刊誌をみていたら「福田さんが出られなかったのは森さんのせいだ」と。私はいっぺんも止めたこともないよ。それになんで他人の家の者を表に出せといわなきゃならんのかな。じゃあ自分がやればいいんじゃないですか。そうでしょう。もっといえば、谷垣君のために、命を張ってやるのが本当じゃないのかな。谷垣君は「加藤の乱」のときにいさめた、泣きながらね。それだけやってくれた男でしょう。だったら、せめて丹羽(雄哉元厚相)さんや古賀(誠元幹事長)さんに頭を下げて頼むぐらいのことがあってもいい。おれからいわせれば、自分がプロポーズしないで、好きな女が他のところに行っちゃったとケチをつけているのと同じだよ。あそこまで愚かになったかと思うと情けないね。
【安倍氏について】
僕は小泉純一郎首相の亜流ではいかんといっている。改革はいわないといけないが、女性や民間人を無理やり入れた小泉首相の独断的な人事で、乱れたわけですよ、秩序が。努力したものが報われなかったり、自分よりもランクが下の若い人が閣僚になったり。みんなまじめに努力しているんだ。ただ当選回数を積み重ねているんじゃないんだよ。そういう人事をやって小泉だけが光ってあとはみんなただ働きさせられた。そして一つの政策ミスや一つの反対で首を切っちゃう。刺客を出す。まあ織田信長の小説の読みすぎだと思うな。昔のクレムリンじゃない。みんなバッタバッタと切り捨ててきた、そういうやり方をしちゃいかん。安倍君は小泉とまったくのイコールだとみられているから、かわいそうなところがある。だけど総裁選で当選したら安倍イズムでやらなきゃ。私は安倍君にいっているんです。「もう小泉のやり方は忘れた方がいい」と。総裁選が終われば、ノーサイド、みんな仲良くやろうと呼びかければいいんですよ。全員が奮起して気持ちよく戦えるようにしていくことを安倍君は若いだけにやらないといけないのじゃないですか。
次の幹事長もただ事ではない。重要法案山積で、これから勉強しますというわけにはいかない。参院選で小沢一郎・民主党代表は徹底的につぶしにくるから、それに耐えうる幹事長でないと。公明党だけでなく創価学会とも連絡をとれる人でないと難局を乗り切るのは難しい。
小泉首相退陣後、私も森派会長を辞める。私の後は私が決めることではない。今決めても閣僚や党三役になったら自動的に派閥を離れなきゃならん。みんなでどうするか考えればいい。
Sankei Web 産経朝刊 【加速 06総裁選】森・元首相、大いに語る(08/05 05:00)
http://www.sankei.co.jp/news/060805/morning/05pol001.htm