水徒然

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放射線に係る記載を調べました。(その8-2:各種放射線の作用;中性子線)

2011-04-13 | 日記

                             '11-04-12投稿、強調
  既報に引き続いて、今回は放射線を利用した分析手法のひとつ、中性子線放射γ線スペクトル元素分析に係る記載を調べました。 逐次、追加更新する予定であります。

<中性子線とは>
 中性子(陽子とともに原子核を構成し質量数1)の流れ。電荷は0、単独では不安定、ベータ(β)崩壊して陽子に変わる。原子核内に容易に入ることができるので核反応を起こす。
<中性子線放射γ線スペクトル分析>
 この分析方法は既報で紹介したICP-質量分析と並んで、河川などに存在する微量元素の検出手法として、開発されたものです。

放射線利用技術データベース作成: 1997/12/26 
中性子捕獲ガンマ線分析による環境汚染物質の分析http://www.rada.or.jp/database/home4/normal
/ht-docs/index.html

(一部抽出しました。詳細は本文参照願います。)

概要: カリフォルニウム-252中性子線源を利用した中性子捕獲ガンマ線分析装置を開発し、これを環境試料の分析に応用した。この装置は、熱中性子捕獲反応に伴って放出される即発ガンマ線を測定し、そのスペクトルから元素分析を行うためのものである。・・・
詳細説明: 中性子による核反応で原子核を励起状態にし、その際瞬時に放出されるガンマ線(即発ガンマ線)をゲルマニウム半導体検出器などでスペクトルを分析する・・・これは即発ガンマ線が元素固有のエネルギーを有することを利用したものであり、・・・
1、中性子捕獲ガンマ線分析装置
 ・・・検出器の周りには散乱中性子線を除去するため、6Li濃縮 Li2CO3、パラフィン、カドミウム板を合わせた吸収材で覆ってある。線源からの中性子線を避けるため、・・・内径158mm、長さ300mm(両端は円錐状になっている)の鉛が入れてある。この左端に78mmx50mm、深さ178mmの穴の開いたポリエチレン製の線源ホルダーが装着されている。ポリエチレンは中性子の減速のために使用している。ステンレスで密封されたカリフォルニウム-252線源は6mmφx60mmのポリエチレン容器に入れ、線源ホルダーに挿入する。・・・
2、試料調製 
 液体試料および固体試料に対してはそれぞれポリエチレン瓶又はポリエチレン袋を用いる。固体試料はあらかじめ適当なメッシュサイズに粉砕する。液体の環境試料では、これから得られる即発ガンマ線のエネルギー校正のため、各種濃度のNaCl溶液500mlを用いる。NaおよびClの中性子捕獲反応に伴う即発ガンマ線を使って、10MeV以下のガンマ線のエネルギーを校正する。・・・
3、分析例 ・・・ナイルデルタ(エジプト)のMonzala湖から採取した水試料を測定し、得られた即発ガンマ線スペクトルを図3に示した。このスペクトルは7時間測定したものであり、約60本のガンマ線が検出されている。
 その結果、N,Si,P,S,Cl,K,Ca,V,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Kr,Y,Zr,Cd,Hg,Pb,Pr,Sm,Gdなど、22元素が同定される。


図3 Prompt γ-ray spectrum of a sample taken from Manzala Lake. The γ-ray lines are labelled with the corresponding elements. The spectrum has been collected for 7h using the PGNAA designed facility.(原論文1より引用。 Reproduced from Radiation Physics and Chemistry, 47, 719-722 (1996), Fig.2(p.721), with permission from Elsevier Science. )

4、まとめ カリフォルニウム-252中性子線源を使った中性子捕獲ガンマ線分析は実験室のみならず野外においても便利な方法である。この方法は装置が簡単で、中性子源として原子炉を必要としないことのほか、大容量の試料を比較的精度良く分析できるため、環境試料中の多元素分析に適している。

コメント: 中性子捕獲ガンマ線分析はB,Cd,Sm,Gd,などに感度が高く、機器放射化分析に対する補完的な分析法としての意義が大きい。また、中性子、即発ガンマ線とも透過力が大きいため、不均質系を含む大量試料の分析に適している。 ・・・0.1ppm以下の分析が可能である。・・・現場で大量試料中の主要成分の分析に適している。本研究はRI中性子源を用いた利点を生かして、環境中の有害元素の分析を試みて、多くの元素を検出しているが、定量的な考察がなされていないなど、まだ検討課題が残っており、今後の進展に期待したい。・・・」

(転載終了)

 既報の水中の放射性物質の除去で記載した「高感度元素分析」*での、多摩川水系の溶存態元素濃度の分析に利用されていますが、放射化分析の試料調整は濃縮乾固して、固体状態で分析していますが、原理的には現場の水をそのまま測定できるようです。
* http://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/010129.html  

 このことは、γ線は水には吸収されずに透過するこができることを示唆しています。
「その1(放射線とは)」で各種放射線の透過能力の見方を誤解していました。

 

 

 

 





(個人的メモ)
 ①α粒子線は紙など有機物で簡単に遮蔽できる。水中ではわずかに透過する②ベータ(β)線は既報の「ベータ線熱傷」の状況から水中の「正体不明の化合物」から放射されて熱傷したことから、β粒子線は水を透過する。また、薄い金属で遮蔽できる。③紫外線、X線、γ線などの電磁波は当然、水には透過する。 分厚い鉄板、鉛で遮蔽できる。④中性子線は金属固体を概ね透過する。引用文から中性子線を除去(吸収)するため、6Li濃縮 Li2CO3、パラフィン(ろう)、カドミウム板(金属板)を合わせた複合材で効率よく遮蔽できている。また、試料ホールダーに使用されているポリエチレン(C2H2)などの絶縁性のプラスチックでは遮蔽できる。当然、水にはある程度透過できる。
 また、N,Si,P,S,Cl,K,Ca,V,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Kr,Y,Zr,Cd,Hg,Pb,Pr,Sm,Gdなどの22元素は正確に分析できるようです。(検出の可能性がある60本)
 河川中での存在形態は酸化物、水酸化物などの化合物(PO4、SO4、NO3と複合の可能性もある)であると推定される。 
 核反応生成物質に相当するNi,Cu,Zn,Kr,Y,Zr,Cd,Hg,Pb,Pr,Sm,Gd・・・からなる様々なバンドギャップエネルーギー(Eg)をもつ化合物にEgより大きなエネルギーをもつ中性子線が吸収・励起されて、各物質のEgに相応するγ線を発生させていると思われます。
 

 


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