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センター試験「地理B」

2018年01月15日 | 受験・学校
 
 センター試験の「地理B」で出題された
「ムーミンの舞台はフィンランドかノルウェーか」という問題が話題になっています。
 童話をモチーフにしたアニメーション3つを並べ、
例としてスウェーデンを舞台にしたものとスウェーデン語の組み合わせをあげ、
残りの2つの舞台となった国と言語を組み合わせるというものです。

 「ムーミン」が最初にアニメ化されたのは1969年、
今の高校生には古く、それを出題するのは不適切ではないか。
 (ちなみに他の「小さなバイキングビッケ」は1972年、
  「ニルスの不思議な旅」は1980年の放映作品)

 「ムーミン」の舞台はフィンランドでなく「ムーミン谷」が正しい。
それを作者の国籍で考えようというのがナンセンス。

 等々の意見がネット上に飛び交っているようです。
 
 ここで、教育業界の人間としての私見を述べさせてもらうと、
今まさに大学入試改革で目指そうとしていることは
「予め詰め込んだ唯一正しい解答を答える」能力ではなく、
「文脈や与えられた資料から、より適切(better)だと思われる解答に近付く」能力だということです。

 前出の問題は、毎日新聞社などがネット上でも詳しく解法を説明してくれていますので、気になるかたはご参照ください。

 受験生の能力として必要なのは、
「ムーミン」がフィンランドの作品であるということや
「小さなバイキングビッケ」というアニメを知っているかということではありません。
 「バイキング」(ヴァイキング)とは、9世紀から11世紀中ごろまでの間に、
西ヨーロッパ沿岸部を侵略したスカンディナヴィア、バルト海沿岸地域の武装船団(海賊)、
また後にはその地域に住んでいた人々全体(ノルマン人)を表すようになった言葉です。
 したがって、
 ヴァイキング→ノルマン人→ノルウェー
という流れで設問と文脈上ムーミン→フィンランドという推測ができるわけです。
 これは「ムーミン=フィンランド」が正しいか間違っているかということが大切なのではない、いうことです。

 さらに、言語については
ノルウェー語やフィンランド語を知っている(読める)かどうかという話ではなく、
フィンランド語がインド・ヨーロッパ系の言語でないことは高校地理の範囲です。
 だから例題のスウェーデン語と似ているのがノルウェー語で、
大きく異なっているのがフィンランド語だと分かります。
 たとえそうでなくとも、ヒントとして描いてあるトナカイのイラストから
トナカイ→サンタクロース→フィンランド
という連想も、常識範囲でできるのではないかと思います。

 問題としては、難点がないとはいいません。
 フィンランドの公用語はフィンランド語(フィン語)とスウェーデン語であり、
しかもムーミンの作者のトーベ・ヤンソンは
全国民のうちわずか5%ほどの「スウェーデン語を母語とする」1人でした。
 「ムーミン」も、フィンランドの自然に影響を受けたとはのべられていますが
言語としてはもともとスウェーデン語で書かれています。

 しかし、そういった「雑学」は、その生徒がムーミン好きで作者の国籍を知っていたとか、
たまたまスウェーデン語かノルウェー語が堪能であったとか、
サンタクロースとトナカイの連想と同じようなレベルで問題を早く、確実に、
自信を持って解けたかもしれない要素ではありますが、必ず必要なものではありません。

 そして重要なのは、センター試験の問題は、
教科書知識の範囲内で答えが「導き出せる」問題で作成されているべきだということです。
 その点で言えば、この問題はまさに「高校の教科書範囲」で覚えた知識を利用して、
与えられた資料を基にきちんと解答へたどり着くように作られており、
今までの単純な「詰め込み記憶を吐き出すだけ」のテストから
「知識に基づいた応用力、思考力を必要とする」問題の
一例となっていると言えるのではないでしょうか。

 キャラクターや漫画、アニメ、流行のものを利用している悪問であるというような
単純思考のマスコミもあるようですが、
それは「入試改革」後について深く考える視点に欠けた、
偏った見方でないかと思います。


  
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