ポン太よかライフ

得した気分、首都圏見て回りの旅、美術館散歩

心安らぐ天平の至宝、東大寺大仏展

2010-12-01 06:11:17 | 博物館、美術館行ってきました

       
東京国立博物館の、東大寺大仏展に行ってきました。正面玄関のユリノキの紅葉も素晴らしく、庭園開放もしていました。本展に関しては、
流石に本物の大仏の出展はむりなのでバーチャル映像による解説が多く、本物を見ることができない分熱狂的な混雑からは解放されゆったりと楽しむことができました。
     
正倉院御物は、聖武天皇の遺愛の品々を光明皇后が東大寺に奉納したのが始まりです。
近日大仏のひざ下から見つかり、正倉院御物との見解が出て話題の鎮壇具の太刀の情報や、
類似した金堂鎮壇具の展示、国宝の八角灯籠の展示など見所がありましたが、
印象に残ったのはやはり普段見ることのできない角度や距離で大仏と対峙できる映像によるバーチャル体験でした。
冒頭、音楽とともに『華厳経』の世界観を描いた蓮弁の美しい線刻
の拡大画面が映し出されて圧巻でした。
また、奈良時代に創建された大仏殿の外観と当時の夜空を再現するシーンでは、人々の祈りが伝わり感動を覚えました。

盧舎那仏(るしゃなぶつ)は、サンスクリット語で「遍(あまね)く照らす」という意味です。
宇宙そのものである大仏の教えが広まることを願って光背で表し、
蓮をかたどった台座の花弁の一枚一枚に26の平行線で表された無数の世界を線刻し、その中心で釈迦如来が教えを説く様子を表しています。
つまり、無限の世界を照らしすべての生き物を慈しみ、育む「ほとけ」なのです。
奈良時代、人々は、戦禍に荒れ、疫病に苦しむ日々でした。
聖武天皇、光明皇后は仏像造営によって感謝と思いやりの心を広め、命のつながりを大切にし
神々を敬い皆とともに平和な国造りをしたいと祈りました。展示や映像から、そのありがたい御心がひしひしと伝わってきます。

正倉院宝物の中には大量の薬が含まれています。光明皇后は、病気に苦しむ人々を救うため施薬院(せやくいん)を設け、
多くの薬を集めました。ありがたいことに光明皇后のご意志で、大仏に奉納された薬もしばしば治療のために使われ当初の目録より重量が減っているそうです。
他国においては類を見ない為政者による宝物の扱いではないでしょうか。

ミュージアムの思想新装版

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先日、松宮秀治のミュージアムの思想という本を興味深く読みました。
ミュージアムの定義は、日本の美術館にも博物館にも収まりきれないものだとあり、目から鱗の思いがしました。
そもそもが帝国主義の産物なので、外国のミュージアムを訪れると、暴力的、支配的なおごりを感じます。略奪された墳墓の遺品について、
エジプトなどから返還要請が出ているのも当然でしょう。先住民保護区もミュージアムだそうです。
根津美術館や、東京国立博物館の庭にある朝鮮の道祖神にさえも所有に至る歴史的背景を考えると、心が痛みます。

その点日本古来の仏像の展示は心が安らぎます。
見つめているだけでアタラクシアの境地に至るような気がします!
政教分離した日本では、その存在が一貫して尊いゆえでしょう。
多くの人々の祈りが集まって造りだされ、人々を救済することで尊ばれ、
大切にされたがゆえに今日までお姿を見ることができると思うと安心してありがたくご尊顔を拝すことができます。
ここ数年の仏像ブームの魅力は、そんなところにあるのかもしれませんね。