前回までのあらすじ
パンクバンドのカリスマヴォーカリスト大崎ナナが失踪してから数年。
元ルームメイトで親友の小松奈々は、今でも彼女の帰りを待っていた。
そんなある日、突然二人が暮らしていた部屋にナナと名乗る人物がやってくる。
はじめは半信半疑だった奈々も、徐々に彼女(彼?)がナナであると信じるように。
そしてナナのいたバンド『ブラスト』の復活ライブ当日、
以前の様なキレたパフォーマンスを見せるナナと名乗る人物。
もはやバンドのメンバーもその人物をナナであると疑ってはいない。
しかし奈々は一人だけは、その存在に違和感を感じていた。
『あれは…ナナじゃない!』
罰 罰 罰
○下北沢ライブハウス・中(夜)
絶叫しているタナカ(偽ナナ)とノリノリで演奏しているシン、ノブ、ヤス。
狂ったように盛り上がっている観客達。
その光景がすべてスローモーション、無音で。
(イメージ風に)
タナカ「わ~たしさくらんぼ~っ♪」
観客「もー一回っ!」
タナカ「もっと来いやあああ!!!!」
観客「もう一回!!(絶叫)」
タナカ「もっとぅ」
客B「もう一回ぃ~!!!(大絶叫)」
タナカ「(ニンマリとして)愛し合う~ふた~あり~、し~あわせの~そら~」
ノリノリの客席で一人、静かにそれをみている奈々。
奈々「…ナナじゃない」
声援にかき消されて誰にも届かない奈々の声。
観客を掻き分けステージに登る奈々。
タナカ「!?」
思いっきりタナカを突き飛ばす奈々。
転がっていきスピーカーに頭をぶつけるタナカ。
マイクを奪い取る奈々。
きーんとしたハウリング音がライブハウスに響く。
一瞬にして静まりかえった客席。
奈々「アナタは…ナナじゃない」
ざわつく客席。
『何アイツ?』『意味わかんねえ』などの声が聞こえる。
奈々「アナタはナナじゃないでしょ?どうしてそんな嘘を付くの?」
悲しそうな表情の奈々。
倒れたまま俯いているタナカ。
タナカ「…」
シン「ハチ、今のパフォーマンスみたでしょ」
ノブ「そうだよ。どう考えたってナナじゃないか!」
奈々「ちがうちがう!だってナナは…」
ヤス「…」
奈々「ナナはこんなに小太りじゃないものぅ!!」
ザワツキが収まりシーンと静まり返るライブハウス。
ヤス「奈々ちゃん…」
ノブ「ヤッさんは気づいてたのかよ?」
ヤス「ああ、何となくだけどな…なんか女子っぽくないかなって」
俯いているタナカ。
奈々「説明してよ!どうして…どうしてこんな事っ」
客席後ろの方から客を掻き分け入ってくる人影。
さっきタナカにギターで殴られた客A(古着系ギャル)の姿。
頭に包帯を巻いている。
客A「小松奈々あ~」
奈々「!」
タナカ「!」
そちら注目する客達。
客A「以前よりナナのお心を独り占めした誰とでも寝る腐れビッチ!そしてナナ失踪の原因を作りし張本人。何より彼女と同じその名前!全てが許しがたい!」
満員の客をなぎ倒しながら突進してくる客A。
『キャー』などと悲鳴を上げる女子達。
客A「天誅ぅ!」
人とは思えぬ跳躍で奈々に飛びかかり、背中の日本刀を抜く客A。
目をつぶる奈々。
飛び出すヤス、シン、ノブ。
タナカ「危ないっ!!」
振り下ろされる日本刀。
飛び散る血しぶき。
最前列の客に飛び散る大量の血、血、血。
目を開ける奈々。
目の前にタナカの背中。
前のめりに倒れるタナカ。
奈々「いやーっ!!」
タナカを抱き起こす奈々。
肩から脇腹にかけてバッサリ切られている。
客A「小松奈々!なぜ我々からナナを奪う!その小太りがナナでない事などみんな分かっていた。だってどう見たって違うじゃないか。でも、例え偽物でも、私たちには彼女が必要だったんだ。なぜ二度も我々からナナを奪うんだ!」
奈々「そんな…」
天井から突入してくる警察の特殊部隊。
客Aを羽交い締めにして取り押さえる。
客A「畜生!誰か私の孤独を癒してくれ!一人になるのはもう沢山だあ~!」
スタンガンを客Aに押し当てる特殊部隊。
客A「ぐえ」
気絶する客A、運び出されて行く。
タナカ「奈々…無事か?」
奈々「うん、うん」
タナカ「私は…ナナじゃない!ただの33歳のおっさんだ」
奈々「もう喋らないで!」
タナカ「たまたまだったんだ。自分がやってるブログにナナって名乗るヤツがやって来て」
奈々「ナナが!」
タナカ「もちろん最初は信じちゃいなかったさ。でも、そのうち彼女は本当にあのナナなんじゃないかって思えるようになって来た」
ヤス「(スタッフに叫ぶ)おい!救急車だ、早くしろ!」
タナカ「ナナが言うんだ。日本にいるなら小松奈々って女の子を守ってくれって。だからオレはアンタを…ナナと同じ名前ののアンタを守る事にしたんだ。こんな変態みたいな格好までしてさ(笑って)」
血を吐くタナカ。
奈々「もう分かったから」
泣く奈々。
タナカ「死ぬまえにオレの名前を聞いてくれないか?オレの…名前は…」
ガクッと力が抜けるタナカ、静かに目を閉じる。
奈々「ナナだよ、アナタは誰よりナナだったよ」
客席からすすり泣く声。
その中で声を振り絞るように口を開く客B。
客B「たとーえば、だれーかあの、為じゃなくアナタのためーにい…」
シーンをした客席。
奈々「うたーいたいぃ、このうたーあおお(涙声で)」
観客全員「おわーらあない、すとーおおりい。絶え間ないいとしさーでえええ」
ライブハウス中に響き渡る歌声。
奈々「ナナ」
タナカを抱きしめる奈々。
○ 東京上空
きらびやかなネオンが悲しい位に輝いている。
奈々N「ねえナナ。私は運命とか信じちゃうタチだから、この小太りをナナって呼びたいと思うんだ。笑ってもいいよ」
テロップ『それでも世界は続いてゆく…』
終わり。
パンクバンドのカリスマヴォーカリスト大崎ナナが失踪してから数年。
元ルームメイトで親友の小松奈々は、今でも彼女の帰りを待っていた。
そんなある日、突然二人が暮らしていた部屋にナナと名乗る人物がやってくる。
はじめは半信半疑だった奈々も、徐々に彼女(彼?)がナナであると信じるように。
そしてナナのいたバンド『ブラスト』の復活ライブ当日、
以前の様なキレたパフォーマンスを見せるナナと名乗る人物。
もはやバンドのメンバーもその人物をナナであると疑ってはいない。
しかし奈々は一人だけは、その存在に違和感を感じていた。
『あれは…ナナじゃない!』
罰 罰 罰
○下北沢ライブハウス・中(夜)
絶叫しているタナカ(偽ナナ)とノリノリで演奏しているシン、ノブ、ヤス。
狂ったように盛り上がっている観客達。
その光景がすべてスローモーション、無音で。
(イメージ風に)
タナカ「わ~たしさくらんぼ~っ♪」
観客「もー一回っ!」
タナカ「もっと来いやあああ!!!!」
観客「もう一回!!(絶叫)」
タナカ「もっとぅ」
客B「もう一回ぃ~!!!(大絶叫)」
タナカ「(ニンマリとして)愛し合う~ふた~あり~、し~あわせの~そら~」
ノリノリの客席で一人、静かにそれをみている奈々。
奈々「…ナナじゃない」
声援にかき消されて誰にも届かない奈々の声。
観客を掻き分けステージに登る奈々。
タナカ「!?」
思いっきりタナカを突き飛ばす奈々。
転がっていきスピーカーに頭をぶつけるタナカ。
マイクを奪い取る奈々。
きーんとしたハウリング音がライブハウスに響く。
一瞬にして静まりかえった客席。
奈々「アナタは…ナナじゃない」
ざわつく客席。
『何アイツ?』『意味わかんねえ』などの声が聞こえる。
奈々「アナタはナナじゃないでしょ?どうしてそんな嘘を付くの?」
悲しそうな表情の奈々。
倒れたまま俯いているタナカ。
タナカ「…」
シン「ハチ、今のパフォーマンスみたでしょ」
ノブ「そうだよ。どう考えたってナナじゃないか!」
奈々「ちがうちがう!だってナナは…」
ヤス「…」
奈々「ナナはこんなに小太りじゃないものぅ!!」
ザワツキが収まりシーンと静まり返るライブハウス。
ヤス「奈々ちゃん…」
ノブ「ヤッさんは気づいてたのかよ?」
ヤス「ああ、何となくだけどな…なんか女子っぽくないかなって」
俯いているタナカ。
奈々「説明してよ!どうして…どうしてこんな事っ」
客席後ろの方から客を掻き分け入ってくる人影。
さっきタナカにギターで殴られた客A(古着系ギャル)の姿。
頭に包帯を巻いている。
客A「小松奈々あ~」
奈々「!」
タナカ「!」
そちら注目する客達。
客A「以前よりナナのお心を独り占めした誰とでも寝る腐れビッチ!そしてナナ失踪の原因を作りし張本人。何より彼女と同じその名前!全てが許しがたい!」
満員の客をなぎ倒しながら突進してくる客A。
『キャー』などと悲鳴を上げる女子達。
客A「天誅ぅ!」
人とは思えぬ跳躍で奈々に飛びかかり、背中の日本刀を抜く客A。
目をつぶる奈々。
飛び出すヤス、シン、ノブ。
タナカ「危ないっ!!」
振り下ろされる日本刀。
飛び散る血しぶき。
最前列の客に飛び散る大量の血、血、血。
目を開ける奈々。
目の前にタナカの背中。
前のめりに倒れるタナカ。
奈々「いやーっ!!」
タナカを抱き起こす奈々。
肩から脇腹にかけてバッサリ切られている。
客A「小松奈々!なぜ我々からナナを奪う!その小太りがナナでない事などみんな分かっていた。だってどう見たって違うじゃないか。でも、例え偽物でも、私たちには彼女が必要だったんだ。なぜ二度も我々からナナを奪うんだ!」
奈々「そんな…」
天井から突入してくる警察の特殊部隊。
客Aを羽交い締めにして取り押さえる。
客A「畜生!誰か私の孤独を癒してくれ!一人になるのはもう沢山だあ~!」
スタンガンを客Aに押し当てる特殊部隊。
客A「ぐえ」
気絶する客A、運び出されて行く。
タナカ「奈々…無事か?」
奈々「うん、うん」
タナカ「私は…ナナじゃない!ただの33歳のおっさんだ」
奈々「もう喋らないで!」
タナカ「たまたまだったんだ。自分がやってるブログにナナって名乗るヤツがやって来て」
奈々「ナナが!」
タナカ「もちろん最初は信じちゃいなかったさ。でも、そのうち彼女は本当にあのナナなんじゃないかって思えるようになって来た」
ヤス「(スタッフに叫ぶ)おい!救急車だ、早くしろ!」
タナカ「ナナが言うんだ。日本にいるなら小松奈々って女の子を守ってくれって。だからオレはアンタを…ナナと同じ名前ののアンタを守る事にしたんだ。こんな変態みたいな格好までしてさ(笑って)」
血を吐くタナカ。
奈々「もう分かったから」
泣く奈々。
タナカ「死ぬまえにオレの名前を聞いてくれないか?オレの…名前は…」
ガクッと力が抜けるタナカ、静かに目を閉じる。
奈々「ナナだよ、アナタは誰よりナナだったよ」
客席からすすり泣く声。
その中で声を振り絞るように口を開く客B。
客B「たとーえば、だれーかあの、為じゃなくアナタのためーにい…」
シーンをした客席。
奈々「うたーいたいぃ、このうたーあおお(涙声で)」
観客全員「おわーらあない、すとーおおりい。絶え間ないいとしさーでえええ」
ライブハウス中に響き渡る歌声。
奈々「ナナ」
タナカを抱きしめる奈々。
○ 東京上空
きらびやかなネオンが悲しい位に輝いている。
奈々N「ねえナナ。私は運命とか信じちゃうタチだから、この小太りをナナって呼びたいと思うんだ。笑ってもいいよ」
テロップ『それでも世界は続いてゆく…』
終わり。