和風イラスト【たまつづり】

イラストレーター諏訪間千晃のblogです

紙漉体験2-楮の皮むき、黒皮むき

2011年02月11日 18時45分00秒 | 制作過程
先週の日曜2/6に紙漉き体験第二弾として、楮の皮むき、黒皮むきの作業のため、また小川町へ行きました。


現地は山の中のリチャードさんの作業場で、近くには炭焼き小屋のようなところもありました。
リチャードさんの作業場はもともとこのあたりの公民館として使われていた建物らしいです。とても古い、趣のある母屋と、作業小屋がありました。敷地内にはゆずの畑があり、渓流も流れています。都会からやってくる我々にはこういうものを見るだけでもテンションが上がります。(笑)私たち絵画教室のメンバーの他にも、地元の方、リチャードさんのお知り合い、紙漉き関係の方など色々な方が集まりだいたい総勢30名くらいいたような感じです。


というわけで、到着すると楮が釜で蒸されていました。本来は畑でとってきた楮をそのまま蒸して皮むき作業をしますが、今回はある程度の人数が集まってまとまった作業をするため、先週刈り取った楮をあらかじめ蒸しておき、それを川の水につけておいて、作業する前にまた釜であたためる、という方法にしたそうです。


蒸し上がった楮は、手でさわるとほんわりあたたかく、気持ち良いのです。
なので最初素手で作業しようと思いましたが、すぐに指にトゲがささったかアクにやられたかで痛くなりました...軟弱(笑)
仕方ないのでその後軍手で作業。
そしてほのかにタケノコやトウモロコシを茹でた時のようないいにおいがします。
植物で黄色いものはみんな茹でると同じにおいがするんですね。

楮の根元の太いほうから、左手でグリっとまわして皮をむき、なるべく皮が裂けたりひび割れたりしないように下へむいていきます。このとき枝が出ているととてもむきにくいのです。最初の楮刈りの時に枝をキレイに落としていった理由がわかりました。



下がむく前の楮、上がむいた皮。皮のほうはちょうどさつまいもみたいな色をしています。なんだか見た目美味しそうなので、来ていたワンコがなぜかむしゃむしゃかぶりつきだしました。(笑)←その後しかられて繋がれてしまうw


午後すこし過ぎた頃までかかって、やっとすべての皮むきが終了。
楮の皮むかれたものがこれだけの山になりました。
私は紙はこっちの中身を使うんだと思っていたら、こちらはもう処分して肥料などにしてしまい、皮のほうを使うんだそうです。
知らなかった!


母屋の縁側に楮の皮をおいたところ。




ここで一休みで昼食をいただきました。
リチャードさんの奥様等が用意してくださいました。手作りのものは嬉しい。。
母屋の中はいろりがあっていい雰囲気です。クラフトペーパーのロールを敷いて巻き簀を置いただけの簡素な食卓も素朴でいい感じ。



高菜とめんたいこと豚肉をのせたごはん。
素朴だけどなかなかうちではやらない組み合わせなので、新鮮。




午後から今度は楮の皮からさらに上の黒皮をむく作業です。


あるていどヘラで黒皮を削ったら、ガムテープをはがすように上の皮をむきます。

これがなかなかうまいことキレイにむけることはめったになくて、けっこう難儀します。なのでみんなでおしゃべりしていて、「楮占いっていうのはどうか?」という話が盛り上がりました。(笑)かなりうまくベリーっとはがれたら、今年一年いいことがある。みたいな。
私もかなりキレイにはがれたものもあったので、今年は縁起が良いということにしておきます。。。(笑)



むいた皮は物干しにかけて干しておきます。知らない人がみたらかんぴょうにしか見えないですよね。


夕方まで作業しましたが、母屋の縁側を見てみるとあんまり楮の皮が減っていませんでした。
あれだけの人数でみんなで必死にやったのに、う~ん、そんなものか、、という感じ。これは本当に大変な作業だなと実感。とても時間、手間がかかるたいへんな作業です。こういうのはやはり大人数でやるからわいわいおしゃべり楽しみながら出来るんですね。寒いし、一人でやっていたら心が折れそうな作業になってしまう気がしました。昔農業と兼業しながら紙漉をしていた人々も、近所の人と協力しあいながらこういう作業をしていたのかもな~、、と思いました。今は、色々な立場のひとたちが色々な場所からなにかを求めてこういう場に集まっていて、不思議と共感出来る感じの人達が集まっている、そんな気がしました。


作業後は母屋で打ち上げパーティしました。
またしても美味しい手作り料理がたくさん、、、!色々な方とお知り合いにもなれて、本当に楽しい時間でした。
リチャードさんは、元々大学で木版画をやっていて、和紙に興味を持ち日本に来たという事ですが、当時の仲間などにはなんで作品制作じゃなくて紙まで漉くの?とあまり理解されなかったとか。でも紙を漉くようになってからものすごく制作の上での幅が広がって、いいものがつくれるようになったそうです。

人との出会い、楮という自然物や環境への理解が多分作品制作にも大きな影響があったんだと思います。その日来た方々もとても色々な立場の方がいて、環境問題をとりあげた映像作品をつくっておられる方、居酒屋経営をやめて船をつくる職人をはじめる方、大学で保存修復を勉強されてる方、紙漉き職人の方、綿の栽培をはじめた方、それぞれ多様ですが、簡単な自己紹介の中にもみなさんに共感出来るものがありました。



今回は単なる和紙の製法、という事を超えた体験が出来た気がしています。
現代人の幸せ、というものを少し考えさせられた一日でした。
リチャードさんはもちろん、今回参加された方々、すべてに感謝したい思いです。

紙漉体験1-楮刈りに行ってきました

2011年02月01日 00時22分17秒 | 制作過程
1/30、通っている絵画教室の企画で、紙漉体験のワークショップがあり、第一弾として、埼玉県の小川町というところに楮を刈りに行ってきました。


和紙は主に楮、三椏(みつまた)、雁皮といういずれも低木の木が主原料となりますが、楮をつかった和紙が現在は最も多いようです。現在つくられている和紙の原料は、ほとんどが海外から輸入したものだそうで、小川町ではそれに問題を感じた町の方達が20年前から楮を育てて和紙を漉く活動をはじめたそうです。今回はその活動に参加させていただいた形です。リチャード・フレイビンさんというアメリカ人の方に刈り取りから和紙漉きまで指導していただきます。

海外の方に日本古来の和紙について学ぶなんて、不思議な感じですが、
リチャード・フレイビン氏は和紙についてとても熱心に研究され、小川町に根付いて活動されているようで、リチャードさんが漉いた紙は小川町の地酒のラベルにも使われているようです。
↓ここの「おがわ自然酒」というお酒のラベルです。
後で買ってみようと思います。
晴雲酒造

この情報はTwitterで知り合った久保昌太郎和紙工房さんに教えていただきました。
たまたま行った日と同じ日に別のイベントで楮の皮むきなどをやっていたようなので声をかけさせていただいたら、リチャードさんの事も知っておられました。Twitterの出会いって本当にすごいなぁとあたらためて、、。
久保昌太郎和紙工房



写真でしか見た事のなかった楮の畑に到着。柵のない線路沿いで、ど迫力で電車通過していきます(^_^;)
枝の高さはだいたい2mくらいでしょうか。。
毎年根元から刈り取り、その株元から1年でそこまで枝が伸びて成長するそうです。



のこぎりや、剪定ばさみなどで枝をどんどん刈っていきます。
枝分かれした部分を、はさみなどで落としてそろえます。





同じくらいの太さの枝をまとめて、押し切りという道具で同じ長さ(90センチ)にそろえて切り、荒縄でまとめます。



畑の楮をほぼすべて刈り取り、これだけの束になりました。




最後に地元の方が豚汁をふるまってくださいました。
楮の畑の横に野菜の畑もあり、そこでとれたものでつくったとか、、寒い中だったので、とても美味しかった!





来週はまた小川町に行き、楮の蒸し、皮むきを行う予定です。