"JPS"

　真ん中に金色で"JPS"と銘打たれた黒地の箱（添付写真右側）。巷に溢れる他の煙草銘柄と異なり、シンプルだが格調高くデザインされたパッケージ。それは、かなり離れたところからでもその存在を明確に認識出来るほど、強烈な存在感を誇る。その名は、"John Player Special"（以後、JPS）、である。創業者John Playerの名を冠する由緒正しき米国煙草、である。
　JPSは、今まで紹介してきたようなマイナー煙草ではない。むしろ、メジャーな煙草である。全ての煙草屋や自販機で販売されてはいないものの、マイナー煙草ほど入手困難ではない。多くの街頭自販機でも販売されている銘柄、である。大抵のコンビにでも、JPSを入手出来る。また、値段も大抵のマイナー煙草ほど高価ではない。二百七十円と、並の煙草と同じ値段が設定されている。愛用している人を滅多に見ないが、大抵の愛煙家は、JPSの存在を知っている。メジャーでありながら、あまり目立たない。JPSは、かくも変わった銘柄である。
　しかし、JPSは、決して地味な煙草ではない。また、並の煙草と同等の扱いを受けてはいても、他の銘柄とは一線を画すクセを有している。他の銘柄に比して、JPSは、独特の辛味を特徴としている。拙者のようにフレーバー系を愛用している愛煙家にとっては、いささか強過ぎる辛さかもしれない。それでも、拙者は、JPSを気に入っている。JPSは、ただ辛いだけの煙草ではない。少しふんわりとした独特の芳醇な香りを楽しめる銘柄、である。かようなクセが、少々の高級感を出しており、JPSを他の銘柄と明確に区別している。
　拙者は、愛用こそしていないものの、たまにJPSを吸っている。元々、ブラストが切れた際のバックアップとして、JPSを吸い始めた。最初に試した時、ブラストのキツさと強烈な甘さに慣れ切っていた故に、JPSは異なる意味で刺激が強過ぎた。それ故、一度吸っただけで、二度と吸わないと決めていたぐらいである。しかし、しばらくすると、たまに自然とJPSを買っている自分に気付いた。知らぬ間に、JPSのクセに惹かれていたようだ。吸った直後に感じる辛さと、その後に抜けていくふわっとした豊かな香りが、非常に良い。ハマ人はハマる銘柄、である。
　なお、JPSには、実はメンソールがある（写真左）。ノーマルJPSのパッケージをベースにしつつ、オーロラをプリントした中々趣深いパッケージ、である。ノーマルと異なり、JPSメンソールは、日本では北海道・沖縄限定の「ご当地煙草」として知られている。それ故、その存在は、ほとんど知られていない。しかし、「ご当地」でありながら、ご当地以外でも入手可能である。オンライン通販でも入手可能であるし、各地のご当地煙草をも扱っている店でも買える。この事実に色々とコメント出来ようが、さておき、拙者の地元でも先日紹介した『かもめのキャビン』で入手出来る。
　肝心の味は、率直なところ、それほど良いとは思えない。JPSメンソールは、ノーマルと異なる葉が使用されており、ただのメンソールに終わらないように工夫されている。その甲斐あって、並のメンソールのようにただハッカだけが目立つ不味い煙草には、成り下がっていない。メンソールのテイストは確かに強いものの、煙草葉事態の味をしっかり味わえる。しかし、拙者が元々メンソールを嫌っている事情も相まって、肯定的には評価し難い。立派な工夫は認められるが、上述したノーマルの魅力は、完全に失われている。それ故、拙者は、JPSメンソールを二度と吸わないと決めている。ただし、ノーマルは、今後もバックアップとして吸い続ける。
　繰り返せば、JPSは、メジャーでありながらメジャーではない銘柄である。しかし、シンプルだがこれほど目立つパッケージは無いし、味もパッケージ同様に独特のオリジナリティと存在感を有している。JPSは、言わばマイナー・メジャーであるが、並の銘柄以上のクオリティを有しているように思う。それ故、JPSを本稿で取り上げた。その辛味を嫌う人も当然出てこようが、まだお試しになられていない方は、是非一度お試し願いたい。