バイクライフ・バイクツーリングの魅力を北海道から。
聖地巡礼-バイクライディングin北海道-
六月の風10 三国峠
三国峠は標高1150m。道内の峠としては最も高い所にある峠だ。
大雪山系の奥深く(正確には裏大雪、または東大雪というらしいが)、石狩川の水源、十勝川の水源にも近く、北海道の屋根にかかる峠と言ってもいい。
タウシュベツを出て、国道273号線に合流したら、ひたすら霧の下の快走ロードを北上する。
十勝三股の駅跡近くにはログ風のレストランが一軒。
かつて入植した人々が庭に植えたのであろうルピナスが野生化して、あちこちできれいな花を咲かせているのだが、先を急ぐ僕はただ通り過ぎてしまう。
糠平温泉を過ぎたところから、道は本当に山の中、生活の気配がしない風景の中を走ってきたが、この十勝三股を過ぎると、完全に別世界のような気がしてくる。
あまりに広い森林の中の一本道。
日本ではないような、そんな感覚だ。
と、道端にエゾ鹿がいてこちらを見ていた。
しばらく進むと、さらにもう一頭、同じように道のすぐ側まで迫る森の縁に立って、こちらを見詰めている。
そういえば北キツネにも、十勝で何頭か出会っていた。
いずれも写真に収めることはできなかったが…。
北海道のツーリングでは、野生動物との出会いも比較的多く恵まれる。
しかし、鹿の場合は衝突事故に気をつけなければならない。
鹿は集団で道を横断するので、一頭が目の前を横切ったら、続けざまにもう一頭来るかもしれない。
道東の見晴らしよく、民家もないだだっ広い郊外の道では、車の流れが3桁に達する(!)ことさえままあるのだが、鹿との衝突事故も後を絶たない。
剥き身のバイクでは高速で衝突した場合は鹿も、そして自分も助からない。
いくら走りやすい道でも、注意は必要なのだ。
気を引き締めて走り続けると、目の前に大きな山のそそり立った斜面と、空中にかかる巨大な橋が見え始めた。
三国峠だ。
2008年6月18日。6時7分。
アイヌの人たちはこの一帯を『カムイミンタラ』と呼んでいた。
『神々の遊ぶ庭』。
なんと美しく、荘厳な名前だろうか。
よく晴れた朝。
早朝雲海をなしていた霧は朝日に消え、神々の庭は見る見るその全貌を現す。
三国峠駐車場到着6時19分。
それから30分間、通った車は大型トレーラートラック2台、乗用車1台の計3台のみ。
ほとんど無風の峠はむしろ霧の中の十勝平野よりも暖かくさえ感じられ、
近く、あちこちで聞こえる鳥たちの賑やかな声と、遠く、かすかに耳鳴りのように聞こえる風のかすかな音以外に、何も聞こえない。
時折思い出したようにさっとわたる風が上気した頬に気持ちよく、僕はただ、ずっと立ち尽くしていた。
いや、もう余計なおしゃべりはやめよう。
六月の風。
今ここに。
神々の庭を見下ろしつつ。
(つづく)
次回は糠平温泉から道道85を行き、然別湖へ向かいます。乞うご期待。
大雪山系の奥深く(正確には裏大雪、または東大雪というらしいが)、石狩川の水源、十勝川の水源にも近く、北海道の屋根にかかる峠と言ってもいい。
タウシュベツを出て、国道273号線に合流したら、ひたすら霧の下の快走ロードを北上する。
十勝三股の駅跡近くにはログ風のレストランが一軒。
かつて入植した人々が庭に植えたのであろうルピナスが野生化して、あちこちできれいな花を咲かせているのだが、先を急ぐ僕はただ通り過ぎてしまう。
糠平温泉を過ぎたところから、道は本当に山の中、生活の気配がしない風景の中を走ってきたが、この十勝三股を過ぎると、完全に別世界のような気がしてくる。
あまりに広い森林の中の一本道。
日本ではないような、そんな感覚だ。
と、道端にエゾ鹿がいてこちらを見ていた。
しばらく進むと、さらにもう一頭、同じように道のすぐ側まで迫る森の縁に立って、こちらを見詰めている。
そういえば北キツネにも、十勝で何頭か出会っていた。
いずれも写真に収めることはできなかったが…。
北海道のツーリングでは、野生動物との出会いも比較的多く恵まれる。
しかし、鹿の場合は衝突事故に気をつけなければならない。
鹿は集団で道を横断するので、一頭が目の前を横切ったら、続けざまにもう一頭来るかもしれない。
道東の見晴らしよく、民家もないだだっ広い郊外の道では、車の流れが3桁に達する(!)ことさえままあるのだが、鹿との衝突事故も後を絶たない。
剥き身のバイクでは高速で衝突した場合は鹿も、そして自分も助からない。
いくら走りやすい道でも、注意は必要なのだ。
気を引き締めて走り続けると、目の前に大きな山のそそり立った斜面と、空中にかかる巨大な橋が見え始めた。
三国峠だ。
2008年6月18日。6時7分。
アイヌの人たちはこの一帯を『カムイミンタラ』と呼んでいた。
『神々の遊ぶ庭』。
なんと美しく、荘厳な名前だろうか。
よく晴れた朝。
早朝雲海をなしていた霧は朝日に消え、神々の庭は見る見るその全貌を現す。
三国峠駐車場到着6時19分。
それから30分間、通った車は大型トレーラートラック2台、乗用車1台の計3台のみ。
ほとんど無風の峠はむしろ霧の中の十勝平野よりも暖かくさえ感じられ、
近く、あちこちで聞こえる鳥たちの賑やかな声と、遠く、かすかに耳鳴りのように聞こえる風のかすかな音以外に、何も聞こえない。
時折思い出したようにさっとわたる風が上気した頬に気持ちよく、僕はただ、ずっと立ち尽くしていた。
いや、もう余計なおしゃべりはやめよう。
六月の風。
今ここに。
神々の庭を見下ろしつつ。
(つづく)
次回は糠平温泉から道道85を行き、然別湖へ向かいます。乞うご期待。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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いいですね~、空が高く青い。(5枚目)
空気が澄んでるんでしょうね~。^^
雄大な景色、日本じゃなく見える。(7、8枚目)
日本の中では、特に琉球国と蝦夷国は別の国のような景色のようですね。
いいな~。^^
自然や風景の写真を撮る人たちは確かに人工物を外しますね。そういえば私も普段はそうしようとしていたと思います。
確かに道路は入れてますね、私…。
やはり道があって初めて進んでいけるライダーだからなのでしょう。改めて感じました。
ikuniさんはこれらの山も登ったことがあるのですね。頂上からの眺望はさぞかし素晴らしいことでしょう。
山の人は朝が早いのですが、ライダーも早起きがいいなと今回思いました。
この日はよく晴れて、前日曇りや雨だったせいで空気がなおさらきれいだったのではないかと思います。
私自身、風景に圧倒されていました。
ところで、下から3枚目の縦長の大きな写真、右上の空の中にゴミのように映っているのは、大きな鳥です。
すごく高いところを滑空していました。
なんだか神々しく感じました。