バイクライフ・バイクツーリングの魅力を北海道から。
聖地巡礼-バイクライディングin北海道-
GPZくん、目覚める。
4月の中旬にはバッテリーを積んだGPZ。
その日、カバーの下で埃はやはり積もり、冬眠前に落とし切れなかった汚れも、硬化して汚くなっていた。
軽く掃除もした。
しかし、エンジンはかけなかった。
いや、バッテリーのチェックも兼ねて、セルモーターを回したのだが、かからなかったのだ。
モーターは、これが4年以上経つバッテリーかと思うほどに、力強く回ったのだが
のべ30秒ほどのクランキングでも、GPZは目覚めなかった。
さて、今日。
路面の雪はすべて消え、目の前の坂道には滑り止めとして撒かれた一冬分の砂が、路面に積もって滑りやすい。
この3連休は、初日に病院へ行き、午後寝て、少し仕事をした以外は、2日目も、今日3日目も出勤だった。
GWの前半が終わるというのに、GPZのエンジンはまだかからない。
ふと、今日のうちに目覚めさせよう…と思いついたのだった。
カバーを外し、車体を少し拭き、そしてセルを回す。
今度はセルの周り方が少し弱い。
それでも回し続けていると、さらに少しずつ、回り方が弱くなってきた。
ここ数年、毎回春の一発目は始動に手間取る。
最後までかからなかったことは一度もないのだが、IPONEオイルは低温では粘りが強く、抵抗が大きいのだ。常温まで温めてしまえば、強くしなやかな油膜と高い気密性を発揮して、エンジンを長持ちさせ、パワーロスをなくし、燃費も向上させてくれるのだが、その分、始動時のみ、少し手間取ることになる。
さてさて、バッテリーが上がる前に何とかしなければならない。
毎年、家の前の坂道を惰性で下りながら「押しがけ」で目覚めさせるのだが、これに失敗すると、この坂道はGPZを押して登ることは不可能だ。それだけの急坂であり、それだけ重いのがGPZなのだ。
この押しがけは一発勝負で、やり直しは利かない。
もしこれでかからなければ、ZOOMさんに来て、坂の下でピックアップしてもらわなければならなくなる。
普段なら特に迷うこともなく押しがけに行くのだが、今日は少しためらった。
セルを回していた時に、GPZが全く目覚める気配を感じさせなかったからだ。
かからなかったら、それでお別れになる可能性もある。
どうしようか、さんざん迷ったのだが、かかる方に賭けて坂を下ってしまった。
冷静に考えれば、すべきでない賭けである。
忙しさと感傷的気分とで、判断力を失っていたのだろうか。
坂を下りながら、3速に入れて、クラッチを繋ぐ。
車輪が回ってクランクを回す。…が、掛からない。かかりそうな気配がしない。
一度、停めた。
まだ家から70mほどしか下っていない。
坂の下まであと400mほどある。
引き返そうかと思った。それくらいなら、坂を押し上げられるのではないかと。
やってみたが駄目だった。全然登らない。もしも妻に頼んで二人でやっても、おそらくは無理だ。
少し後悔したが仕方がない。坂の途中はバイクの駐輪もままならないほど、道幅が狭いのだ。
掛からないなら下の大通りへ出て、平らなところを邪魔にならないところまで押して行って、そこに停めるしかない。
再び、GPZに跨る。
…と、掛かるような気がした。
目覚めるような気がしてきたのだ。
錯覚もいいところだ。
再び惰性で坂を下る。
3速に入れて、クラッチを繋ぐ。
掛からない。
回し続ける。
チョークを一旦戻し、アクセルを開ける。
再びチョークを引き、アクセルを微開に。
クランクを2000回転で回すように、速度を調整する。
掛かった!
一度エンジンが力を持ち、それがしぼんで消えたかと思った時、
GPZは冬の長い眠りから目覚めて、エンジンを回し、その静かな、しかし重低音の聞いた排気音を奏でてくれた。
坂はまだまだ続いている。
クラッチを切っても停まらない。
目覚めた。
またクラッチを繋ぎ、坂の下まで降りて平地を少し走り、水温の上昇を待って坂を上がってきた。
ほぼ半年ぶりの乗車というのに、全く違和感を感じない。
これは去年と逆だ。去年は少し感覚がずれているのを感じたのだった。
極低速での小回りも、クラッチのつながり方、切れ方も、タイヤの路面をとらえる感覚も、
身体が覚えている通りだ。
GPZの巨体は、一度エンジンがかかってしまえば、後はほとんど力は要らない。
力強く、ゆるやかに、急坂を登り、我が家へ帰ってきた。
チョークを戻してもアイドリングは1000回転で安定し、エンジンはヘッドだけでなく、クランクケース、サイレンサーまで熱が程よく回っている。
おはよう、GPZ。
春だよ。
その日、カバーの下で埃はやはり積もり、冬眠前に落とし切れなかった汚れも、硬化して汚くなっていた。
軽く掃除もした。
しかし、エンジンはかけなかった。
いや、バッテリーのチェックも兼ねて、セルモーターを回したのだが、かからなかったのだ。
モーターは、これが4年以上経つバッテリーかと思うほどに、力強く回ったのだが
のべ30秒ほどのクランキングでも、GPZは目覚めなかった。
さて、今日。
路面の雪はすべて消え、目の前の坂道には滑り止めとして撒かれた一冬分の砂が、路面に積もって滑りやすい。
この3連休は、初日に病院へ行き、午後寝て、少し仕事をした以外は、2日目も、今日3日目も出勤だった。
GWの前半が終わるというのに、GPZのエンジンはまだかからない。
ふと、今日のうちに目覚めさせよう…と思いついたのだった。
カバーを外し、車体を少し拭き、そしてセルを回す。
今度はセルの周り方が少し弱い。
それでも回し続けていると、さらに少しずつ、回り方が弱くなってきた。
ここ数年、毎回春の一発目は始動に手間取る。
最後までかからなかったことは一度もないのだが、IPONEオイルは低温では粘りが強く、抵抗が大きいのだ。常温まで温めてしまえば、強くしなやかな油膜と高い気密性を発揮して、エンジンを長持ちさせ、パワーロスをなくし、燃費も向上させてくれるのだが、その分、始動時のみ、少し手間取ることになる。
さてさて、バッテリーが上がる前に何とかしなければならない。
毎年、家の前の坂道を惰性で下りながら「押しがけ」で目覚めさせるのだが、これに失敗すると、この坂道はGPZを押して登ることは不可能だ。それだけの急坂であり、それだけ重いのがGPZなのだ。
この押しがけは一発勝負で、やり直しは利かない。
もしこれでかからなければ、ZOOMさんに来て、坂の下でピックアップしてもらわなければならなくなる。
普段なら特に迷うこともなく押しがけに行くのだが、今日は少しためらった。
セルを回していた時に、GPZが全く目覚める気配を感じさせなかったからだ。
かからなかったら、それでお別れになる可能性もある。
どうしようか、さんざん迷ったのだが、かかる方に賭けて坂を下ってしまった。
冷静に考えれば、すべきでない賭けである。
忙しさと感傷的気分とで、判断力を失っていたのだろうか。
坂を下りながら、3速に入れて、クラッチを繋ぐ。
車輪が回ってクランクを回す。…が、掛からない。かかりそうな気配がしない。
一度、停めた。
まだ家から70mほどしか下っていない。
坂の下まであと400mほどある。
引き返そうかと思った。それくらいなら、坂を押し上げられるのではないかと。
やってみたが駄目だった。全然登らない。もしも妻に頼んで二人でやっても、おそらくは無理だ。
少し後悔したが仕方がない。坂の途中はバイクの駐輪もままならないほど、道幅が狭いのだ。
掛からないなら下の大通りへ出て、平らなところを邪魔にならないところまで押して行って、そこに停めるしかない。
再び、GPZに跨る。
…と、掛かるような気がした。
目覚めるような気がしてきたのだ。
錯覚もいいところだ。
再び惰性で坂を下る。
3速に入れて、クラッチを繋ぐ。
掛からない。
回し続ける。
チョークを一旦戻し、アクセルを開ける。
再びチョークを引き、アクセルを微開に。
クランクを2000回転で回すように、速度を調整する。
掛かった!
一度エンジンが力を持ち、それがしぼんで消えたかと思った時、
GPZは冬の長い眠りから目覚めて、エンジンを回し、その静かな、しかし重低音の聞いた排気音を奏でてくれた。
坂はまだまだ続いている。
クラッチを切っても停まらない。
目覚めた。
またクラッチを繋ぎ、坂の下まで降りて平地を少し走り、水温の上昇を待って坂を上がってきた。
ほぼ半年ぶりの乗車というのに、全く違和感を感じない。
これは去年と逆だ。去年は少し感覚がずれているのを感じたのだった。
極低速での小回りも、クラッチのつながり方、切れ方も、タイヤの路面をとらえる感覚も、
身体が覚えている通りだ。
GPZの巨体は、一度エンジンがかかってしまえば、後はほとんど力は要らない。
力強く、ゆるやかに、急坂を登り、我が家へ帰ってきた。
チョークを戻してもアイドリングは1000回転で安定し、エンジンはヘッドだけでなく、クランクケース、サイレンサーまで熱が程よく回っている。
おはよう、GPZ。
春だよ。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
« 別れと旅立ち。 | 雨の連休 » |
一旦は、アムロの言葉を真似た、GPZくん。
これはこれは、少し長い距離を走ってやらないとねー。
tkjさん、こんにちは。
「認めたくないものだな、自分のバイクの調子が悪いということは…」
そうなんです。少し長い距離を走って、燃焼でできるH2Oが結露せずに完全に排出されるように、エンジンと排気系をあたためてやらないと、中に水適が着いて、これがまた悪さをするのでね。
GPZクン、一度目覚めると、鮮やかでした。
樹生さんもGPZ手放すのですね。
私も昨日、彼とお別れをしました。
このブログを見て、青いGPZの美しさにほれ込み、買ったのが5年半前。
95年青、中古1万キロ弱から、5年半4万キロ走り最後のメーターは53,000でした。
彼との出会いを導いていただき、それからもいろいろと教えていただき、樹生さんに一言お礼をと、今朝覗いてこの記事を拝見し、あまりの偶然に驚いています。樹生さんのように10万キロを乗ることはできず、樹生さんにも彼にも少し残念で申し訳ない気持ちはありますが。本当にありがとうございました。
ソロの長距離ツーリングが中心でしたが、マメなメンテもできず、ずいぶんと荒い運転もしたにもかかわらず、5年間、一度の峠での転倒(車体小破)のみで無事故、もちろんケガもなし。購入時の整備不良による一度のブレーキトラブル以外、260キロの重い車体は一度の車体トラブルもなく、本当にタフで安全に私を自由で素敵な旅へと連れて行ってくれた素晴らしい相棒でした。燃費も20キロほどと良く、長距離ツアラーとしては理想のバイクだと今も思っています。どなたかがここで言ってました「巡洋艦」とはGPZそのものです。
朝、6時にむつの宿を出発して下北半島を一周して、雨の東北道を1000キロ走って、午前2時半に横浜に戻る。そんな一人旅も信頼できる相棒がいたからこそだと感謝しています。
樹生さん宅と同じく我が家も一人息子、すでに就職して4年目ですが先月結婚式を挙げました。「まだ、バイクに乗るの?」といわれる年ですが、私には必要です。が、年相応のアメリカンでゆっくり仲良くツーリングしようという気はありません。
2008年のZZ-R1400が次の土曜日に納車予定です。
これからの樹生さんの、新しいバイクでの記事を楽しみしています。
これからもよろしくお願いいたします。
GOROさんもでしたか。
お疲れ様でした。GOROさんも、GOROさんのGPZ1100も。
ライダーにはライダーの数だけ物語があり、それは、他人にとっては何の価値もないものかもしれないけれど、自分にとってはかけがえのな人生の、美しい人生の一コマ。
だれもが、幸せになるために生きているのだと、私の妻はいいます。私も、そう思います。
御子息様のご結婚、おめでとうございます。
そしてGOROさんの新しい相棒ZZ‐R1400とのバイクライフが、さらに深く、豊かなものとなりますように、北の大地からお祈り申し上げます。