武田知弘ブログ

フリーライターの武田知弘のブログです。

「日本の金持ちの税金は世界一高い」という巨大なデマ

2013-01-03 12:56:25 | Weblog
「日本の金持ちは世界一高い税金を払っている」という巨大なデマが、一部のネット掲示板
などでまことしやかに語られています。
ビジネス誌などをななめ読みした知ったかぶりのネット論者が、広く流布したようです。

が、これは明白にデマですから!!

このデマは、高額所得者の名目税率だけを取り上げていると思われます。
つまり
「日本の所得税の最高税率は40%で世界的にも高い」=「日本の金持ちの税金は世界一高い」
という短絡的な発想から、このデマが生じたようです。

が、これはただ単に表面上の税率だけを言っているに過ぎません。
彼らは「名目」だけを見て「実質」をまったく見ていないのです。

名目だけを見れば日本の所得税の最高税率40%というのは、世界でも有数の高さです。
でも、日本の税制には様々な抜け穴があって、実質的には高額所得者の税金は、先進国の中
では最低といっていいほど低いレベルになっているのです。
少しでも経済や税制をかじったことがある人間なら、わかりきった話です。

たとえば大金持ちの中で、もっとも占有率の高い職業である開業医は、売上の約70%を自動
的に差し引いて所得の計算ができる超優遇制度があります(売上5000万円以下の場合)。

また大金持ちの定番収入である株式配当収入では、所得税、住民税含めて20%しか課せられ
ません。だから株をたくさん持っている大金持ちは、株の収入からの税金はたった20%で済
むのです。
これは先進諸国の中では、断トツで低い税率なのです!!
マネーゲーム大国のアメリカでも、これより高い税金をとっているのです!!
しかも日本は現在は、特別措置として半額の10%にしているのです!!
だから大金持ちの中には、住民税を含めて10%の税金しか払っていない人がたくさんいるの
です。
何億円も配当をもらって10%の税金で済んでいる人が、実際に大勢いるんです。
何度も言いますが、先進諸国の中で配当の税金がこんなに安いのは日本だけですよ!

たとえば3億円以上の収入があるトヨタ社長の税負担率は20%程度なのです。
これで金持ちの税金が高いなんて言っているんですから、笑い話というよりもう怪談ですね。

実際、アメリカの所得税の税収と比べれば、一目瞭然です。
アメリカの所得税収は、だいたい1兆ドル(80~90兆円)あるのです。
日本の所得税の税収は13兆円くらいです。
つまり日本の所得税収入はアメリカの6分の一以下しかないのです。
GDP規模の差を考慮しても低すぎます。GDP比で見れば日本は40兆円くらいないとおか
しいのです。

日本は貧乏人が税金を払っていないからだろうって?

違います。
日本はアメリカよりも低所得者への課税が厳しいのです。

アメリカは、収入のある人のうち46%は、所得が低いと言う事で、所得税を免除されています。
しかし日本は収入のある人のうち、所得税を免除されているのは20%以下です。

またアメリカでは、高額所得上位10%の人が税収の70%を負担しています。
日本は上位10%の人は60%しか負担していません。

つまりアメリカの高額所得上位10%は、50兆円から60兆円の所得税を負担しているのです。
対する日本の高額所得者10%は、8兆円程度しか負担していないのです。
人口の違い、GDP規模の違いを差し引いても、この差は異常です。
日米とも、高額所得上位10%というのは、だいたい年収700万円以上くらいの人たちが該当
するので所得階層的には、両国はあまり差はありません。

とにもかくにも、日本の金持ちの実質的な負担率は非常に低いということなのです。
これらのデータから概算すると、日本の金持ちはアメリカの金持ちの半分以下しか税金を払ってい
ない(多く見積もっても)ということが言えるのです。
またアメリカだけじゃなく、他の先進国と比べても日本の金持ちの実質的な所得税負担率は低いの
です。
こういうことはちゃんとデータを見ていれば、わかることなのです。

日本の金持ちの税金は、あの競争社会の国アメリカの半分以下なのですよ!!
日本の金持ちがだれだけ優遇されているかという話です。
日本の金持ちが、アメリカ並みの税金を払っていれば、すぐに30兆くらいの税収にはなるはず
であり、消費税増税など必要ないのです。

これらのデータはネットでもすぐに確認することができます。
これを見てもまだ「日本の金持ちの税金は世界一高い」という人がいるのなら、明確な証拠をあげ
ていただきたいものです。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「内部留保金には課税できな... | トップ | 早川タダノリさんへ »

Weblog」カテゴリの最新記事