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【ハート・ロッカー (2008)】 ホラーより怖ぇ

2010年11月07日 | 映画



言わずと知れた『アバター』と今年度アカデミー賞を競いあった映画。一応観ておかねば。


これは映画という範疇に入るものなのか。擬似ドキュメンタリー風味だけども完全に作り物であることは分かるように出来ている。しかもそれほどストーリー性はない。その上これは女流監督ゆえかそれとも狙った演出なのか、戦争に対する一歩引いた冷たい目線から淡々と爆弾処理班の日常が描かれていく。

冒頭で提示される「war is a drug.(戦争は麻薬である)」という言葉からもわかるように、この映画は"戦争中毒/依存"の映画だという。であれば少しメッセージが薄ペラく感じた。

ただし「アカデミー取る程の映画か?」という『アバター』擁護派(もしくはアンチオスカー派)の批判的な外野の意見には賛同できず、映画としてはかなり良質の部類と思うし、受賞もさもありなんと思う。

余計な説明や無駄を排除したリアリティ重視の戦場の描写は、観客さえも戦地にいると錯覚させるほどの臨場感を醸し出しているし、手に汗握る爆弾処理の描写はホラー映画よりよぽど怖い。主人公ジェームズの姿も、男性監督ならばもっと大げさな感情表現などで視覚に訴える描き方をするであろうところ、静かな中に複雑な感情の機微をいれ込むことに成功しており、よほどそこにもリアルさを感じる。


しかし残念に感じるのは、映画の主題である"戦争中毒/依存"が物語の中に不足していると思ってしまったところ。


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ジェームズは基本的にはイイヤツである。仲間を危険に晒すような行動を取りながらも、その上でリスペクトし合える良好な関係を結ぶことができる。DVD売りの少年が死んだ時には強い怒りの感情を顕(あらわ)にする。"戦争中毒/依存"と言っても決して狂っているようなキャラクターではない。

しかしジェームズは家族のもとに戻ったあと、その幸せであるはずの生活に空虚さを感じる。そして最後は再度戦場へ戻った姿で映画は終わる。

しかしここでボクは「あ、そう」と思ってしまう。

生まれたばかりの赤ん坊を置いて、死と隣り合わせの戦地に戻ろうというだけでもう十分狂っていると言いたいのだろう。ただ人間というものは刺激を求める生き物である。同じように戦争に対して精神依存に陥る映画というものは過去にもいろいろ提示されてきた。しかも本作では爆弾処理という究極の命の駆け引きを経験した者の話である。そんな心理状態になるであろうことは映画的には容易に想像できる。

狂っていない普通の人間が結局こんな選択をしてしまうということが、これまでの同類の映画と違うリアルさであり、この映画の評価されるところなのだろう。そういう意味では女流監督だから描けた映画なのかもしれない。シリアルの並ぶ棚を前に佇むシーンは本当に素晴らしいと思う。

しかしボクにとってはやはり「あ、そう」という風にしか見えなかった。

たぶんもっと彼が戦場に戻る必然や、場合によってはちょっと狂っているぐらいの映画的・物語的演出が欲しかったのだと思う。つまりは「戦争映画ってこれぐらいのことは起こるもんであり、もっと刺激が欲しいのだ。」ということである。結局は何か物足りなかったのだ。

この映画、「ボク自身が映画に対して過度な刺激の中毒になっていた」ということに気づかされた映画であった。それはそれで面白い体験だったりするw



ところで実は主役のジェレミー・レナー自体が『28週後...』で見た顔だと思ったし、レイフ・ファインズは出てるは、デヴィッド・モースは出てるは、ガイ・ピアースまで出てくるので、実はドキュメンタリーには全く見えないw。そこももっと映画映画して欲しいと思ってしまった原因かも。


■『ハートロッカー』予告編(Youtube)
評価:★★★☆☆



ところで、キャスリン・ビグローって『ニア・ダーク/月夜の出来事(1988)』の監督/脚本だったのですねっ!コレ好きなんだよなぁ。まあランス・ヘンリクセンが出ているだけでその映画は名作扱いなのですがw



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