明るいときに見えないものが暗闇では見える。

映画を消費モノにさせないための咀嚼用ブログ。自己満足風。
それと苦手な文章の練習用。

【おまえうまそうだな (2010)】

2011年08月15日 | 映画



草食恐竜に育てられた肉食恐竜の話。
子ども向けアニメであるが、決して子どもダマしではない。


「どうしよう、お肉がおいしいよう(T_T)」

これは、主人公ハートが自分が肉食竜であることに気がついてしまったときのセリフ。

親兄弟を食べてしまう側の生き物であるというその残酷な宿命を受け入れハートは母親の元を離れ一人生きていく。そんな彼がひょんなことから草食恐竜の卵の孵化に立ちあってしまいその父へと成長していくという神のイタズラ。

本作は子ども作品ながらも、そこに描かれているのは紛れも無い現実ばかり。食うか食われるかの弱肉強食の容赦ない世界。社会や立場の違いによる対立。個人の意志以上に尊重される群れの意志。

しかしその出自や立場の違いを越えられるものとして一本貫かれて描かれるもの、それは「相手を思いやる心」。

相反する立場であってもそれぞれが一生懸命に生きている結果が今の現実を作り出し、それは矛盾なくこの世界を成立させている。そこには単純に矛先を向けられる憎むべきワルモノも存在せず、魔法や奇跡が起きてご都合主義に物事が解決したりもしない。完全なる現実を見せつけながらも同時にそこで生きていくための真の道筋を示している。


そんな中もちろん親子愛モノである。泣き所も満載。
「ボク、かけっこ負けなかったよね」
「そんなこと知ってるよ。もう子どもじゃないんだ。」
涙腺決壊、はっとさせられるようなステキなセリフ達もあちこちに盛り込まれる。

作画やキャラデザが子どもぽいと大人が観るには敬遠されがちかもしれない。しかし捕食時の残酷な描写もこの作画だからこそサラリと見せられているのだと、のちのち関心させられたりもする。


ひさしぶりに良質なアニメを観た。本当に子どもに見せたい映画とはこういう映画だと思う。
『マイマイ新子と千年の魔法』とともに殿堂入り決定。



■『おまえうまそうだな』予告編(Youtube)

評価:★★★★★

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
大変申し訳ありませんが個人的にはこの映画は絵柄、内容、スタッフで色々気になった所がありました (JH)
2012-05-25 17:23:17
気分を害すかもしれないので覚悟してください。

絵柄については「あまり子供向け作品に詳しくない人が考えた」「子供向けならこんな感じで良いかな?」感が強くて残念たと思いました。子供向けに詳しい人なら、子供向けなりに魅せるデザインにしそうです。アンパンマンとかは上手く魅せてると思います。おまうま映画のキャラデザ・総作画の人は後にマジックツリーハウスもやってますが、そちらでは良い感じです。

内容については、誰向けなのか良くわかりませんでした。子供向けメインとして見るには過激ですし、中高生~大人向けメインとして見るには子供っぽいと思いました。捕食とか戦闘とかその他の描写は規制多い最近(ここ2,3年)の子供向けとしては頑張ったかと思います。自然界の厳しさもライトとハートが生まれる前から出てたと思います(卵がライトとハートの以外全滅)。世界観や設定や戦闘等は結構厳しい感じです。しかし、それ以外がよくある子供向けって感じがしたので何だか中途半端かな?と思いました。

スタッフについては、脚本家はわかりませんが監督は過去の履歴を見ると最近はあまり子供向けらしい仕事はしておらず、「おまえうまそうだな」が初監督?みたいですね。その辺も、「あまり子供向けに詳しくないのかな?」「誰向けか中途半端」と思わされる部分かもしれません。この人はたまにTVシリーズの忍たまに演出かコンテとして来るのですが最近はあまり子供向けらしくない回を担当してます。17期で演出として来た時は普段の10分アニメの単発話とは思えないバトルシーンも目立ちました。19期で絵コンテとして来た時は、普段の10分アニメの単発話とは異質の全体的に静かな雰囲気でした。(忍たまは確かに女性ファンが目立ちますが)
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おまえうまそううだなでは (絶太)
2012-10-18 00:53:17
この映画で、現実の厳しさが感じられるとしたらそれはスタッフのおかげかもしれません。映画はプロデューサーが「とにかく女の人が泣ける話」という要望を出したり、企画や宣伝の「心温まる」路線の強調してた感じですが、スタッフは「捕食する側とされる側のテーマの話だったから、やっぱりそこから逃げて作る事は出来ない」「自然描写も含めて、ちょっとリアルに世界観を作らなくてはいけない」「人の生き死についてはあまり嘘をついちゃいけないと思う」 と寧ろ客観的とも言える発言”も”していました。お母さん恐竜がまた子供を生んだ所についても「お母さんにも普通の女性としての性がある」「生々しい感じが出るといいなとは思っていました。」と発言していました。勿論、媒体や企画の都合上、表現規制の制約は強かったのでしょうがその枠の中で表現しようとしたのかもしれません。
2011年アニメージュ8月号の「この人に聞きたい」というインタビューで発言していました。



インタビューの画像はここに。
http://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493
2011年アニメージュ8月号はAMAZONで中古販売してるかもしれません。インタビューの発言を見て、スタッフと上層部と溝があったんじゃないかと勘ぐってしまいました。何故なら、あれだけ作品紹介や予告でも触れていて、映画の本来の主軸だと思われるハートフル関係についてスタッフはそんなに語っていませんでした。寧ろありがちなハートウォーミング要素を否定したり、エンターテイメント性についての発言もありました。プロデューサーからの「泣ける話を」の要求についても「人が死ぬか別れるかと言う小手先のテクニックで泣かせたくない」って言ってるんであって”可哀想な話”が嫌だと言ったわけではありません。

しかし、企画段階で何か引っかかるものを感じてもそれが戦略的には有利になる可能性もあるので難しいです。ファミリー映画とか其処らのお綺麗な感動が好きな女性を狙ったものだと「心温まる~」って材料がつく事多いと思います。子供はあまり媚びられると嫌になる事もあるのですが、親受けは良かったりする事もあります。「おまえうまそうだな」もああいう材料があったから、最近でも図書館だか会館だかで上映会をやれたのかもしれません。
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おまえうまそうだなの映画版 (レゴン)
2014-07-10 05:28:55
自分もこの映画には言いたいことがあります。

企画、キャラデザ、キャスティング、起用、マイアサウラの母親に
ついての意見なので長くなります。
出来れば返答をくださるとうれしいです。

■企画

絵本や童話が人気だからって何でも映画化しようなんて
企画段階で無理があったようにも思えます。
2005年に上映された「あらしのよるに」なんかは
1冊ごとの完結でなく数巻も話が続いたので良かったと思います。
しかも「あらしのよるに」は原作者も脚本に参加出来てたので幸運だったでしょう。

それに比べて「おまえうまそうだな」は1冊ごとの完結の絵本です。
元々繋がってない複数の話をまとめるというだけでも無理があるのに、与えられた尺に合わせて伸ばしても原作ファンは難色示すでしょう。
しかも、こちらは「あらしのよるに」と違って原作者は脚本に参加してません。
ホンの最低限の事しか注文せず、絵本と違うものを頼んでいました。
http://mi-te.jp/contents/cafe/1-9-742/のインタビューで原作と違う物を頼んだ件に触れています。


推測かつ乱暴 な言い方でになりますが、おそらく企画側は「人気絵本のネームバリュー、親子の絆という部分に目を付けた」という、浅はかな考えだったんじゃないかと思います。

情報段階から「安易に絵本のネームバリュー、親子愛に目を付けてそう」と思ってました。映画版の絵柄もああいう路線にしろってスタッフ側に命令したのかもしれませんね。

まあスタッフ達もスタッフ達で、企画段階にあったかどうか怪しいアクションだか活劇もやりたいと思ってたそうですが。
(ただ、アクションだか活劇もやりたい要望は、絵本のネームバリューや親子愛を利用したいか否かとは、あまり関係なさそうなのでまた別の話だと思います。)

■キャラデザ方面

ガラッと変わる例もありますがこの映画に関しては、
「本当はもっと違うデザインでやろうと思ってたけどポケモンみたいにしろと頼まれて仕方なくやった」という可能性も必ずしも否定しきれない。

「丸っこいキャラだけど格好良いアクションをやる」的な発言はhttp://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493を参照。
アニメージュ2011年8月号の、この人に話を聞きたい。P86~89の中の一部です。見れなかったすみません

こういった意見しか知らないのですが、これだけだと本当に監督(下手すりゃキャラデザイナーも)の意向であのデザインになったのかどうかわかりません。

「丸っこいキャラだけど格好良いアクションをやる」的な発言は、こんなキャラになったのは仕方ないがが、それでもアクションをやってやる」という意地なのかもしれませんし。

と思いました。

■キャスティング

キャスティングも子供店長だの、原田知世だのを起用すれば、子連れ層狙えるだろうという浅はかな考えだったのではないでしょうか?
ただ、キャスティングはスポンサー、プロデューサー、監督、音響監督の誰が決めたのかは分からない状態です。
原田知世については、監督曰く「自前にイメージしてなかった」そうですが。
まあアニメ映画にありがちな芸能人のキャスティングは
宣伝費とかの事情があるのかもしれませんがハッキリした事情は謎です。

■起用理由

「大山ドラえもん映画ワンニャンの映画のカーチェイスパートの部分を担当して評価高いらしく、しかも当の本人もアクション物もやりたいと言ったらしいスタッフ」を、

何故、映画版おまえうまそうだなのような当たり障りのないほのぼのアニメ映画の監督に起用したのは一体何が理由だったのかと疑問があります。初めての映画監督作品でこれですか、と思いました。

アクション云々はhttp://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493でも述べてました。
(アニメージュ2011年8月号の、この人に話を聞きたい。P86~89の中の一部です。見れなかったすみません)

自分は、アニメ業界の事は知りませんが

もし「アクション関係で評価されてる&本人もそういう事をやりたいと言った」って事が本当ならば、
何故当たり障りのないほのぼのアニメ映画の監督にしたのか不明なんです。


■マイアサウラの母親
この母親には 遠回しにスタッフ陣も呆れてたのでしょうか?
監督の人が「肉食だとわかっていながら平気で育てちゃう浮世離れした」と言い方もしてました。
http://photozou.jp/photo/photo_only/2860818/156276493を参照。
(アニメージュ2011年8月号の、この人に話を聞きたい。P86~89の中の一部です。見れなかったすみません)

もしかしたらスタッフ起用前から、母親の浮世離れしたキャラが決まっててそれを見たスタッフ陣が呆れたとか。
 
直接貶してるわけではありませんが(直接言うのはマズイでしょう)、「浮世離れ」「平気で」ってのはあまり良い印象がないです。 監督初めとするスタッフ陣も内心、苦笑いか失笑してたのでしょうかね?
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JHさんへ (takakuss)
2014-07-11 14:39:42
JHさん、超おくればせながらコメントありがとうございます。

気分を害すことはありませんので、お気になさらず。みんないろんな意見をお持ちなのだとオモシロイです。

たしかに大賞年齢は中途半端なものに感じれるのもわかりますね。ただ私は、本作はアラフォーの自分として面白かったので満足しています。子供向けかどうか、という点についてはあまり気にしていません。というか完全に子供だまし(例えばオモチャ購買欲を刺激するだけ)の作品や、子供が観るだけだからと最初から大人の観賞のことなど考えていないアニメに比べると、この作品はレベルが違う作りだったと感じています。

またご意見お聞かせいただければ嬉しいです。
返信する
絶太さんへ (takakuss)
2014-07-11 14:47:23
絶太さん、コメントありがとうござます。
ものすごく遅レスすみません。

なるほど、情報源までご提示ありがとうございます。
やはりそういう意気込みで作られているんですね。おっしゃる通りに、その点では非常に上質なものとして仕上がっているとあらためて感じました。

ただやはり子供向けで図書館とかで上映するにしては、少し扱いにくいかもしれない。図書館とかでその上映タイトルをセレクトする大人たちが、「子供に見せる、分かりやすいもの」悪く言えば「安直なもの」を求めていたりする場合は、この作品はあてがいづらいかもしれません。決してアンパンマンが安直なわけではないですが、アンパンマンみたいなものを求めている人には、この作品は煙たい作品に見えると思います。

またお越しください。
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レゴンさんへ (takakuss)
2014-07-11 15:15:01
レゴンさん、コメントありがとうございます。

またいろいろと情報もありがとうございます。

わたし自身は、この作品をひとつの完成品としてみた場合に十分によくできていると感じています。多方面で「子供向け、大人向け、どっちなのかわからない」的な意見を読みことが多かったですが、個人的にはそのへんも含めてよいバランスだったと思っています。

キャラデザとか、キャストとか、監督さんのお話とか、いろいろいただいたのですが、少し話のレベルが変わってしまって恐縮なのですが、、、、

自身の経験なので、アレですが、子供をバカにしていると思わないで聞いてもらえればですが、幼少の頃、私はたくさん映画を見に行きましたが、ストーリーなんぞさっぱり理解していなかったことを覚えています。おぼえていることと言えば、どこがかっこよかった。どこが(なぜか)泣けた。あのシーンが印象に残った。全体として好きかキライか、ぐらいです。

なので、今の子供達もその程度なのだろうと思っています。ですので、オトナが楽しめるレベルの内容を子供の喜ぶ見た目に入れ込んだ子供映画、というものを思い切り歓迎しています。内容難しくても多分そもそも子供はそんな点は気にしないし、必要なところは勝手に拾い集めて学ぶべきものは吸収している。なのでしっかり大人レベルのものを少しだけオブラートに包んで出してあげるほうが良いと思っています。「もののけ姫」とか「千と千尋」とか、まさにそうです。だからといって子供だましのものを出すなんていうことは決して無い。

そういう意味で、絵本を映画にする。的な点についても大歓迎なのです。実際たんなる水増しになってしまっていては台無しなのですが、原作プロットを借りたインスパイア作をキチンと再構築する、という過程ができれいれば十分よいものはできます。

逆に、「あらしのよるに」は原作も(立ち)読みましたが、大事なところが削ぎ落とされて、表面だけさらった感がどうしても拭えない出来に感じられました。こちらは水増しではなく魂が抜かれていた感じです。

デザインや監督が誰か、などの点については、疑問やこれさえ違っていれば、とかんがえるところも多々あります。ただいろいろな経緯をたどって完成品ができる以上、その制約(場合によっては自由)の中で製作者がいかに努力して良い物を作れているかを判断基準として作品を観たいと思っておりますため、細かい点についてはコメントが苦手ってのもありますが、あまりレゴンさんのご期待に添えるご回答は差し上げられないのが現状でございます。

おこしいただきありがとうございました。
推敲もなく思ったことをダダ流しに書いてしまいました。またよろしければ遊びに来て下さい。

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