下司貴大ばりっしも

バリトンに焦がれて

リサイタルに向けて

2014-07-26 10:21:59 | 小話
今回のリサイタルでは、コルンゴルドが影響を受けた作曲家を3人並べ、それぞれの作風からコルンゴルドの音楽を生成する要素を見出して行きます。こちらをブログでも少し紹介致します。
先ず、一人目はイタリアオペラ界の重鎮、ジャコモ・プッチーニです。すぐにコルンゴルドの評判はプッチーニの耳にも入り、絶賛したひとりでした。また、コルンゴルドもプッチーニの近代和声や前衛的な管弦楽法、劇的要素を摂取していたことは言うまでもありません。

2人目は、今年生誕150周年を迎えるリヒャルト・シュトラウスです。
彼もまた若きコルンゴルドの才能を目の当たりにし、戦慄と恐怖すら覚えたという…。
コルンゴルドの描写的で耳に馴染みやすい音楽表現は、リヒャルト・シュトラウスから直接学んでいたことを裏付けています。
コンサートでは、リヒャルト・シュトラウスが作曲した歌劇《ナクソス島のアリアドネ》のなかから、ハルレキンという登場人物によって歌われる「愛、憎しみ、望み、ためらい」という曲を演奏致します。舞台は18世紀のウィーン。とある大富豪が「宴会の余興で、悲劇オペラと喜劇芝居を同時に上映せよ」と命じるところから始まる劇中劇。悲劇のヒロイン アリアドネに対し、彼女を励ますために挿入された喜劇的側面から描いた歌です。

最後の作曲家は、ドイツオペラの巨匠 リヒャルト・ヴァーグナーです。
彼の作品を演奏するに歌手には、オーケストラを拡大したことから強靭な声が求められています。しかしなが、ヴァーグナーの時代にも、イタリアのベルカント唱法が台頭し、彼もまた美声で滑らかな歌唱を好んでいました。コルンゴルドのオペラ作品に見て取れるヴァーグナー的特徴としては、やはりライトモチーフの存在です。ライトモチーフとは、登場人物を象徴的に示唆させる短い動機のことを言います。このライトモチーフは《タンホイザー》のオペラの中でも多用されています。
リサイタルで演奏する《タンホイザー》の「夕星の歌」は、声と旋律美が見事にマッチしたヴォルフラムという登場人物によって歌われるバリトンの超がつく名曲です。
《タンホイザー》は、主人公タンホイザーが享楽の象徴であるヴェーヌスと純愛の象徴であるエリザベートという2人の女性のあいで苦悩する物語です。ヴォルフラムも密かにエリーザベトに心を寄せていますが、自己犠牲をもって愛を証明しようとする彼女の姿を悟り、夕星に向かって祈る場面です。しかしながら、この夕星というのは、宵の明星であり=金星、つまり愛欲の象徴であるヴィーナスです。そこには、ヴァーグナー自身の女性観や人間の皮肉が込められています。

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