デブ氏とブス氏
2XXX年。政府は成人以上のある一定の基準に達したデブとブスは
全員抹殺する法案を施行した。
増えすぎた人口により、食糧問題は人類の存亡がかかった問題になっていた。
デブはその元凶ということだ。
一方、ブスは人が外見での悩みやコンプレックスを抱えないためにも、
また、より美しい形で人間を残していくためにも必要がなかった。
それから100年。
法の施行により人口は激減。
それに伴って様々な諸問題は解決した。
また人は外見で悩むことはなくなり、無駄な苦悩、妬みから解放され、
争うことはなくなった。
みんな、同じ形、同じ顔、完全なる平等が存在していた。
ある年に、何の間違いかとても不細工な女の子が生まれた。
アヒル口でかわいいと評判のお母さんから生まれた子供だったが、
アヒル口とは言えないような、
言ってしまえば、ひょっとこのような顔の子だった。
誰もが20歳になれば殺される運命にあると思っていた。
ところが、成長するにつれて、顔立ちがはっきりひょっとこめいてくると、
同じ顔、同じ形をした男たちは、
同じ顔、同じ形の女たちよりもひかれていった。
この子と誰が結婚するかで争いが起こり、
次第にはこの子は神だとあがめるものまで現れた。
法律の特例として、この子は抹殺されないこととなった。
やがてその子からまたとんでもない不細工な子が生まれた。
今度はとてもデブな、見たこともないような体形をした男の子だった。
これまた、同じ顔、同じ形をした男たちに飽きた女たちは、
誰がこの男と結婚するかで争いが起こり、
一夫多妻制の導入まで踏み切ることとなった。
それから200年。
すっかりデブとブスであふれかえった地球はそれはそれで楽しそうに暮らしていた。
「地球にはデブとブスばっかりだな」
ある宇宙船に乗った一人の若者がこぼした。
それと同時に宇宙船から発射されたミサイルが地球に直撃。
地球は木端微塵になった。
「これで俺が宇宙一のイケメンだ」