活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

関頭■HAYABUSA、いのちの物語(その13)

2011-06-14 00:00:19 | 宇宙の海

HAYABUSA、いのちの物語
開催日時:2011年5月5日(木) 14時~ 約1時間半
会場:すばるホール 2階ホール
主催:財団法人 富田林市文化振興事業団
協賛:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
講演者:上坂浩光氏(HAYABUSA BACK TO THE EARTH監督)

※ 重ねがさねとなりますが…。
  本レポートはブログ主の記憶とメモを主とし、そこにこれまでに
  収集した情報とブログ主の解釈等を加味して記載しています。
  そこに書かれてある内容に事実と相違等ある場合、その文責は
  一意にブログ主にあります。
  


■関頭

2008年12月4日。
HBTTEのアニマティクス完成試写会が、科学技術館のシンラドーム
シアターで行われた。

開催に先立って。
シナリオ、もしくはプレView版ともいったものが事前に関係者には配布
されていたようである。

それというのも。
講演会にて、監督が「試写上映前に、こっそりと映像を差し替えた」と
語っておられた故である。

だとすれば。
皆は、今日の試写はリエントリ・シーンの無いラストだと思っている
ことになる。

製作委員会のメンバーであれば。
同じメンバーであるJAXAからの申し入れは、当然共有されていた
だろう。

それに対して。
飯山総合プロデューサーを初め、各メンバーがどう感じたかは不明である。


ただ。
監督が、差し替える前の。
つまり、リエントリ・シーン無しの映像を今回の試写会に向けた正式版と
して用意することについて同意していたのであれば、JAXAの要請を
やむを得ないものとして受け入れていたのであろう。

それを好むと好まざるとに関わらず、だ。


そうした。
誰にも相談できない中で。
監督の、一世一代の賭けとなる差し替えが行われた。

このことは。
ひょっとしたら、飯山総合プロデューサーには、あるいはリブラの田部社長
には事前に打ち明けられていたのかもしれない。

ただ。
事前に知らせることで、彼らを共同正犯にしてしまうくらいなら。
そう監督が考えられたとしても、不思議ではない。

そうであれば。
正に、誰にも分かち合えない緊張の昂ぶりの中。

いよいよ試写会は始まった。



ここで。
監督にとって、大きな僥倖が生じた。

JAXAからの参加メンバーに、川口PMも直前になって加わった
ことである。
他のメンバーは、吉川先生のお名前が講演会や星居ブログでも挙げ
られているが、その他は不明である。


フルハイビジョンの4KX4Kには及ぶべくもない、512X512の
低解像度。

それでも。
シンラドームの天空に描かれた、宇宙を飛翔するはやぶさの姿は。

様々な立場の人の胸に、それぞれの感慨を呼び起こしたことだろう。

ただ。
そこに描かれた思いは、あくまで監督というフィルターを通したもの
である。

それが、実際にはやぶさの開発に、そして運営に携わってきた人々に、
また今回の製作に参画してきた人々にどのように響くのか。

監督としては、気が気ではなかっただろう。

その監督の、不安や緊張は。
ラストのリエントリ・シーンがスクリーンに投影されるに及んで、
最高潮に達していた…。



そして。
静かに、上映が終了した。

ホールに響く音楽が収斂していくに連れ、高まるのは監督の鼓動。
そして。
製作委員会による、作品評価の話し合いが始まった。

この中で。
どのようなタイミングで、リエントリ・シーンに関する議論が為された
のかは不明である。

だが。
講演会の中で、監督はこのシーンについて。
川口PMから、いいじゃないのという言葉を貰ったこと。
この一言で、あのシーンの採用が確定したことを語って頂けた。


感情表現の妥当性よりも。
科学的描写の正確さよりも。

何よりも、監督がこの試写会で確認をしてほしかったこと。
それが「いのちの物語」というテーマであり、それに繋がるリエントリ・
シーンの描写であった。


監督は、このシーンを描くことを。
ものつくりに関わるものとして、どうしても譲れない部分だった。
と講演で述懐された。


それを、描き切ることを承認された。

その際の監督の喜びは、いかばかりのものであったことか。

そのリエントリ・シーンの採用について。
監督の星居ブログには。

また、ひとつ懸案だった事項も、川口先生がいらしたことで、
 進展がありそうす。

 

 」

とだけ記されている。

句読点の多さも。
(で)が抜けていることも。
空行の後で、「…」が挿入されていることも。

単に、指の滑りとみることは容易い。
実際に、そうかもしれない。

けれども。
僕はそこに、躍動を禁じえない監督の歓喜の感情の迸(ほとばし)りを
感じずにはいられないのだ。



こうして。
HBTTEの製作は、一気に3月に向けて加速していくこととなった。

(この稿、続く)


(付記)
本文中に、試写の終わりを「音楽が収斂するにつれ…」と描写したが、
これは少し誤解を招く書き方。

なぜならば、この時点ではまだ酒井義久氏の手になるHBTTEの
サウンド・トラックは完成していなかったと思われるためである。
(HBTTE 帰還Verの年表にて、酒井氏と音楽プロデューサーの
 安念透氏の起用が決まったのが2008年10月7日とあるため)

従って。
この時点では、8月のストーリーボード・プレゼンと同様に、音楽も
有り合わせのものを。
そしてナレーションは、監督が吹きこまれてた。

そのVerのHBTTEも、是非観てみたいものである。

小惑星探査機 はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH 帰還バージョン Blu-ray版
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有限会社ライブ

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