活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

第21回天満橋ビブリオバトル参戦記

2012-07-19 23:48:22 | ビブリオバトルの海


上の写真は。
昨日の天満橋ビブリオバトルで発表された、本の一覧である。

ビブリオバトルって何?
と思われた方は、こちらをどうぞ。

ビブリオバトルの公式HPである。


簡単に言えば、あるテーマに基いて各々が一押しの本を
選び、その本について持ち時間5分でプレゼンを行う。

全員の発表が終わったら、観戦者も含めて皆で投票し、
その日のチャンプ本を決める。


これが、ビブリオバトルである。

ビブリオは、ラテン語で「本」。

ビブリオバトルが、”知的書評合戦”と和訳されるのも、
さもありなんといったところではある。

※ テーマは無しで、フリーで行われる場合もあります。


これまで、昨年秋の奈良県立図書情報館を皮切りに、
何箇所かのビブリオバトルに参戦したけれど、ここ
天満橋がいつのまにかホームグラウンドとなった感が
ある。

#最近は、堺市立中央図書館にも入り浸っているけれどw



さて。
この本の表題を見て、テーマがお分かりだろうか?

ここで引っ張っても仕方がないのでOPENにすると、
今回のテーマは「異性」

なんとも奥深く面白いテーマだったのに、仕事が少し手間取って
半分くらいはプレゼンを聞けなかったのが残念。


見事、チャンプ本に選ばれたのは、「午前三時の無法地帯」。
残念ながら、プレゼンを聞くことは出来なかったので、
内容は不明。


なんとか聞くことの出来たプレゼンの中で、僕が気に入った
本は、穂村弘の「短歌ください」

選者の穂村氏曰く、「怖い歌は、良い歌。」だそうである。

やはり、感情の迸(ほとばし)りにこそ、人の真実は現れるし、
そうして抽出された言葉が研ぎ澄まされた刃のようであれば、
これはもう参った!と絶賛するしかない。

そうした趣意なのだろうと、思っている。


この本は、一般の人の投稿した歌の中から、歌人穂村弘が
チョイスした作品がまとめられているらしいんだけれど、
この日に参加した人の一人が実は歌人で、この本に衆力されて
いる人も何人もお知り合いなのだとか。

こんな偶然も、また楽し。

ちなみに、どんな怖い歌が掲載されているかを、少し御紹介。
※ これ以上知りたい方は、買って読んでね♪


「ほんとうは誰も愛していないのよ」
        ペコちゃんの目で舐めとるフォーク
                       ゆず


ううむ。
怖い。
これは、怖い。

あのペコちゃんの目で、この言葉を吐かれたら。
そう想像しただけで、もうたまらなく怖い。

更に、もう一首。

今二匹蚊を殺したわ息の根を止めました
        この手あなたをさわる手
                        森響子


これも、もうゾクゾクっと生理的な怖さがある歌である。


この本を紹介していただいた方曰く、こうした句はその
殆どが女性が読んだものなのだとか。

しかも、18歳とか、結構若い人がそうした句をよく
ものしているらしい。

・・・。
女性は、やはり年齢を問わず魔物だなぁ。


と。
ステレオタイプに性差で人を判断することが是か、
あるいは否か。

そうした問いかけを篭めた本があって。

今回僕がプレゼンしたものは、そうした中の一つ。

それが「フィメールの逸話」である。


この本、残念ながらもう絶版で手に入らない。
古書店等でもし見つけられたら、速攻GETされる
ことをお勧めする。


では、僕のプレゼンした内容を紹介しよう。


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今回のお題は「異性」。
まあなんとも、奥の深いテーマな訳ですが。

その中で、僕が選んだ、というよりも。
お題を聞いた瞬間にもうこれしかない!と思った本があります。

それがこちら。
「フィメールの逸話」。
言い換えれば、”女性の珍しいお話”ですよね。

これって、見てもお分かりかと思いますが少女漫画です。
それも、今から約30年も前に描かれたものです。

古い作品なんですが。
異性。つまり男女って何ということを考えるやいなや、
僕にはこの本が浮かんできてしまったんです。

じゃあ一体どんなお話なの?ってところなんですが。

一言で言えば。
男女ってなんだろう?
人を好きになるってどういうことだろう?
ということを、考えさせてくれる。そんな作品です。


人の個性って、性差で枠にハメられるものなのでしょうか?
男らしくとか、女らしくとか。
そんなステレオタイプな言葉は、もはや死語となりつつあります。

そんな今、男とか、女とか。そんな性差で人を区別することは、
もう意味が無いのかもしれません。

それでも、この世に男と女という性差がある限り、
超えられない壁は、両者の間に有るようにも思えます。

では、男を男性に、女を女性たらしめている。
その性差を生み出しているものは、一体何なのでしょうか?

肉体? 精神? それとも、その両方?

この物語は、読み手にそれを深く、深く訴えかけます。


主人公は、高校生の蔦井慧(つたい けい)。
彼は、不慮の交通事故により亡くなりますが、その生きたいと
思う意思が、同時期に人生に絶望して自ら死を選んだ同級生の
天野和音(あまの かずね)の体に入り込み、蘇生します。

こうして、女性の体を手に入れた慧は、かねてより好意を寄せて
いた国坂将に、猛然とアプローチを開始します。

慧が、男性であった頃。
元来内向的で友人も殆どおらず、自宅と学校を往復するだけの
日々を過ごす彼にとって、活動的でサッカー部のキャプテンを
務め、友人も多い将は、憧れを通り越して愛情を感じる存在でした。

勿論、同性である男を好きだという自分の気持ちは、とても
口に出せるものではありませんでした。

でも女性の体を手に入れることが出来た今は、誰に恥じることなく、
自分の気持ちを素直にぶつけることが出来る。

そう。慧は、性の頚木から逃れることにより、自分の感情を
思いのままに解放する翼を手に入れることが出来たのです。

慧は、将に対して、自分が実は慧であることを告白します。

しかしそれは、義務感や罪悪感ではなく、本当の自分を知った上で、
自分を愛してほしいという思いからです。

そのストレートなアプローチに戸惑い、更には魂が男である人物からの
告白という事実に、健全な男性としてごく自然な拒否反応を示しながらも、
今自分が女性であることに無上の喜びを持ち、輝いている慧に対して、
将も徐々に心魅かれていきます。


そうした将との心の触れ合いが深まる程に、
慧は心身ともに輝きを増していきます。
それはさながら、慧の魂が慧という肉体の蛹を脱ぎ捨てて、
和音という蝶へと脱皮したかのようです。

様々な感情のスレ違いを経ながらも、徐々に結びついていく二人。
でも、そうした二人の前に、新たな悲劇と衝撃的なラストが…。

というところで、以降は自主規制とさせていただきます。

いやあ。
30年前ですよ。
まだ性同一性障害なんて言葉が全くポピュラーでは無かった頃に、
こんな作品を世に送り出した鈴木雅子。
そして、それを掲載させた月間セブンティーン。

どちらも凄いと思います。

なぜお前が月刊セブンティーンに連載していた作品を読んで
いたんだ?という突っ込みは、却下します(笑)。


男とは、女とは?
性差とは、一体何だろう?

人が人を好きになる。
そのことの前に、性差は障壁となるや、ならざりや?

そんな、色んなことを考えさせられた作品でしたが、僕がもっとも
この作品に心を惹かれたのは、生まれ変わった慧の変化です。

慧=和音が、初めは戸惑いながらも、次第に女性となった喜びに
満ち溢れ、開花していく様は、読んでいると、こちらまで心を覆う
鱗が落ちていくような気がします。

殆どの人は、理由は様々ですが、自分の気持ちはなかなか素直に表現
できず、普段その本心は深く魂の奥に収めて生きています。

でも、どこかで自分を、あるいは自分の気持ちを解放したいとも思って
います。

だからこそ。
自らを解き放つ翼を得た慧が、魅力に満ちて見えるのでしょう。

そしてその魅力こそが、この作品を30年の歳月を経た今も輝かせ
続けているのだと思います。


そして、それ故にラストの悲劇が際立つのですが、そこはまあ
言わぬが花というもの。

もはや手に入れることも困難なこの本ですが、是非機会があれば
ご一読ください。


そこには、間違いなく”純愛”が描かれています。


以上です。


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あまり準備も出来ずに臨んだので、結局はここにある内容の
6割くらいしか話せていない。


でもま、本来レジュメや資料を用意せず、自分のプレゼンのみで
本の魅力を伝えることが、ビブリオバトルの真髄であるならば。

それもまた、止むなしといったところである。



さて。
前回からのトレンドで、チャンプ本のプレゼンターが次回の
お題を選ぶこととなっている、天満橋ビブリオバトル。

場所を替えて、Bar 2nd Labで開催された打ち上げ会の
終了間際に発表された、そのお題は「てっぺん」。

まもなく開幕するロンドン五輪にちなんで、とのことである。


さて。
どの本を取り上げようか。
こうしている時間が、本当に楽しい。

至福の、選考タイムの始まりである。

(この稿、了)






午前3時の無法地帯 (1) (Feelコミックス)
クリエーター情報なし
祥伝社




短歌ください (ダ・ヴィンチブックス)
クリエーター情報なし
メディアファクトリー

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