活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

承:試行■HAYABUSA、いのちの物語(その8)

2011-06-05 03:02:53 | 宇宙の海

HAYABUSA、いのちの物語
開催日時:2011年5月5日(木) 14時~ 約1時間半
会場:すばるホール 2階ホール
主催:財団法人 富田林市文化振興事業団
協賛:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
講演者:上坂浩光氏(HAYABUSA BACK TO THE EARTH監督)

※ 重ねがさねとなりますが…。
  本レポートはブログ主の記憶とメモを主とし、そこにこれまでに
  収集した情報とブログ主の解釈等を加味して記載しています。
  そこに書かれてある内容に事実と相違等ある場合、その文責は
  一意にブログ主にあります。
  


■承:試行
こうして。
HBTTEの製作が、本格的にスタートした。

時に、2008年8月。
中国では、ちょうど北京オリンピックが開催されていた頃である。
チベット等の少数民族が、聖火リレーの際に各地で抗議活動を行おうと
して国際問題となっていた。
#この稿の趣意とは全く異なるため、何が国際問題かはここでは言及
 しない。
 私のスタンスは、既に何度もこのブログの他のコラムの中で述べて
 いる通りである。

日本では、自民党の福田内閣が政権11ヶ月目を迎えていた。
今にして思えば、それでも長期政権と思えてしまうが。

また。
夜空を振り仰げば。
生憎と、月齢との組み合わせがあまり宜しくはなかったものの。
毎夏の夜の風物詩であるペルセウス座流星群が、今年も13日をピークに
しずかに降り注いでいた。

そんな中。
監督率いるLiVEでは。
HBTTEの絵コンテ製作から、作業が開始された。

絵コンテがどのようなものかは、既に認知度も上がっているであろうこと
から、ここで詳説はしない。

ただ、参考までに絵コンテのフレームを掲載してみよう。
ちなみにこれは、スタジオジブリで使用しているものである。


このように、左右どちらかにフレームを、そして反対側に台詞や動作、
その他の注意点を書き込んだものが絵コンテである。


作品を創り上げる上での絵コンテの重要性は、かの巨匠アルフレッド・ヒッチ
コックの台詞『私の映画は撮る前にすでに完成しているのだ。』を引用する
までもないであろう。

この趣意は。
脚本と絵コンテが完成した段階で、後は映画はフィルムへの落し込みという
流れ作業に移る。創造的な行為はここで完結しているというものである。

勿論。フィルムに映像を落としこむ前に、監督の脳内にしかない作品観や
映像イメージを具体化し、それを製作に携わるスタッフ(カメラマン、AD
その他)に正確に落とし込む必要があることは論を待たない。


これが、一般的には一人で作品を生み出すことができる、例えば小説のような
創作物であるならば。
物語の骨子を固めずに、筆の勢いのままに書き進めることも、作家のタイプに
よってはあるだろうけれど。

少なくとも自分一人では製作することが能わない映画の場合には、絵コンテ
によるイメージの共有化は必須であろう。

#ちなみに漫画の場合には、これに相当するものがネームというものになる。


それが故に。
HBTTEの製作過程においても。

監督率いるLiVEの制作スタッフは、代表である監督を含めて計7人
(2011年6月現在)。

この中で何人がHBTTEの製作に係わったのかは不明であるが、恐らくは
総動員体制ではあったろう。

そして。
カット毎に担当を割り当てて並行して製作を進めていったとすれば。
監督のイメージを伝え、また確認するためにも、絵コンテの製作は当然必須
となる。


となれば、次なる課題は。
どのような絵コンテを作るか、という問題である。

なにせ。
全天周ドーム向けの映像を製作することは、LiVEにとっても初めての
試みなのである。

上で紹介したような長方形のスクリーンを意識した絵コンテだと、ドーム
に展開する映像のイメージがうまく反映されないのではないか。

それが故に。
製作当初は、特殊なフォーマットの絵コンテを考案し、書き始めたのだと
監督は講演で語っていただけた。

その、フォーマットとは。

ひとつのカットが、まるでライフルスコープのような円形状となっている
もの。

下記が、監督が画面に表示してくれたそのイメージを自分なりに再現して
みたものである。


このように。
実際のドームの球状を意識し、そこにどのように映像が展開されるのかを
反映させていく方式で。
HBTTEの絵コンテ製作は、開始された。

もっとも。
この様式を採用していたのは、そう長くはなかったらしい。

絵コンテの製作と平行して行われるアニマティクスを行ううちに、
従来の絵コンテへの書き込みでも、十分にドーム映像への置き換えが
できるようになったためと、監督は語っておられたが。

このエピソードは。
監督にとって、いやLiVEにとってフルドームシアター映像の製作が
本当に試行錯誤の中で始まったのだなということを、改めて追認させて
くれる…。


ちなみに、2010年11月15日の監督の星居ブログにて、浜松科学館
での講演会の模様が語られている

そこでは、講演会終了後にHBTTEの絵コンテも閲覧できるようにした
として、その模様の写真もUPされている。
(うらやましい!)

さすがに中に描かれた絵までは見えないけれども、そこには長方形の
フォーマットの絵コンテ用紙がしっかりと写っていることが確認できる。


こうして。
8月6日以降。

絵コンテ。アニマティクス。シナリオ。音楽…。
その他、HBTTE製作がダイナミックに動き出した。

講演でも語られていたが、科学技術館でのアニマティクス映像の試写
会が開催されたのが11月半ばなので、アニマティクス映像は3ヶ月
半ほどで完成したこととなる。

更にそこから、4K解像度のフルレンダリング版の完成が3月上旬の
ため、約4ヶ月。

どちらも、驚くべきスピードである。

といっても、他に比較できる物差しを持っていないために、純粋にあの
映像を作り上げた期間がそれくらいなんだ!?という自分の素直な感覚
上の驚きではあるが…。

(この稿、続く)


小惑星探査機 はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH 帰還バージョン Blu-ray版
クリエーター情報なし
有限会社ライブ

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