福祉マネジメント&デザイン

SocialWelfare Management&Design
〜福祉サービスに経営と創造を〜

研修テーマの偏りを解消するための要素化

2017年09月10日 | 人財育成
当ブログでも何度か”事業計画書”について取り上げています。
”事業計画書”が法人・事業所をはじめとする組織の成長戦略という位置付けであれば、職員の成長戦略を描くためには”人材育成計画”が必要です。
今回は”人材育成計画”の中でも、特に”研修計画”にフォーカスを当てたいと思います。

年間の”研修計画”を”事業計画書”に盛り込んでいる法人・事業所も少なくないのではないでしょうか。
よくある”研修計画”として、4月の新人研修から始まり、夏場の熱中症予防、冬場の感染症予防などはメジャーで、そのほかにも虐待防止や身体拘束廃止、腰痛予防の介助技術、看取り、リスクマネジメント(事故防止)など、部署や各種委員会を中心に多岐にわたる研修テーマを計画し、できるだけ多くの職員が参加できるような配慮をしつつ、自己研鑽に励まれていることと思います。

ただし、皆さんの法人や施設の研修計画のテーマをよく見てみてください。
計画されているテーマのほとんどが、現場業務に直結する内容ばかりではないでしょうか。
座学だけではなく、デモンストレーションやロールプレイなど、より実践に近い体験型の研修を企画し、職員の理解をより深められる工夫をされていますが、繰り返します、現場業務に直結する内容ばかりではないでしょうか。

そのような研修テーマを「サービス」というカテゴリーでまとめます。
一方、当ブログで取り上げているような経理理念や事業計画書、フレームワークなどの研修テーマを「組織マネジメント」というカテゴリーでまとめると、福祉施設では圧倒的に後者の「組織マネジメント」に関する研修が不足しています。

確かに、現場業務に長けたスペシャリストを育成するという主目的は果たせるかもしれませんが、経営理念をきちんと理解していないのに、「なぜ虐待をしてはいけないか?」「なぜ感染症を予防するための処置を施さなければならないのか?」「なぜ施設で看取り介護(終末期ケア)をしなくてはいけないのか?」という学びが本当に生きてくるとは思えません。
「虐待はしてはいけない(当たり前だ)」「インフルエンザが蔓延しないように(自分がかかったら嫌だし)」といった次元での理解に止まっているのではないかと推察されます。

「組織マネジメント」と「サービス」は車(法人・事業所)の両輪と例えられます。
片方だけ高性能なタイヤを履いた車輪でも、もう片方が溝もないタイヤを履いた車輪では、うまく走れなかったり、途中でパンクしてしまうかもしれません。
では、皆様の研修計画の両輪がきちんと回転するためには、まずは研修テーマを整理することから始めましょう。

具体的には、研修テーマによって、「組織マネジメント」と「サービス」に分類します。
さらに、「(利用者に対して)間接的」と「(利用者に対して)直接的」で分類します。
「間接的」とは、利用者に直接手を触れないが、利用者の生活を間接的に脅かすリスクマネジメンなどの内容を含んでいます。
また、「直接的」とは、利用者に直接手を触れ、利用者が安心・安全に生活を送れるようにする介護技術やコミュニケーション技術などの内容を含んでいます。
これらの4つの要素ごとポイント化し、レーダーチャート化したのが下記のグラフです。
このようにすることで、研修テーマの要素化が図れ、どういった要素の研修を多くしているか(偏り)の可視化が出来ます。
今回は上記の4要素で分類しましたが、皆様の法人・事業所でもっと良い分類軸があれば、4要素だけではなく、独自にカスタマイズしてみてください。



例えば、「理念研修」は「組織マネジメント」「サービス」「間接的」の要素のポイントが高く、それを踏まえて「直接的」なサービス提供につなげるという位置付けのため若干低く設定しています。
一方、「虐待防止」は「組織マネジメント」「サービス」「直接的」の要素のポイントが高く、それを踏まえて「間接的」なリスクマネジメンの意識づけを図るという位置付けのため若干低く設定しています。

あくまでも事例としてみていただきたいのですが、このように「◯◯研修を受講すると、積極性や責任性につながる」といったように、人事考課の情意考課の要素と連動させて研修テーマの要素化を図るのも良いでしょう。
研修計画は法人や事業所単位の計画でもありますが、個人別の育成計画に位置付けられる研修計画にも通じる部分があります。
研修の効果測定という概念がある通り、職員の能力を高次化させる要素または改善を有する要素に必要な研修は何かが可視化されていますので、逆引き的に必要な研修を職員一人ひとりに当てはめることも可能です。

是非、経営理念の実現に向けた人材育成を進める上で偏った研修テーマとなっているのであれば、研修一つひとつにどういった趣旨や身につけてもらいたい要素が含まれているかを伝えるためにも「研修テーマの要素化」に取り組んではいかがでしょうか。

管理人

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