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美術館・ギャラリー・撮った写真や好きな絵、そしてひとりごと

文学の触覚

2008-01-26 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
好きな作家のひとり=川上弘美 の名前につられて、東京都写真美術館へ「文学の触覚」を見に行きました。


dividualの作品は、暗幕に写し出されるページ。
その中で文字は静かに浮かび上がり、竜巻に巻き込まれるように風に吹かれて消えました。
情景を文字という手段だけで表現するという文学の限界を、なんとかして超えようとしているように感じました。


お目当て川上弘美+児玉幸子は、音に反応して形をつくる磁性流体の作品。モルフォタワー。
暗い部屋に洗面台があり、その鏡の前に立ってチャンネルを合わせると様々な質問をしてきます。

監視役の方に聞いたら、質問する声も川上弘美さんなんだそう。
深く落ち着いた声で、かなり哲学的な問いを投げかけられます。


そして一番印象に残ったのは穂村 弘+石井陽子の作品でした。
詩の中の言葉や文字が、私の手のひらに乗っかって揺れて燃えて消えて…

手のひらに映された文字に意味や感想が生まれたときに、それは生き物みたいになりました。


面白い企画展です。

☆☆☆  文学の触覚 @東京都写真美術館 ~2/17まで

日本の新進作家vol.6 スティル | アライブ

2008-01-12 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
東京都写真美術館にて、いま私と同じ時代を生きる4人の作品展です。

屋代氏の回転回 newバージョンに遭遇!
横浜トリエンナーレで見て、まずは驚かされ(=これホントに人間!?)、笑わせられ(=クルクルかぁ)、最後にはなんだか居心地の悪い気持ちになったシリーズ。

今回展示されていたのは学校プロジェクト。
高校の教室で、体育館で、小学校の中庭で大学で、屋代氏廻っております!
鮮やかに廻っております!!

球体や円柱状になることで、ひとりの人間がそこに存在していたということが揺らいでいるように見える。

前に私が感じた居心地の悪さはたぶんこのせいで、あまりに自然に風景に溶け込んでいるから不安になったんだ、たぶん。

でも、こんなものなのかもしれない。

私は、たとえば学生時代のことを覚えてる。人の記憶は加工・編集されるから、私は自分が覚えてる内容に自信はない。
いま思い出すのは風景の断片。そしてそれは、自分目線で見ている景色だけではなく。
小さな頃の自分・中学生(高校生)の自分が何かをしている風景もある。
周りの景色に溶け込んで、一つの風景になっている。

これがなつかしいってことなのかな。

回転体は景色に溶け込んで、でも強烈にその存在を主張する。
屋代氏が、様々な場所に自分の存在をマーキングをしている。。今後も気になるなぁ(笑)


他に、伊瀬聖子さんの作品も個人的に印象に残りました。

走る線路、風に揺れる緑、横切る人に、水の波紋。
形の残らない儚いものばかり。独特の世界でした。


☆☆☆   日本の新進作家 vol.6 スティル | アライブ @東京都写真美術館 ~2/20まで

ムンク展

2008-01-05 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
仕事帰りに上野まで、ムンク展を見に行きました。
夜に行くのは初めて。
国立西洋美術館、中庭をライトアップしてました。知らなかった~


今日は、15歳の私に再会してきました。
9年前、まだ千葉そごう美術館があったころ、夏に開催されたムンク展で全身の毛穴が引き締まるような体験をした高1のあたしに。


そのころから、ムンクといえば心理的・哲学的な画家だと思ってきたんですが、今回の企画展は、ムンクのデザイナーとしての部分、装飾画家としての活動が強調されています。

実際、今日あらためて「ムンクってこんなにたくさん色を使ってたのか」と驚きました。
記憶の中のイメージが版画だったのと、見たのがあまりに昔だったので印象がモノクロになっていたらしい。。

展示室をぐるっと見回すと…
「装飾」というよりも、むしろ複雑な物語を読むような連続性を感じました。

会場には生命のフリーズから労働者のフリーズ、途中にはオスロ大学講堂の壁画のための習作も並びます。

これらの絵は一枚ずつ見ても十分すぎるインパクトがあります。
ただ、こうして並べられ空間として構成されることによって、ムンクの心の動きが生々しく迫ってくる気がします。

死や不安というキーワードでくくられることが多いムンクですが、考えや価値観が少し揺らいでいる部分も感じられます。
一人の作家が探求し続けたテーマが、時間を超えて繰り返され複雑に絡みあい、形になっていました。


……
昔見たときはあんなに衝撃を受けたムンク、今日はほとんど痛くなかった……

私はもう、鈍い大人になったのかなぁ と思いました。


☆☆☆  ムンク展 @国立西洋美術館 ~1/6 日曜まで!