SUPER FLAT 2

非ファルス的にもっこりするものを肯定せよ!(神の性的不器用あるいはその性的悪戯に由来するもの達について)

ミステリック・サイン

2010年08月12日 | Weblog


>柄谷によれば、前近代の物語の言葉は「不透明」で、近代文学あるいは自然主義の現実描写は言葉を「透明」にすることで生まれた。そして、大塚によれば、キャラクター小説はその過程で抑圧された可能性の回帰として生まれた。つまり、キャラクター小説の誕生によって言葉はふたたび「透明」ではなくなり、現実を単純に描写するものではなくなった。しかし、それはただ「不透明」に戻ったわけでもなかった。なぜならば、キャラクター小説が導入した新しい言葉、まんが・アニメ的リアリズムは、記号的でありながら「自然主義の夢」を見る、すなわち、〈不透明で非現実的な表現でありながら現実に対して透明であろうとする矛盾を抱えた、マンガ表現のそのまた「模倣」として〉作られた言語だからである。(東浩紀著『ゲーム的リアリズムの誕生』94ページ)

 エイリアンの手に息子のシャツの柄が浮き出ており、主人公の姿も腕の反対側に染み出ている。叫ぶ娘の姿も体に染み出しているが、いずれも透過しているわけでも反射しているわけでもない。このエイリアンは泥で固めたように不透明な奴だが、どうやら自分では透明のつもりでいるか、透明になろうとしているようなのだ。このエイリアンの体内から皮膚の表面に染み出してブレる像をよく見てほしい。「ミステリック・サイン」とは、もちろん黒瀬陽平の作品シリーズのタイトルである。

 ところで保坂和志が「遠い触覚」の第一回で面白いことを書いている。ちょっと読んでみようか。

>芥川賞をもらったのはその一年半後の95年の夏のことで、Sさんのご主人の方の、つまりもともとカルチャーセンターの講師としておつきあいがはじまったIさんからお祝いの電話がかかってきて、私は、「奥さんが生きていらしたら、ものすごく喜んでくれたと思うと残念です」と言ったのだが、Iさんは即座に、「いや、わかってますよ」と言ったのだった。

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