すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

三浦哲郎「ユタとふしぎな仲間たち」

2005-02-01 14:04:17 | 書評
ちっちゃいころは、なんか見えるもんだな


「夜の哀しみ」という本があります。不倫の秘密を握られた母が、それをネタに実子から揺すられ、破滅に陥っていくという素敵に邪悪な本です。

今回は同じ作者の「ユタとふしぎな仲間たち」。父親を失った都会育ちの少年が、田舎での座敷わらしとの交流をへて、たくましく成長していく物語です。
子ども向けに書いたこともあって、素朴な話です。とても同じ作者のものとは、思えません。


間引きってのは、もともと百姓が畑仕事で使う言葉なんだ。畑に作物がぎっしり芽を出す。あんまりぎっしり生えては、みんなに養分が行き渡らなねえ。で、適当な間隔を置いて、よけいなやつは引っこ抜いちまう。これは間引きっていうんだ。ところが、それがいつのころからか、人間の子どもを作物みたいに間引きすることにも使われるようになっちまった。 (三浦哲郎「ユタとふしぎな仲間たち」171頁~172頁 新潮文庫)

引用文は、どうして座敷わらしが成仏できないで妖怪になったかを説明するくだりです。
要するに口減らしのために親に殺されてしまった子どもが、座敷わらしとして現世にとどめられるということです。

そんな境遇ですから、父親をなくしてしまった主人公に同情し、その面倒を座敷わらしが積極的にみるんですな。(だから座敷わらしは、継母にこき使われている小夜子にも、ちょっかいを出すのでしょう)
でも、子どもの自立が親離れとイコールのように、少年の成長は座敷わらしとの別離を招きます。


たまには清涼感を得たいという方には、よろしいのではないでしょうか?(心の汚れた炎に油を注ぎたい方には「夜の哀しみ」をお勧めします)

夜の哀しみ〈上〉

新潮社

このアイテムの詳細を見る
夜の哀しみ〈下〉

新潮社

このアイテムの詳細を見る

最新の画像もっと見る