ベテラン白人アルト奏者のチャーリー・マリアーノは、ここ日本では秋吉敏子の元夫(マンデイ満ちるの実父)でもあり、比較的名の知られた部類のミュージシャン。本作はそんな彼が渡欧中の72年に、フィンランドで現地ミュージシャンと共に吹き込んだ一枚です。マリアーノと言うと60年代のナベサダとの共演盤のイメージが強く、どうも個人的に好きになれず敬遠していたのですが、フィンランド録音と言うことで気になり購入してみたところ、これが思いの外なかなかの佳作盤でした。70年代に入ってからの吹き込みということもあり、フリー~フュージョンの要素もところどころに見え隠れしてはいますが、全体的にはコルトレーン・ライクなモーダル調の作風で、比較的聴き易い一枚に仕上がっています。そのコルトレーンの代表作をカヴァーしたA-2のNaimaは、さながら欧州版スピリチュアル・ジャズとでも言った趣き。とは言え、本家アメリカのそれとは異なり土着的な質感は薄く、音自体は非常に洗練されているので、「黒々としたスピリチュアル・ジャズは苦手」という人でもわりと普通に聴けるのではないでしょうか。A-1のGlenford Crescentは、サブ・マルチネスのパーカスとOlli Ahvenlahti(読めません…)のエレピが揺れる高速ブラジリアン・フュージョン。いわゆる「クラブジャズ」的な質感になっているので、本格的なモダン・ジャズ通には物足りないかもしれませんが、西ロンドンやコンポスト周辺の雰囲気が好きな人にはオススメかと思われます。ちなみに僕が一番気に入っているのはB-3のChileで、こちらはイーロ・コイヴィストイネンとの2管で演奏されるミステリアスかつエキゾチックなテーマが印象的なモーダル・ナンバー。北欧特有の透明感溢れる肌触りとソフトなラテン・ドラミングも抜群ですね。イタリアのジョルジオ・アゾリーニをもう少し洗練させたかのような至福の一曲になっています。なお、オリジナルは非常にレアかと思われますが、数年前にwhatmusicから再発されたLPが結構市場に出回っているので音源自体の入手は比較的容易です。先日行われた某レコ屋の更新で気になった方は、是非この再発盤を探してみてください。オリジナルを探すほどの作品ではないと思いますが、再発で気軽に聴けるならば持っていて損はない一枚だと思います。
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