At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Rituals / Nicola Conte

2008-09-17 | Contemporary Jazz
ここ日本のシーンを中心に数多くのフォロワーを生みながら、結局誰一人として超えることの出来なかったクラブ・ジャズの金字塔的作品である前作から丸4年。ついにと言うかようやくと言うか、やっとリリースされた新譜が本作です。二年くらい前に別名義で先行してリリースされたM-6のMacedoniaの曲調から、個人的には今回も60年代欧州ジャズ路線を踏襲するものと勝手に想像していましたが、実際に出来上がった作品を聴いてみると今回はどうやら少し切り口が違うよう。と言うか、はっきり言ってしまうと今回のテーマは恐らくアフロです。もっとも巷の先行レビューではヴォーカル曲が多いことばかりに焦点が当てられていて、この点に全然触れていないような気がしますが…。発表だけ聞いて最初は驚いたTFCQのティモ・ラッシー起用もこの作風なら納得。まぁ、そうは言っても基本的には彼なりの美学に則った作品であるので、そういう意味では、いわゆる黒人系のモロなアフロ・ジャズとは一線を画していますが、だからと言って国内盤の帯に書かれているような、「いま最もクールでスタイリッシュなジャズのモード」では絶対にないでしょう。(自分で勝手にその一員だと思ってる人を含め)いわゆる内輪の人が、この作品をいかにもクラブ・ジャズのネクスト・スタンダードであるかのように位置づけることは容易に想像できますが、個人的にはそういう風には思えません。ちなみに誤解しないで頂きたいので補足しておくと、僕は別にこの作品が嫌いなわけではありませんし、まして予想と違う仕上がりでがっかりしたとも思ってないです。確かに前作とはテイストが違いますが、これはこれで好きですし、単純に一つの作品としてみた時の完成度は高いのでしょう。ただ、これをスタンダードと解釈して手放しで賛美するような風潮が出てくるとすれば、その姿勢にはやっぱり少し疑問が残ります。大切なのは回りに流されず自分の基準で判断すること。ご興味のある方は是非ご自分の耳で聴いてみてください。ちなみに個人的には前作路線のM-9、Song For The Seasonsが一番好きです。他の方がどう評価するのかは分かりませんが、少なくとも自分の中でのニコラ・コンテのイメージと最も近いのがこれなので…。
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At The Expo / The Metronome Quintet

2008-04-04 | Contemporary Jazz
先日に続き再び登場のMetronome Quintet。この間紹介した盤は彼らのデビュー作でしたが、こちらはその後10年ほど経過した1970年の作品です。Jazz Next Standard誌に紹介されていた例のSwinging Mahagonnyが67年作なので、それよりも少し後の作品と言うことになりますね。さて、この作品でまず気になるのはジャケットに書かれた片仮名。一見すると国内の企画盤のようにも思えますが、裏ジャケのクレジットを見ると、これでもチューリッヒ録音のれっきとしたスイス盤だから驚きです。そして当然ながら当時の日本にこの作品は入ってきていないでしょう。そんな作品のジャケットになぜ片仮名が使われているのか。その秘密はどうやらタイトルにありそう…。はい。そろそろこの謎の種明かしをしてしまうと、実は彼らは70年の大阪万博でひっそりとライブを行っていたらしく、このEPはその後スイスに帰ってから日本文化にインスパイアーされて録音した作品とのことです。従って収録曲もどこか日本風のものばかり。特に象徴的なのはJapan Suite(日本組曲)と名づけられたB-Sideのメドレーで、黒田節~草津湯もみ唄~豊盃節~貝殻節~山形おばこと、我々日本人ですらほとんど知らない民謡を見事にジャズ化しています。個人的にはちょっと色物っぽくて正直好きではないのですが、きっと外国の方はこういうの好きなんでしょうね(笑) 外国人が日本をどういう風に見てるかを知るためには興味深い一曲です。A-1のExpo Bluesは彼らのオリジナル。こちらはオルガンを交えたジャズ・ファンク調の一曲で、ヒップホップの人がサンプリングに好みそうなナンバーになってます。ただ個人的に、本作最大の聴き所は何と言ってもA-2のHadaka No Shima(裸の島)。元々同名の日本映画のタイトル曲(未聴です)のようなのですが、これが地味ながらも非常に夜感漂うモーダルな仕上がりとなっていて相当良い雰囲気です。日本的な雰囲気とジャズが高次元で融合した名演。ウリ・スターブによる転がるヴァイブと、むせび泣くブルーノ・スポエリのサックスの音色が気持ちいいです。少し前に流行った和ジャズに対するヨーロッパからの回答と言うか、そんな雰囲気が味わえる不思議な一枚。あまり見かけない作品ですが、聴いてみる価値はあると思います。
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Jazz Progression / Oscar Rocchi Quintet

2008-02-17 | Contemporary Jazz
先日リイシューもされたバリゴッツィのDire盤などに参加していたイタリアのピアニストが、自身のクインテットを率いて吹き込んだ珍しい一枚。記憶が定かではありませんが、確か本来はライブラリーとして製作された盤だったと思います。Flamという耳馴染みのないレーベルからのリリースということもあって、中古市場にもあまり出てこない作品だったのですが、そんな本作が今回めでたくリイシュー。同時に発売されたムッソリーニ(前回紹介済み)のインパクトが強く、若干その影が薄れている印象もありますが、こちらも相当なレア盤だったので今回の再発は嬉しい限りです。大枚叩いてオリジナルを買うほどの作品ではないと思いますが、例によって数千円で聴けるのであれば買っておいて損のない一枚。録音が82年とかなり新しいこともあり、同じイタリアン・ジャズでも60年代のそれとは若干趣が異なり、どちらかと言うとPenta Flowersの諸作に近い肌触りに仕上がっています。以前Deja Vuからリリースされたコンピや、Idea 6辺りの音の質感が好きな人ならばおそらくハマるでしょう。特に冒頭A-1のPrepositionなどは、そのままModalamodeに収録されてもおかしくないような雰囲気。細かいことは良く分かりませんが、おそらく管の音色の円やかさが最大のポイントなのだと思います。これが純ハードバップ~モードと言うより、やや落ち着いたコンテンポラリーな質感を生み出している原因なのでしょう。ただ、個人的な注目はやはり夜ジャズのテープに収録されていたB-3のWafers。なぜかこれだけ他の曲とは明らかに趣の異なる洗練されたナンバーで、哀愁溢れるフルートが気持ち良い都会のジャズ・ダンサーになっています。マルコ・ディ・マルコとネイザン・ヘインズのUp Westを、もう少し繊細な感じにシフトさせた感じと言ったところでしょうか。本格派のモダン・ジャズ・ファンには向かないかもしれませんが、雰囲気で音楽を楽しむ人間には打ってつけの一曲。僕と同じようにフルートの音色が好きな方は、この曲だけでも是非一度聴いてみてください。
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The Latin Taste / Il Trio Di Romano Mussolini

2008-02-15 | Contemporary Jazz
例のムッソリーニ宰相の息子さん、ロマーノが自身のプライベート・レーベルに残した非常にHard To Findな一枚。そんな知る人ぞ知る秘蔵盤が「ついに」と言うか「ようやく」と言うか、突然ここに来て500枚限定でアナログ再発されてしまいました。今回のタイミングでの再発は賛否両論あるのでしょうが、どちらかと言うと中身よりも希少性が原因で中古市場でも高騰していたアルバムなので、個人的にこの再発仕事は大いに大歓迎。そもそも純ジャズと言うよりライブラリー的な内容の一枚ですし、正直なところ6桁出しても手に入れたいと言う程の作品ではなかったものの、数千円で手に入るなら別に買っておいて損はないかと思います。A-4のVersiliana SambaがSunaga t Experienceによるカバー曲の元ネタとして話題ですが、この盤の個人的本命はA-1のMedidation。どこまでも晴れ渡る澄み切った空をバックに聴きたい、軽やかなイタリアン・チネ・ボッサの名演です。元々はジョビンの作品ですが、ここではそれをヨーロピアン・サントラ~ライブラリーっぽさ満点にカヴァー。例えるならば、あのトロバヨーリのジェラシーをサニー・サイドにシフトした感じとでも言ったところでしょうか。おそらくサバービアな雰囲気が好きな人ならば絶対好きです。またA面のラテンな雰囲気から一転して、B面はグッと大人っぽいスウィング・ジャズでこちらもなかなか。プレスの関係か若干音が割れてしまっているのが気になるところではありますが、エリントンをカヴァーしたB-3のDrop Me Of Harlemなどアーバン・ライクで良い雰囲気です。温かいサックスの音色が気持ちいB-4のConfirmationも悪くないですね。いわゆる本格派ジャズしか受け付けないようなタイプの人には内容的にオススメ出来ませんが、ライブラリーやサントラに代表されるヨーロッパのレア・グルーヴが好きな人はチェックしてみても良いかもしれません。結構な数が日本に入ってきているようですが、一度売切れてしまうと多分次に見つけるのは難しくなってしまうと思うので、気になった方は素直に新譜のうちに手に入れましょう。
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Serenata / LTC

2008-02-10 | Contemporary Jazz
かなり久しぶりの紹介となるNu Jazz系12インチ。北欧Ricky-Tickからリリースされた彼らの2枚目のシングルです。昨年末に日本先行でリリースされたアルバムは、試聴こそしてみたものの何となく惹かれず購入に至りませんでしたが、こちらはシングルは気になったので2週間ほど悩んで結局買うことにしました。アルバムからの収録曲はB-1のJust Give Me Timeのみで、他の2曲はこのシングルのみで聴けるナンバー。ただし、タイトル曲とこのJust~はいずれもクラーク=ボラン楽団のレパートリーなので、実質的には彼らへのトリビュート作と捕らえた方が自然なのかもしれません。A-1のタイトル曲は例によって高速調のボサ・ジャズ。このままでもNu Jazz的な硬いリズム展開が悪くない佳曲なのですが、個人的には回転数を33に合わせて遅回しでかける方がずっと好みです。ヴォーカルが入らないこともあって、遅回しで聴いてもそれほど違和感は感じられないし、こちらの回転数でかけるDJさんも出てくるかもしれませんね。オリジナルはわりと上げ気味のテンポですが、こうするとグッと落ち着いた雰囲気で、黄昏時のカフェ仕様に早変わりします。ジャケットのイメージに近いのもこちらなのではと思ったり思わなかったり…。ただ、それよりも注目なのはB-2のVisions Of Blue。リズム的にはほとんど人力ハウスと言った感じですが、ニコラのプロデュース下でプレイしている時とは対照的に、こちらはディープ・ハウスにも通じる都会的で煌びやかな音色が眩しい好ナンバーに仕上がっています。何となく井上馨さんによるChari ChariのAurora辺りを思わせる壮大な展開が素晴らしいですね。Schemaの雰囲気とは全く違いますが、これはこれでEspecialや西ロンドン系が好きな人に受けそう。しかし、彼らの楽曲はいつ聴いてもSchemaレーベルに感じるイタリアらしさが(良い意味で)希薄ですね。もはや完全に純正の北欧ジャズと言ってしまっても良いくらいRicky-Tickのレーベル・カラーに同化している気がします。こういうクラブ系12インチも、一度完売してしまうと次の入荷を待つのが面倒になりがちなので、興味のある方はお早めにどうぞ。
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Basrelief / Ib Lund Nielsen

2008-02-03 | Contemporary Jazz
デンマークのベーシスト、Ib Lund Nielsenがコンポーズした79年録音の作品集。ボッチンスキー、ニルス・ハスム、ヤーディグ、ロストヴォルドと60年代デンマークを代表するジャズメンが、例のJazz Quintet 60解散後、再度一同に介したというダニッシュ・ジャズ史上ある意味貴重な一枚です。ただ、もともと非常にレアな作品な上、昨今のボッチンスキー人気とも相まって中古市場での価格も鰻上りなようなので、オリジナルで聴くのは普通の人には少し厳しいかもしれません。かく言う僕も原盤ゲットは早々に諦めて、以前デンマークで出回った復刻CD-Rで聴くことにしました。さて、内容に関しての感想。正直あまりデンマークらしさは感じられないなと言うのが本音です。メンバーがメンバーなだけに、誰もがJazz Quintet 60サウンドを期待してしまうと思うのですが、正直あの奇跡のような雰囲気はここにはありません。あれから20年近く経過しているため、普通に考えて当然と言えば当然の話なのですが、「もしかしたら…」と淡い期待をしてしまっただけに、やはり若干残念な感は拭えませんね。最もそう言った固定観念を抜きにして考えれば、世界中にフュージョン旋風の吹き荒れていたこの時代としてはなかなかの佳作と言った趣。特に冒頭を飾るM-1のタイトル曲はダスコ・ゴイコヴィッチを思わせるエキゾな高速アフロ・キューバンなので、その手のジャズを好むクラブ畑の方はハマるかもしれません。リズム隊の質感こそプレ80年代的な雰囲気ですが、ヤーディグの奏でるフルートが個人的には好み。Debut盤を聴いたときも思いましたが、やはりこの人はサックスよりフルートの方が向いている気がします。ニルス・ハスムのソプラノ、ボッチンスキーのフリューゲルもなかなか。いずれにしろ6桁出して買うほどのレコードではないのでしょうが、ご興味のある方はこのCD-Rで聴いてみてください。ちなみに盤起こしではないようなので、わりと綺麗な音質ですよ。日本で取り扱っているところがあるかは知りませんが、本国からわりと簡単に個人輸入が可能です。まぁ好事家向けではありますが…。
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Routine Jazz Quintet / Same

2008-01-26 | Contemporary Jazz
もう1枚続けて話題の新譜から。DJの小林径氏率いるRoutine Jazz Quintetのデビュー作品です。帯には「海外のクラブ・ジャズに対する東京からの回答」と言う文句が書かれていますが、正にその通りと言った雰囲気で、特に先日紹介したQuintetto Lo Greco辺りに最も肌触りの近い一枚。クラブを分かっている人が、敢えて正当派のジャズをやっている感じが良く似ています。カバーする楽曲のセンスやリズム・アレンジ等々クラビーな要素も節々に散見されるものの、基本的には極めてオーセンティックでモダンなジャズ作品。最もライナーで書かれているような「熱さ」は、僕には感じられませんでした。と言うよりも、どちらかと言うとヨーロッパのジャズに近い質感なので、むしろ意図的に「熱さ」を排除しているように思えます。まぁこの辺りは個人の感じ方の問題なので、別に誰が正しいと言うことではないのでしょうが…。さて、収録されている曲個々の話。結論から言うと、やはり昨年末のコンピに収録されたM-3のBook's BossaとM-4のDown In The Villageの2曲が頭一つ飛び越えて好きです。前者はヨーロッパ的感覚で演奏されるモーダルなボサノバで、ニコラ・コンテ辺りのファンが好みそうな繊細で綺麗なナンバー。曲全体を包む儚げな雰囲気が好みですね。また、後者はクラブ・ジャズ好きにはお馴染みの一曲ですが、ミヒャエル・ナウラのスタジオ録音版をベースにしながら今風に解釈し直したようなアレンジで興味深い内容になっています。どこかナミスロウスキ辺りを思わせる線の細いサックス(ソプラノなのかな?)の音色が素敵ですね。ラテン・パーカス効かせまくりのクォシモードによるカヴァーも話題になりましたが、こちらの方がより正当派と言った雰囲気で僕は好きです。最もこの2曲以外も全体に雰囲気は良く、M-1のToots SweetやM-5のMishima(ブレイキー・カヴァー)辺りもなかなかに楽しめるナンバー。クラブ・ジャズ好きはもちろんですが、普段あまりこの辺りを聞かない人にも是非いちど耳を傾けて頂きたい一枚です。オススメ。
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Modal Jazz loves Disney / Various Artists

2008-01-23 | Contemporary Jazz
須永氏監修のディズニー作品カヴァー集。日本人は世界的に見てもディズニー好きの人種なようで、年に一枚以上のペースでこの手のカヴァー作品がリリースされますが、今作はそんな中でクラブ・ジャズに焦点を当てた一枚となっている模様です。参加メンバーは例によって生音派のクラブジャズ系アーティストとその周辺。普段からこの辺りの音を聴いている人ならば、恐らく一度は名前を耳にした人たちばかりで、素材自体の馴染み深さも含め非常に聴き易い一枚になっています。M-1のWinnie The Poohは久々にその名を聞くThe Five Corners Quintetがプレイ。ヒットした10インチ諸作に比べればパンチ力が劣るのは否めないものの、このネタをここまでバップ・アレンジで披露しているところは評価に値するのではないでしょうか。続くM-2のA Whole New Worldは国産クラブ・ジャズ・バンドのnativeによるもの。柔らかいアフロ・キューバン・タッチで上品に纏めた一曲になっていて、こちらもなかなかの出来です。良い意味で主張し過ぎないアレンジなので、夜のカフェのBGM辺りにぴったりなのではないでしょうか。また、リズムのアレンジはやや違いますが、LTC演じるM-7のBaby Mineもソフトなボサ・ジャズ仕様でカフェ向き。澤野工房辺りの作風にも通じるサニー・サイドの好トリオ・ナンバーになっています。そして何と言っても圧巻なのはM-8のWhen You Wish Upon A Star。ディズニー楽曲の中でも定番中の定番であるこの曲を、とびきり洒落たワルツ・ジャズ・ヴォーカルに仕立て挙げたニコラ・コンテの手腕はやはり只者ではありません。おそらくアルバム中ベスト・トラックなのではないでしょうか。こちらもリズム隊自体は完全にLTCそのものなのですが、例え同じメンバーでもプロデューサーが変わるとここまで雰囲気が変わるのかと舌を巻かされます。おそらく今後アナログでも出るのでしょうが、個人的にはこのLTCとニコラの2曲で7インチを切って貰いたいものですね。それはともかく、他の楽曲もなかなかに良いアレンジになっているので、是非一度聴いてみてください。この手の生音系クラブ・ジャズ的なものへの取っ掛かりとしても最適だと思います。
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The Right Spirit / Quintetto Lo Greco

2007-12-16 | Contemporary Jazz
一昔前のリリース・ラッシュがまるで嘘のように、このところすっかり身を潜めている伊Schemaレーベルから届けられた新作。ロ・グレコ兄弟の双頭リーダー・コンボによるSchemaリリース3作目です。前回のSnap Countとはややメンバーが変更されているものの、編成自体は同じくフロント2管のクインテット。相変わらず正当派なネオ・バップ的作風で、全体的に好感の持てる一枚ですね。曲ごとの解説に入っていくと、まず最初に耳を惹くのがM-4のUpdated Sound。スマートかつクラビーな高速アフロ・キューバン・チューンで、ジャズDJの方々にも好まれると思われる素敵な一曲です。若干長尺気味ではありますが、彼らの楽曲の中でも一際クラブ映えしそうなナンバーなので、おそらくこれから先しばらくはクラブやカフェで引っ張りだこになることでしょう。ニコラ・コンテの2nd以降、急速に生音ジャズ路線にシフトして人気を博したSchemaですが、もしかしたらこの曲がOther Directionsの雰囲気に一番近いかもしれません。高速でありながらも演奏自体は丁寧で、アグレッシヴになり過ぎてない辺りがポイントなのでしょうね。また曲調がガラリと変わりますがM-7のFlowing Linesもなかなか。少しスピリチュアルな感も漂うモーダルな変拍子ジャズで、先の曲とタイプは違えどこちらもヨーロピアン・ニュー・ジャズ直系の好ナンバーです。美しいテーマ部はもちろんですが、一曲を通して若干リズムがボサ打ち風なところが非常に僕好み。なお、個人的にはこの2曲がベストかと思いますが、他にもM-4と同じく高速アフロ・キューバンなM-8のIdolsや、ワルツ・タイムから4ビートへの転調も鮮やかなM-6のOver Powerなど、アルバム全体的にわりと良い雰囲気です。少なくとも僕は同時期にリリースされたLTCの新作よりこちらに惹かれました。ただ、同じイタリアの若手ミュージシャン同士、比較しながら聴いてみるのも、それはそれでまた面白いかもしれません。二枚を聴き比べてみると、おそらくリリース元であるRicky-TickとSchemaの似て非なる各レーベル・カラーも見え隠れしてくるはず。そう言った意味でも興味深い一枚ではあります。もちろん難しいことは知らないというライト・ファンの皆様にもオススメ。おそらく今度もCDのみですが、アナログ派の方も是非聴いてみてください。
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Lucien Joly Quintet / Same

2007-11-07 | Contemporary Jazz
かなり久しぶりに購入した80'sのローカル・ジャズから紹介。仏領海外県マルティニークにて86年に製作された一枚が本作です。Solo Gammes Productionsなる当地のインディー・レーベルからリリースされていますが、おそらく限りなく自主に近い作品なため流通量はそれほど多くはないことでしょう。全体的にはややフュージョンがかったラテン・ジャズと言った作風で、Conexion LauraらによるCalorcito(ECDのクボタタケシRemixネタ)を、メンバーが減った分もう少しシャープにした雰囲気。録音された年代や場所から考えても、わりとありがちな想定内の一枚だと思います。ただ、だからと言って駄盤と言うわけでは決してなく、収録曲はどれもそれなりのレベルを誇っているので誤解のないように。中でも一際フュージョン度の高いA-3のCaraïb. Bandは、陽気でトロピカルな南国サウンドとひんやりした都会的な空気感が違和感なく同居した名演。フリー・ソウル以降のレア・グルーヴ好きなら、きっと気に入るはずだと思います。またB-1のGuantanamoは、黄昏時に良く似合う哀愁のラテン・ジャズ。まるで一日の終わりを告げるかのような、爽快感溢れるフルートの音色に心洗われる珠玉の一曲となっています。こういう曲を聴いていると、自然とキツめのショート・カクテルなど飲みたくなりますね。一転してユーロ・ジャズ風のモダンな演奏を聴かせるB-2のTerre Sainvilleもなかなか。きらきらとしたピアノの音色がグッドです。ただ、そうした演奏も去ることながら、本作の白眉はやはりA-2のCarete B。「ロシュフォールの恋人たち」のChanson Des Jumelles(双子姉妹の歌)を下敷きにしたとびきりお洒落なラテン・ジャズです。以前、須永氏がテープに収録していた曲と言えば分かる人もいるはず。「双子姉妹」のジャズ風カバーは数多くありますが、個人的にはそれらの中で最も好きな曲がこれ。それほど大ネタとして主張し過ぎることもなく、60年代ユーロ・ジャズ~ジャズ・サンバの流れの中にさらっと組み込めるところが最大のポイントでしょう。ずっとオリジナルのLPで欲しくて、アーティスト名だけを頼りに探し、3年かかってようやく手に入れることが出来ました。そんなこともあって、個人的には非常に思い入れのある一枚です。
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