花冠俳句叢書

花冠発行所 主宰高橋正子

第Ⅰ期第20巻「花影」小川和子句集

2008-10-09 10:25:36 | Weblog


 和子俳句には、どこか洒落たところがあって明るい。派手なところがある句柄ではないのもいい。北海道の風土の中で育ち、大学の英文科で得たヨーロッパの教養がいい結果を生んだ。美しい句だ。
   
  白梅の満ちて高きへ香をはなつ
  風に鳴るなずな花咲く地の起伏
  さよならの子らに満月みずいろに
   北海道立余市高校時代
  朝ぼらけの青き雪踏み通学す

 和子さんは、家庭の主婦であって、その生活から優しくて美しい句が生まれる。

  青紫蘇を水に放ちてより刻む
  硝子戸を青一色にクローバー

 主婦としての生活は、

  障子貼る今日はそのこと念入りに

の句に、そのすべてを語ってくれる。日常に油断がなく、気負いもない。
 子どもの世界を詠んだ句には、

  花影に歓声あがる滑り台
  縄跳びの子らに校庭長四角
  信号を待つ間も春光子らにふる
  自転車を置いて子ら寄る蝌蚪の池

があって、明るくてレベルが高い。長女真理さんの成人式では

  晴れ着の子に冬天限りなく青き

と、未来があって明るい句を詠む。
 学生時代からの信仰生活を詠んだ句では、

  真っ白き一樹と出会うイースター

があって、和子俳句の代表句としたい。新鮮な驚きがある句で、下五の復活を意味するイースターが詩の言葉として生きいきとしている。どこか洒落たところがあって、読み手を惹きつける句である。
 句集「花影」を世に送り出すことを嬉しく思い、多くの読者との出会いによって、また新しい命を吹き込まれるであろう。
 
  平成二十年秋
                   高 橋 信 之



▼その他は、下記アドレスをクリックし、ご覧ください。
http://www.suien.org/0005/kusyu/hanakage.htm

▼読後感想などは、下記の<コメント>にお書きください。