兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会 (辰巳の会)

石川県が犀川(金沢市)上流に計画している、不要・有害な辰巳ダム計画に反対するブログ。

浅野川の氾濫  放水路は正常に機能したか?

2008年08月13日 | 治水

この記事のポイント
「毎秒141立方メートル分水した」というのは、水位からはじき出した机上の数字にすぎない。
流木などで正常に分水できなかったことが氾濫の一因となった疑いがつよい。
※根拠写真あり。



犀川の河川整備を考える会は、浅野川の氾濫に関して8月8日、石川県河川課に意見書を提出しました。

そのなかで、浅野川放水路は犀川へ毎秒141立方メートル分水したと県は言っているが、実際にはもっと少なかったのではないかと問題提起しています。(毎秒100立方メートル程度だったとすると、下流部で観測された流量と辻褄が合うとのことです。)
放水路が正常に機能しなかったことが、下流での氾濫の一因と考えられるということです。 

県は、「放水路の入り口は完全に水面下にあった。流木などにより水量が少なくなったことはあり得ない」(読売新聞9日付)などとしています。

県が「毎秒141立方メートル分流した」といっているのは、放水路が設計通りに機能を発揮したということを前提に、測定された水位から計算した、いわば“机上の数値”です。

問題は、設計通りに機能したかどうか、です。

では、今回の洪水以前の放水路の様子をみてみましょう。


こんな有り様です。
正常に分水できるためには、浅野川の本流側(写真の手前側)と放水路側の堰の前が同じ条件でなければいけませんが、放水路側の堰には大量の土砂が堆積しています。
堆積した土砂のために、河道の実際の断面積は、設計より相当小さくなっています。
たまたまこの写真では見あたりませんが、ちょっとした増水があるたびに、水色の流木スクリーンに多くの流木が引っかかって、ダムのような状態になっています。今回の洪水の直前もスクリーンにぎっしり流木が引っかかっていたという目撃情報もあります。
ご丁寧に、放水路入り口の直前に最近、道路の巨大な橋脚をつくってわざわざ流速を遅くしてしまいました。治水施設の入り口前にこんなものをつくるとは、まったく非常識です。


流量は、断面積×流速で求まります。
(たとえば、流れの断面積が100平方メートルで流速が3メートル/秒なら、100m2×3m/秒で、流量は300m3/秒、です。)

これだけ土砂がたまっていれば、断面積は、机上の計画よりずっと小さくなっています。
堆積した土砂に加えて草が生え、スクリーンに流木がたまり、橋脚があれば、当然、流速も遅くなります。

流量=断面積×流速。
断面積が小さくなり、流速が遅くなれば、当然のことながら流量は小さくなります。

それに、流木スクリーンに流木がたまってダムのような状態になっていれば、浅野川本流側と放水路側で水位がちがうことにさえなります。


これは、氾濫のあった28日の9時前の写真。下流側から上流方向を撮ったもので、流木スクリーンの左が浅野川の本流側、右が放水路側です。
スクリーンに大量の流木が引っかかり、障害物になっています。
あきらかに放水路側のほうが水位が低く、流れも遅くなっているのが見て取れます。

「つながっているのに水位がちがうということがあるのか」と思いがちですが、「つながっている水の水位は同じ」というのは水が静止しているときのこと。

本流側=障害物がなくて、流速がはやく、堰に対して垂直に流れる
分流側=障害物があり、流速がおそく、堰に対して斜めに流れる
というようなときには、本流側の水位が高く、分流側の水位が低いということになります。
流れが遅ければ水位差は問題にならない程度のものですが、洪水時には無視し得ない水位差が生じます。


この写真は今回の洪水のあとに撮ったものですが、放水路側に堆積した土砂の右端だけが流されているのが見えます。(洪水前の写真とくらべてください。)
これは、流木スクリーンにからまった流木が「ダム」のようになって水の流れを阻害し、この右端のところだけ勢いよく水が流れたことをしめしています。
放水路が正常に機能しなかったことの痕跡です。
同じ流速で堰にたいして垂直に水が流れていれば、このようなことにはなりません。

“入り口が完全に水面下にあったから流量が少なくなったことはあり得ない”などという発言は、無知にもとづくものか、知っていながらウソをついているかのいずれかです。
(浅野川氾濫以降に顕在化した石川県庁の発言の習慣をみると、意図的なウソのように思われます。河川課職員が水について無知でも困りますが。)

洪水後の写真でも、放水路側にはあいかわらず土砂がたまっています。堰の天端より高く堆積しています。
(1)今回の洪水時も断面積が設計より小さかったこと、(2)放水路側の流れが土砂を押し流すほどのものでなかったことをしめしています。

河川課のみなさんは現地をみていないのでしょうか? みたうえでなお、「計画通り、毎秒141立方メートル分流した」と言っているのでしょうか?

河川課のみなさんはエアコンのきいた県庁の机上で計算していればよいのでしょうが、水は机上の計算通りに流れるわけでなく、被害に遭われたみなさんは炎天下で泥の始末をし、生活と営業の立て直しに汗まみれになっておられます。

河川課のみなさんもこのブログを読んでいるでしょう。
人として胸の痛みを感じてほしいと、切に願います。


 (※浅野川放水路が計画通り正常に機能しなかったことは確実ですが、犀川の河川整備を考える会がいわれるように毎秒100立方メートル程度しか分水できなかったかどうか、「100」という数値には検討の余地があるように思われます。)

(H)



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2 コメント

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Unknown ()
2008-08-13 12:51:13
現場を見ると一目瞭然ですね。
堆積土砂を真面目に除去していたのならまだしも、やってなかったという事ですね。さらには堆積土砂量も『計算』してるハズでしょうに。

県は、理解したとしても「ごめんなさい」が言えない為に苦しい言い訳(=ウソ)を言い続けるしかないですね。

ちなみに、県職員で計算できるヒトはいないでしょう。
コンサルに「こんな答えが出るように計算しなさい」って言うだけですから。
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Unknown (おかしいやろ)
2008-08-13 20:37:38
管理者様

いつも詳しい情報ありがとうございます。
現地へ足を運んで検証する姿勢に頭が下がります。HABの映像から放水路の管理が杜撰そうなのは見て取れました。「これはだめだな」と思いました。納得しました。
ここまで調べたら石川県は何も言えないのではないでしょうか。エアコンの効いた部屋で机上の計算ばかりしている職員に負けるはずがない。
被災して大変な目に会っている方がたくさんいらっしゃいます。県職員は考えてみましょう。

人の痛みでひとこと言わせてもらいます。河川課や辰巳ダム建設事務所の人でボランティアに行った人っていますか?特に洪水から1週間以内に行った人はいるのかな?いないだろうな。そんな気持ちを持っている人はいないだろう。
情報公開で聞けないかな。いじわるですが職員の資質を見てみたいです。


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