穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ハイスミス「見知らぬ乗客」

2012-11-11 07:24:29 | ミステリー書評
角川文庫で表題作を読んだ。彼女の作品はこの間買った『11の物語』とこれをとりあえず読んだ。短編集の方は二、三読んだだけなので後で書きたい。なにしろよく知らない作家なので自分の備忘を兼ねて彼女についてメモをまとめた。

見知らぬ乗客は彼女の出版された最初の長編と言う(1950年)。29歳の時の作品。テーマは(アイデアはというべきかミステリーあるいはサスペンスなら)交換殺人。以下多くは本書の解説からの抜き書きである。文庫本の解説は下らない幼稚な文章が多いが、この解説は(新保博久氏)は簡潔で内容がある。

交換殺人というアイデアがこの本の前にあったかどうか分からないという。専門家の解説者が分からないというから下拙にも勿論分からない。しかし、交換殺人を有名にしたのはこの作品である。

すぐにヒッチコックが作品を購入して翌年映画化している。彼の初期の作品としては有名である。脚本は当時映画界でアルバイトをしていたレイモンド・チャンドラーが書いたが、ヒッチコックと意見が合わずチェツイ・オルモンドが完成させた。チャンドラーは「かわいい女」を書いた後、「長いお別れ」を出版する前の時機にあたる。

これが原因らしいがチャンドラーのヒッチコック嫌いは有名、「あの豚野郎」といっていた。また原作について「馬鹿馬鹿しいストーリー」と評していた。

次回書評を書くが彼女の作品を少し読んで男みたいな女性じゃないかと感じたのだが、インターネットで彼女の写真を見て納得。これぞ女丈夫という風貌であった(失礼)。


これも新保氏の解説だが、彼女は「アガサ・クリステイもコナン・ドイルも読んだことは無い。自分ではミステリーもサスペンス小説を書いているつもりはない」と言っているそうだ。その意気や壮というべきである。首肯できる。

wikipediaだったかの評ではドストエフスキーやポーを愛読していたとあったが、見知らぬ乗客はその構成は明らかに罪と罰を踏襲している。すなわち犯行計画が第一部、そして犯行と検察(探偵)との対決が続く。類似は構成だけであるが、以下次号。



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