イエーナで精神現象学を執筆していた頃、ヘーゲルには内縁関係の女性があった。彼の下宿のおかみである。彼女は妊娠していて精神現象学の出版直後ルードウィッヒという男の子を出産している。
この頃のことが【精神現象学の】のある章に反映しているというのが「ヘーゲル伝」の著者ジャック・ドントである。この章は色々に訳されている。長谷川宏訳では「快楽と必然性」、樫山金四郎訳では「快と必然性」である。
そう言われてみると、そうかなと思う節もないことはない。相当な知的努力が必要では有るが。そう言う観点からフォローするには樫山訳のほうが脈絡をつけやすそうだ。
この考えはドストエフスキーの「地下室の手記」の独白につながる内容がある。
## ルードウィッヒ後日譚
ヘーゲルは後に別の女性と正式に結婚しているが、子供は認知している。生母が死亡すると子供を引き取った。この子供はゲーテの家に連れて行かれたりして、幸せな幼年時代だったようだ。ゲーテは彼のために詩を書いている。
しかし、妻に子供が生まれると意地悪をされたのか、ルードウィッヒの人生は狂ってくる。最終的にはヘーゲル姓から生母の姓に戻される。人世の進路も本人の希望は認められず商人になるように命じられる。それにも反発し、ヘーゲルは彼のためにオランダ領バタヴィア(現在のインドネシア)駐留のオランダ軍の士官の職を買ってやる。かれはヘーゲルが死んだ年に24歳でバタヴィアにおいて病死した。