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そよかぜノート

読書と詩の記録

流星ワゴン

2007年08月03日 | book 文庫
重松清
講談社文庫 695円
2005年2月初版  2002年作品

 『流星ワゴン』 2007.8.1

「僕らは、友だちになれるだろうか」
「38歳、秋。
  ある日、ぼくと同い歳の父親に出逢った--。」


永田一雄38才、喧嘩を長い間会っていなかった父が肺ガンで死んでいこうとしている。一雄の妻、美代子はテレクラにはまり家に戻ってこない。息子の中学2年生の広樹は、受験に失敗し不登校で家庭内暴力で荒れている。一雄自身もリストラにあい、再就職できずにいる。もうどなったっていい、死んでもいいと思っていた。父の見舞いの帰り、駅前のロータリーで、いつの間にかオデッセイの車の中に入り込んでいた。その車を運転していたのは橋本さん助手席にいたのは8才の健太君。5年前に、買ったばかりの車で事故死した親子だった。一雄は、かこの大切な時間にもどる。現実は変えられない、やりなおしの時間。そこで、今の一雄と同じくらいの歳の父に会う。自分が思っていた父とは違い、父は自分のことを「ちゅうさん」と呼ばせ、朋輩だと言った。一雄の乗ったオデッセイ、流星ワゴンは、一雄にとって苦しくつらい過去に向かって走る。

 どうしてこうも「身につまされ」る内容ばかりなんだろう。解説にもそうあった。それは私ばかりでがなく、私のような年代には多いことなんだと、半分安心をし、半分一雄のように立ち向かっていけない自分の弱さを感じて、眠れない日々が続いた。父、妻、子ども、どれをとっても悩める一雄自身だった。ただ、私は戻りたくない。私の前には流星ワゴンは来なくてもいい。立ち向かう力はない。テレクラで不貞を繰り返す美代子を許せない。死んでいく父に会わす顔がない。公園でペットボトルに石をぶつける広樹にかける言葉がない。やり直しが、もっとひどい後悔と悲嘆を産む。たとえ死んでも気持ちが晴れるわけでないことはわかっているが、だからといって立ち向かえない。「流星号」に乗って「スーパージェッター」に来てもらいたいものだ。
橋本さん、あなたは不器用ではないよ。こんなに一生懸命ではないですか。不器用っていうのは、やる前に自信がなくてやめてしまうんだ。死んでしまったことは悲しいことだけど、こうして息子の健太と旅ができる今が一番幸せに見える。


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