名古屋、相続税専門税理士の学習ノート

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相続税対策 5 資産の組み替え

2017-07-31 09:49:34 | 日記
 資産の組み替えとして、現金預貯金を生命保険金に変形させる方法もあります。  被相続人の死亡により相続人の受け取った保険金のうち、被相続人が保険料を負担していた部分に対応する金額については、「500万円 ✖ 法定相続人の数」の金額が非課税部分として控除されます。  この非課税枠を使って現金預貯金の課税価格を圧縮するわけです。  例えば、被相続人を契約者、保険料負担者、被保険者として、保険料1000万円の一時払い終身保険に加入します。  被相続人が死亡すると死亡保険金が支払われますが、みなし相続財産として「500万円 ✖ 法定相続人の数」の控除が使えますから、支払われた死亡保険金から法定相続人の数に応じた控除額を差し引いた残額が相続税の課税対象になります。  この例の場合、法定相続人が2人ですと、控除額が1000万円となりますから、支払われた死亡保険金1000万円は課税されないことになります。  現金を生命保険金に変形させるだけで、この控除額が適用でき相続税の課税価格が圧縮できるわけですから、簡単な節税です。  まだ、この生命保険金の非課税枠を使っていなければ、今すぐにでも保険に加入するべきです。

生命保険金は民法上の相続財産ではありませんから、遺産分割協議の対象外ですし特別受益にも該当しません。 「みなし相続財産」として、控除額を超える金額が課税されるというわけです。  この生命保険を跡取りの長男に受けさせることによって、代償分割の原資として分割協議をスムーズに行わせることもできます。  例えば、相続財産は自宅の土地建物(評価額2500万円)と預金1000万円、相続人は跡取りの長男A,次男B,三男Cです。 法定相続分は「3500万円 ✖ 1/3 = 1167万円です。  Aが自宅2500万円を相続すると、預金1000万円をB,Cが取得することになり分割協議に支障が出ます。  事前に被相続人が、受取人をAとして死亡保険金1500万円の生命保険に加入していれば 1500万円はA固有の財産ですからそれを代償金の原資として、B,Cに法定相続分に見合う財産を取得させることができます。  あくまでも代償金とする生命保険金の受取人は跡取りのAとします。 代償金を受け取る立場のB,Cを受取人にしてしまうと、生命保険は受取人固有の財産ですから「これはこれ、あれはあれ」として、代償金を要求される可能性を残してしまいます。

この非課税枠を使い切ってしまった場合は、被相続人が、契約者、保険料負担者となって、相続人を被保険者及び受取人とする当初の解約返戻金割合の極端に低い「低解約返戻金型定期保険」に加入する方法があります。  被保険者は相続人となっていますから被相続人に相続が発生しても死亡保険金は支払われません。  相続財産となるのは相続発生時にこの保険を解約したとした場合の解約返戻金です。  ある保険会社の商品では、解約返戻金が「ゼロ」の期間を契約時に選択できる商品もあります。  この解約返戻金が「ゼロ」の期間に相続が発生すれば、相続財産としてのこの保険の評価はゼロになります。 保険契約をゼロ評価で相続できるわけですから、節税にはもってこいの保険です。  

相続税対策 4 資産の組み替え

2017-07-27 10:08:31 | 日記
 相続税対策として有効なものに財産の組み替えがあります。  現状の財産を見直して、相続税の課税価格の圧縮を図るためや、納税資金のために、財産を買換えることです。  現金1000万円の相続税評価額は1000万円ですが、この現金で時価1000万円の土地を買えば、相続税の課税価格は800万円となり、2割の課税価格が圧縮できます。  これは路線価の基準が、時価ベースである公示価格の80%で作成されているためです。  現金や預貯金をそれ以外の財産に買い替えることが、節税の基本です。 普通は土地、建物に買い替えるのが一般的で、建物も相続税評価の対象となるのは建築価格ではなく、それより30~40%低い固定資産税評価額ですから、土地同様に節税効果はあります。

 資産組み替えの代表例は、現預金でアパートを建設する方法です。  例えば、5000万円の現金でアパートを建設する場合を考えます。  相続税の対象となる固定資産税評価額は、おおむね建設費の6割位ですから、完成したアパートの固定資産税評価額は、3000万円となります。  自用家屋ならこの金額が相続税の対象になりますが、アパートの場合は借家権3割が控除できますから、結果的に相続税評価額は、 5000 ✖ 0.6 ✖ (1 - 0.3) = 2100万円 となり、2900万円の圧縮効果があります。 またアパートの底地も自用地評価から貸家建付地の評価となり、場所によって違いますが、10%~20%の減額となります。  不動産業者や銀行は、「借金をしてアパートを建てれば相続税の節税ができます」と宣伝しますが、「借金」するから節税になるのではなく、アパートを建てるから節税になるのです。  先ほどの例で、現金5000万円は使わずに、銀行で5000万円の借り入れをしてアパートを建てても圧縮効果は同じになります。  つまり、アパートが完成するとプラスの財産は、現金5000万円とアパート2100万円の7100万円です。  ここから借金5000万円を控除した2100万円が、課税財産となり借金の有無によらず課税価格は同じとなります。 「借金してアパートを建てれば節税できます」は、ローン貸付をして儲けたい銀行の曖昧な営業トークですから注意が必要です。

 相続後のことを考えて権利関係の複雑な土地を整理したり、納税資金の確保や将来を見越して有益性の高い物件に組み替えることもよく行われます。  採算性の悪い古いアパートを新しいアパートに建て替えたり、先代から長年安い地代で貸し付けていた貸地を整理することも重要です。  例えば、長年貸し付けていた50坪の貸地があります。 戦後すぐに賃借人に居住用家屋を建てるために貸したもので、地代は低いままで賃貸経営としての旨味がありません。 借地権割合は50%の地域です。  このような採算性の悪い土地は生前に整理したいものです。  貸している土地はもちろん賃貸人である地主の財産ですが、長年の貸付けで賃借人には「借地権」が発生しています。 「借地権割合50%」ですから、土地の1/2は借地権とされ、借地権は賃借人の財産とされます。 よほどいい立地の土地なら賃借人から借地権を買い取り立ち退いてもらい、他の利用方法で収益を狙う方法もありますが、そうでないなら賃借人の借地権50坪の1/2と地主の底地50坪の1/2を「固定資産の交換特例」で交換して、50坪の土地を地主と借地人が25坪づつ分け合うことで、採算の悪い貸地を整理することができます。 地主にしてみれば50坪の土地のうち25坪を賃借人に無償で譲り渡すことは論外かもしれませんが、権利関係のある土地こそ生前に整理しておくべきです。 
 「固定資産の交換特例」は、細かい要件はありますが、金銭の授受なしで所有権の移転ができるため生前の不動産の組み替えには有効です。

 現金を不動産に変形させておくことは相続税の節税の基本ですが、ここで問題なのが流動性です。  土地を現金化するには時間がかかりますし、経済状況によってはリスクもあります。  現金は必要な時にいつでも使えますが、不動産は売却する必要があります。  それに売れば譲渡所得がかかります。 現在、国税地方税込みで長期譲渡の場合には20%かかってきます。  行き過ぎた買換えは注意が必要です。

実例 3

2017-07-25 11:21:32 | 日記
 被相続人甲には、長男A,次男B,三男Cの3人の息子がいました。  被相続人はA家族と同居していたが、被相続人の体調が優れなくなると、Aは相続税対策として長男D(被相続人の孫)を被相続人の養子とすることを被相続人に提案し、養子縁組した。  その半年後に、被相続人は死亡した。
 遺産分割協議に際して、B,Cは、初めて養子縁組の事実を知らされ、Aに不信感を抱いた。  遺産分割協議が整わないため、当初の相続税の申告は未分割として法定相続分による申告書が出された。
 Bは養子縁組の無効を裁判所に訴え、一審では、「当時被相続人には、意思能力はなかった」として養子縁組の無効の判決が出された。 


相続対策
 養子縁組は最も簡単な相続税対策ですが、一人当たりの相続分は減ります。  相続税は安くなりますが、各相続人の取り分も少なくなります。  養子縁組は養子となる人が成人であれば当事者間の合意のみで成立しますが、他の相続人にしてみれば不公平感を感じます。  BCの子供も養子縁組していたら遺産分割はスムーズにいったでしょう。  無理な養子縁組は、いくら節税効果があっても、相続人間の不公平感、不信感を増大させるだけで相続対策になりません。
  

実例 2

2017-07-24 13:41:09 | 日記
 被相続人は妻に先立たれて、一人暮らしをしていた。 子供の長男A,長女Bは、いずれも遠方に住んでいたが、被相続人の体力の低下を心配したBは、単身で被相続人と同居し介護等の世話をしていた。  2年後に被相続人は死亡した。
 長男Aが保管していた遺言書には、ほとんどの財産をAに相続させると書かれており、Bは遺留分に満たない預金しか取得できなかった。  その後Bは、遺留分減殺請求を起こした。


相続対策
 Bにしてみれば、一生懸命に被相続人の介護をしたことが報われない遺言書の内容ですが、被相続人の気持ちはどうだったのでしょうか。  被相続人は、「娘が親の介護をするのは当然のこと」「娘は外に出た子であり、やはり財産はAに継がせたい」そんな思いだったかもしれません。  「親の思い」と「子の思い」は、なかなか合致はしません。  Bにしてみれば、「介護を押し付けられて、我慢して介護をしてきたが、何も介護の世話をしていないAが長男というだけで財産をすべて持っていくのは許せない。自分は、親からは愛されていなかった。」との思いがあります。
 遺言書の内容がどうであれ、法律的には被相続人の最後の意思表示として、遺産分割協議に優先します。  遺留分にさえ満たない財産しか盛られなかったことにBは、怒っていたのでしょう。  このような相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書は、後々まで相続人間の争いを長引かせます。




  

実例 1

2017-07-24 12:18:55 | 日記
 被相続人は手広く飲食店を経営。 妻はすでに死亡し、跡取りの長男A一家と同居していました。  次男Bは健在であるが、病弱だった三男Cは10年前に死亡している。  三男Cの一人息子であるDは5年前に離婚。 その妻は子供E(当時3歳、被相続人の曾孫)を連れて家を出て行った。  被相続人が死亡した場合、相続人となるのは、長男A,次男B,孫のDとなるため、Aは税理士に相続関係の相談をしていたが、その最中にDが交通事故で死亡したため、相続対策は何もできなかった。 
 その後1年して相続が発生した。  相続人は長男A,次男B,曾孫Eである。 A.Bは、Dの元妻とは音信不通の状態であったため、税理士が遺産分割協議のために元妻へ連絡を取ったところ、元妻の再婚相手の父親が、Eの親権者である元妻の委任状を持参して分割協議に参加し、「財産を隠しているだろう、全部財産を確認させろ」と騒ぎたてたため、分割協議は全く整わず、未分割状態で相続税の申告書を提出した。


相続対策
 家族関係が複雑な場合には、遺産分割が円滑に進まないことが予測できるため、公正証書による遺言書を作成することが望ましい。 遺言書があれば遺産分割協議は必要なく、スムーズな財産承継が可能である。  当事案の場合、Dが死亡したことにより、再代襲相続人となるのはEであるが、EはCの元妻に連れられて家を出ていたため、「遺産分割に時間がかかる」「遺産分割が難航する」要因は既に存在していた。  被相続人と同居する長男Aが、自らの事業も円滑に承継できるように遺言書の作成をサポートして、遺言書を作っておくべきであった。  遺言書さえ存在していてば、「赤の他人」である元妻の代理人が、遺産分割協議に介入することもなかった。