タイムラプスいろいろ

タイムラプス映像への飽くなき追求


タイムラプス・フォトグラファー 岡 浩一郎
www.skypix.jp

SONY α7Rと、タイムラプス撮影アプリで日没時と日の出時の撮影実験

2016年05月08日 | 日記

SONYのα7Rシリーズはサイズも小型軽量にもかかわらず7360x4912ピクセルと3千万ピクセルを超えるCCDで高精細な映像を誇ります。 プロの撮影現場で鍛えられ改良され続けて来たCANONの一眼レフとは異なり、操作性はお世辞にも良いとは言えないのが残念な点ではあります。 撮影現場で使用頻度の高い項目の操作は感覚的に直ちにできるようにスイッチを配置し、メニューも構成されているCANONはさすがです。 α7は私のような無骨で太い指ではメニューの展開や選択なども指先に全神経を集中していないと思うように操作できません。適当に感覚的にいじるとスパッスパッと決まるCANONとはかなり差を感じます。 それでも、この小型軽量なボディの扱いやすさと精緻な画像は、それらの弱点をカバーして余るものがあります。

α7の魅力を引き上げているものの中に色々な専用アプリがあります。アプリをインストールする事により、機能を拡張する事ができます。 そのアプリの中でも人気があるのがタイムラプス撮影用のアプリでしょう。 

 

最近のデジカメは最初からタイムラプス撮影機能を持ったものが沢山ありますが、このα7のアプリの優れた所は、日の出や日没時の光量が大きく変化するシーンでのタイムラプス撮影機能(Tracking機能)を持っている点です。 日没時や日の出時の刻々と大きく変化する光量に対し、適切かつ滑らかに露光を自動調整してくれると言う機能です。 「Day to Night」あるいは「Night to Day」の撮影はタイムラプス撮影の中でも最も難しいシーンです。 歴史的にはSKYPIXサイトでご紹介しているqDslrDashboardによるカメラの自動制御と、LRTimelapseによるAuto Transition処理によって初めてその滑らかかつ完全な映像の制作が可能になったいきさつがあります。 これがα7のアプリだけで可能になるとしたら、これはまさに超技術革命と言う事になります。

結論から言うと、α7のアプリによる撮影は妥協の産物で極めて限定的な映像しか撮れません。(なんちゃってHoly Grail?!) しかし、まがりなりにも日没や日の出のシーンがノータッチでタイムラプス撮影できると言うのは、大変なメリットと言えるでしょう。 筆者は「Day to Night」あるいは「Night to Day」の撮影はCANON 6Dに、タブレットPCにインストールしたqDslrDashboardでカメラの自動制御撮影を行い、事後にLRTimelapseによるAuto Transition処理を行って映像を制作しています。 しかしバックアップ映像として、その横でα7でタイムラプス撮影アプリを走らせて撮影すると言うのは有りです。 なにしろノータッチで放って置けばいいので、何もないよりは、いざと言う時に助けになるかもしれません。

このアプリで撮影するタイムラプスは、ドーリー等を使ったモーション・タイムラプスとは無縁ですが、他のカメラとドーリーで本格的な撮影をする傍らで、バックアップ的に固定撮影をする場合を想定し、ここではα7のタイムラプス・アプリで何処まで撮影ができるか、そしてそれは何処まで画像処理で改善できるか、本格的に撮影した場合とどれだけ乖離があるかを実験してみたいと思います。


1.日没時の撮影

露出に関しては露出倍数を調整できるだけで後はシャッター速度をカメラ任せです。ISOは100で固定になります。ISOをAutoに設定して撮影する事ができますが、その場合はシャッター速度は固定でISOが可変されていきますので、結局前者の方法で撮影する事になるでしょう。シャッター速度とISOを連動(一定の速度までシャッター速度を落としたら、あとはISOを上げて行くなどの)する芸当はできません。 すなわち、この時点で、日没時の撮影はできてもいわゆる「Day to Night」、すなわち昼間から星空までの連続撮影はできないと言う事になります。
実際に撮影した後でPCソフトで読み込んで検証してみて気がつきましたが、カメラの液晶モニター上ではシャッター速度がどんどん遅くなって行くように表示されていますが、撮影された結果を見ると液晶表示どおりの単純な処理ではないようです。
シャッター速度が一段遅くなっても、前後のフレームのLuminanceはほとんど変化していません。 普通はそこでガクッと変化し、全体のLuminance曲線は鋸の歯状になるのですが、なるほど全体の曲線をみても全く滑らかです。シャッター速度以上の処理がバックグラウンドで行われているようです。 アプリの設定画面にTracking(追従性) 「Lo-Mid-High」の切替があり選択できるようになっていますが、この機能自体がその証でしょう。これをLoにすると、液晶表示上のシャッター速度が切り替わっても、実際の露光量はすぐに変化しません。舐めて行くように徐々に新しい露出に近づけて行きます。 Hiにするとかなり早く変化します。通常はLoで良いと言うのもうなづけます。 他のソフトによる後処理なしに、滑らかに光量が変化するように考えられていると言う訳です。

これがα7でタイムラプス撮影アプリをSunsetモードにして撮影した映像です。

 

とにかく滑らかに変化に追従するという点についてはかなり目標を達成しています。 少し明るさ(Luminance)の変化が波打っているのは仕方ない所でしょう。 しかし、作品とするにはかなり苦しいです。 実は日暮れ時の映像とは、明度の変化と共に明るさやコントラスト、ハイライトやシャドウ、更には色温度など変化させてあげないと思ったような描写はできないのです。 極端な例では、オートに設定したカメラで撮影して行くと、暗くなって行くとどんどん露光を増やして、本当はそれなりに暗くなって行って欲しいのに空などギンギンに明るく写して行きます。 つまり、明るさを一定にすれば良い、あるいは適宜落として行けば良い、と言うわけではない所が実は肝なのです。 

仕方がないので、このα7でタイムラプス撮影アプリを使ってSunsetモードで撮影した画像ファイルをLRTimelapseとLightroomを使って画像処理を施してできる限り補正したものが下の画像です。

  

 

2.日の出時の撮影

同じように今度はモードをSunriseにセットして日の出の撮影を行いましたが、露光制御の結果は、日没時とはちょっと様相が異なりました。 鋸の歯とは言いませんが、シャッター速度の変わり目でかなりLuminance曲線が反応して持ち上がっています。 先に撮影した日没時もこの日の出時もTracking設定は同じ「Mid」で撮影したのですが、アプリの処理アルゴリズムがSunsetとSunriseでは単に極性が反対になっているだけではなくちょっと異なっているのではないかと思われました。 下がその画像です。(日の出直後に靄か近所の農家の焚き火の煙と思われるものが画面を横切っておりますので、そのちらつきは差し引きしてご覧ください)

 

全体としてはかなり満足の行くレンジ内で処理が行われていますが、ちょっとLuminace曲線の変化がパカパカして目障りです。 Tracking設定を「Lo」で撮影したらこの点はかなり改善できていたかもしれませんが。 このα7でタイムラプス撮影アプリを使ってSunriseモードで撮影した画像ファイルをLRTimelapseとLightroomを使って画像補正処理をしてフリッカー処理も施したものが下の画像です。

 


当たり前と言えば当たり前ですが、やはりタイムラプス・アプリによる撮影はかなり限定的です。

①開始時と終了時の明るさが適当なところに設定されているだけでなく、太陽光の増減による各種画像要素が調整されないので、あくまでも妥協した映像しか撮れない
②シャッター速度とISOを連動させた調整はできないので、光量の調整範囲が狭く、従って開始時点あるいは終了時点に星空まで持って来る事ができない

と言ったところが結論となりました。

記録映像の撮影にはとにかく簡単で便利なのは間違いありません。 ただ作品作りには使う訳には行かないと言った所でしょうか。

ここでは補完策としてLRTimelapseとLightroomを使って画像補正処理をして改善の余地を確認してみましたが、そもそも望ましい露光が与えられていないので、思ったような映像となるように処理を進めると画像のバランスが崩れてしまいます。 

 

下の映像は、比較の為にCANON 6DとqDslrDashboardを使ってHoly Grail手法で撮影したものです。(レンズは同じです) 

  

 上の日没と同じ場所ですが翌日撮影したものなので、日没まで薄雲が太陽光を拡散しており、夕焼けもほとんど見られない美しさのない日没と、撮影対象の条件が全く異なりますので単純な比較はできないのですが、この悪条件下なりにほぼ狙った通りの映像となっています。 そして何よりも決定的な違いは、このまま星空の撮影ができるという点です。 このシーケンスの終了時点で露出は4秒ISOは1600でしたが、このまま継続すれば(もっともこの場所は街路灯とかが明るいので無理ですが)露出15秒ISO3200など任意の所まで持って行けますので、この映像の延長線上で星空の銀河まで撮影が可能になります。

 



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