私は部屋に戻って、近くのパブへ行く為の準備をしていると、フロントの女性から
電話があり、今しがた“ Mrs.Jane ” から私にメッセージがあり、その内容について
“ マイケルは高熱の為、ホテルには戻れない。 ” との事でした。
しかし、連絡をもらっても、“ Mrs.Jane ” の住所も電話番号も解らないので
コンタクトが取れずにいた。 パブに向かう途中、エディにその事を話すと
「 親戚の家だから大丈夫だよ。 ちゃんと看病してもらっているさ。 」
「 昨日も夜から急に高熱が出て、アスピリンを飲ませて休ませたのよ。
でも翌朝、嘘の様に熱が下がっていたので、一過性の発熱かと思っていたのに。
何か胸騒ぎがする・・・ 大丈夫かしら・・・ とても心配だわ・・・ 」
「 マイケルの居所が解らないんだから、心配しても仕方ないじゃないか。
それに、先方からメッセージもきているし。 」
「 ・・・そうね、大丈夫よね。 」
しばらく湖畔を歩いていると、田舎風の感じのいいパブが見つかったので迷わず入る。
パブの中は、外観から見た感じに比べて思ったより広かった。 何と面白かったのは
1Fに薄暗いフロントがあって、案内された場所は、地下だった。
沢山の観光客や地元の人でいっぱいだったので、私達もバラバラになって座る事になり
私はエディと向かい合って座った。
スコッチウイスキーとラムのグリル、ポテトに豆料理を注文する。 真ん中には大きな
グランドピアノがあって、エディが笑いながら 「 見なさいあの人を・・・ 」
というので、向こうからやって来たピアニストを見て、思わずギョッとしたのである。
リアルに作ってある大きな耳に大きな鼻をつけたピアニスト。 パブにいるお客さんが
一斉に笑い出した。いきなり、そのピアニストが弾き出した曲は結婚行進曲・・・
すると、ダイアナのそっくりさんが現れ、そのピアニストとキスをしたのである。
あの不気味なピアニストは、何とチャールズ皇太子を真似た演出だった。
それにしても、どう見ても化け物そのものだ。 ピアノの腕前も今一だったが
ジャズばかりだったので、どうにか誤魔化していた様だが、やはりひどかった。
私もよく音を外すので、人のことを言えたものじゃなかったが、音楽に興味の無い
エディでさえ、「 自動伴奏の方がいいな。 」 と言っていた位だから。
「 パブの雰囲気は愉快だけど、ホテルで不愉快な思いをして、今晩は散々だったわね。 」
と言いながら、運ばれてきたウイスキーをストレートで乾杯し、2人はいきなりグラスを
開けてしまった。
「 この事をいつか、記事にしてみるよ。 あの様な出来事は結構あるんだよ。 」
「 白人同士でもあるのね。 人間って、上下関係って言うのかしら?
つくりたいのよね。 」
「 家の両親もよく話していたね。 昔はもっと、ひどかったらしい。
両親は大卒で、裕福な家の出身なのに、実際、アイルランド国籍だけで
蔑視された時もあった様だよ。 」
「 じゃ、イングランド出身って言えばいいのよ。 見た目は、変わらないんだから。 」
と言いながら、手酌でウイスキーを注ぎ、又、グラスを開けてしまった。
「 冗談はよしてくれ。 そんな事言う気は更々無いよ。
それに、ビールじゃないんだから一気に飲むと悪酔いするよ。 ロックにすれば。 」
「 解っているわ、大丈夫よ。 ロツクも水割りも嫌いなの。 ストレートが一番よ。
私達なんて、黄色い肌の色だけで差別されるのよ。 いくら嘘ついても、この肌の色は
変えられないわ。 」
ウイスキーのボトルを引き寄せ、手酌でグイグイ飲んでおります。
「 いろいろ、嫌な思いをしたんだ。 そんな連中、相手にしなければいいんだ。
僕は肌の色なんて、毛頭無かったよ。 ただ、僕に相応しいと思ったから・・・ 」
「 ・・・どうしたの? その続き、話してよ。 エディ~ 」
「 ・・・いや、いいよ・・・ 今は、君の教授だからさ・・・ 」
「 どうして、今2人でいるのに、そんな事言うの? マイケルの事、気にしているの? 」
「 マイケルは眼中にない・・・ 」
「 じゃ何よ・・・ お酒が足りなきゃ話せない? 」
「 君の様子が・・・ 飲んだくれには話したくない。 眼は虚ろだし紅潮しているよ。 」
2本目のボトルを空けてグラスにそそいだ。 エディは、私のグラスのお酒を飲み干した。
「 私のお酒じゃない。 」
「 飲み過ぎだよ。 お酒は楽しく飲まなければ・・・ 」
「 私って底なしなの~子供の頃から飲んでいるのよ。 気にしないで~大丈夫よ
これ位で酔う筈ないじゃない~ 」
「 ああ、酔っていないと思うけど、少し立てるかい。 」
「 立てるわよ~ 」
しっかり立っていると思っていたが、実はエディが身体を支えていた。
手を離せば、千鳥足状態。 やはり、ビールや日本酒に慣れていても、ストレートの
ウイスキーは効き過ぎた様だ。 酔いの回りが早すぎたのは、昨日の疲れの為かもしれない。
「 エディ、私、先に帰りたい~ ファー 」 急に睡魔が襲ってきた。
「 じゃあ、送ろう。 僕の部屋で一緒にお茶でも飲んで、酔いを醒ましたら? 」
「 ・・・送り狼! その手は桑名の焼き蛤だ! ウィ。 」
「 英語で話せよ。 」
「 一回位、日本語で口説きな。 エディちゃん。 ヒック。 」
よたっていた私は、賢ちゃん達と別れて、エディと先にホテルへ帰ることになった。
身長がかなりアンバランスではあったが、男同士みたいに肩を組んでもらいながら
暗くなりかけた夜道を、一緒に帰る事になった。
エディも呆れ返るほど、鼻歌を歌っている私は完全にオヤジ化していました。
ところが、ホテルの近く迄来ると、何か、大きな物体に足を引っ掛けてしまい
そのまま倒れてしまったのである。
エディは 「 大丈夫かい? 」 と言いながら、私を起こしてくれた。
どうも、もう一人酔って倒れている人がいる様なので、エディが 「 大丈夫ですか? 」
と起こすと、その人は、苦しそうな声で言った。
「 教授・・・ 僕です。 マイケルです・・・ ああ・・・ 」と言って
その場で又、崩れ落ちた。
電話があり、今しがた“ Mrs.Jane ” から私にメッセージがあり、その内容について
“ マイケルは高熱の為、ホテルには戻れない。 ” との事でした。
しかし、連絡をもらっても、“ Mrs.Jane ” の住所も電話番号も解らないので
コンタクトが取れずにいた。 パブに向かう途中、エディにその事を話すと
「 親戚の家だから大丈夫だよ。 ちゃんと看病してもらっているさ。 」
「 昨日も夜から急に高熱が出て、アスピリンを飲ませて休ませたのよ。
でも翌朝、嘘の様に熱が下がっていたので、一過性の発熱かと思っていたのに。
何か胸騒ぎがする・・・ 大丈夫かしら・・・ とても心配だわ・・・ 」
「 マイケルの居所が解らないんだから、心配しても仕方ないじゃないか。
それに、先方からメッセージもきているし。 」
「 ・・・そうね、大丈夫よね。 」
しばらく湖畔を歩いていると、田舎風の感じのいいパブが見つかったので迷わず入る。
パブの中は、外観から見た感じに比べて思ったより広かった。 何と面白かったのは
1Fに薄暗いフロントがあって、案内された場所は、地下だった。
沢山の観光客や地元の人でいっぱいだったので、私達もバラバラになって座る事になり
私はエディと向かい合って座った。
スコッチウイスキーとラムのグリル、ポテトに豆料理を注文する。 真ん中には大きな
グランドピアノがあって、エディが笑いながら 「 見なさいあの人を・・・ 」
というので、向こうからやって来たピアニストを見て、思わずギョッとしたのである。
リアルに作ってある大きな耳に大きな鼻をつけたピアニスト。 パブにいるお客さんが
一斉に笑い出した。いきなり、そのピアニストが弾き出した曲は結婚行進曲・・・
すると、ダイアナのそっくりさんが現れ、そのピアニストとキスをしたのである。
あの不気味なピアニストは、何とチャールズ皇太子を真似た演出だった。
それにしても、どう見ても化け物そのものだ。 ピアノの腕前も今一だったが
ジャズばかりだったので、どうにか誤魔化していた様だが、やはりひどかった。
私もよく音を外すので、人のことを言えたものじゃなかったが、音楽に興味の無い
エディでさえ、「 自動伴奏の方がいいな。 」 と言っていた位だから。
「 パブの雰囲気は愉快だけど、ホテルで不愉快な思いをして、今晩は散々だったわね。 」
と言いながら、運ばれてきたウイスキーをストレートで乾杯し、2人はいきなりグラスを
開けてしまった。
「 この事をいつか、記事にしてみるよ。 あの様な出来事は結構あるんだよ。 」
「 白人同士でもあるのね。 人間って、上下関係って言うのかしら?
つくりたいのよね。 」
「 家の両親もよく話していたね。 昔はもっと、ひどかったらしい。
両親は大卒で、裕福な家の出身なのに、実際、アイルランド国籍だけで
蔑視された時もあった様だよ。 」
「 じゃ、イングランド出身って言えばいいのよ。 見た目は、変わらないんだから。 」
と言いながら、手酌でウイスキーを注ぎ、又、グラスを開けてしまった。
「 冗談はよしてくれ。 そんな事言う気は更々無いよ。
それに、ビールじゃないんだから一気に飲むと悪酔いするよ。 ロックにすれば。 」
「 解っているわ、大丈夫よ。 ロツクも水割りも嫌いなの。 ストレートが一番よ。
私達なんて、黄色い肌の色だけで差別されるのよ。 いくら嘘ついても、この肌の色は
変えられないわ。 」
ウイスキーのボトルを引き寄せ、手酌でグイグイ飲んでおります。
「 いろいろ、嫌な思いをしたんだ。 そんな連中、相手にしなければいいんだ。
僕は肌の色なんて、毛頭無かったよ。 ただ、僕に相応しいと思ったから・・・ 」
「 ・・・どうしたの? その続き、話してよ。 エディ~ 」
「 ・・・いや、いいよ・・・ 今は、君の教授だからさ・・・ 」
「 どうして、今2人でいるのに、そんな事言うの? マイケルの事、気にしているの? 」
「 マイケルは眼中にない・・・ 」
「 じゃ何よ・・・ お酒が足りなきゃ話せない? 」
「 君の様子が・・・ 飲んだくれには話したくない。 眼は虚ろだし紅潮しているよ。 」
2本目のボトルを空けてグラスにそそいだ。 エディは、私のグラスのお酒を飲み干した。
「 私のお酒じゃない。 」
「 飲み過ぎだよ。 お酒は楽しく飲まなければ・・・ 」
「 私って底なしなの~子供の頃から飲んでいるのよ。 気にしないで~大丈夫よ
これ位で酔う筈ないじゃない~ 」
「 ああ、酔っていないと思うけど、少し立てるかい。 」
「 立てるわよ~ 」
しっかり立っていると思っていたが、実はエディが身体を支えていた。
手を離せば、千鳥足状態。 やはり、ビールや日本酒に慣れていても、ストレートの
ウイスキーは効き過ぎた様だ。 酔いの回りが早すぎたのは、昨日の疲れの為かもしれない。
「 エディ、私、先に帰りたい~ ファー 」 急に睡魔が襲ってきた。
「 じゃあ、送ろう。 僕の部屋で一緒にお茶でも飲んで、酔いを醒ましたら? 」
「 ・・・送り狼! その手は桑名の焼き蛤だ! ウィ。 」
「 英語で話せよ。 」
「 一回位、日本語で口説きな。 エディちゃん。 ヒック。 」
よたっていた私は、賢ちゃん達と別れて、エディと先にホテルへ帰ることになった。
身長がかなりアンバランスではあったが、男同士みたいに肩を組んでもらいながら
暗くなりかけた夜道を、一緒に帰る事になった。
エディも呆れ返るほど、鼻歌を歌っている私は完全にオヤジ化していました。
ところが、ホテルの近く迄来ると、何か、大きな物体に足を引っ掛けてしまい
そのまま倒れてしまったのである。
エディは 「 大丈夫かい? 」 と言いながら、私を起こしてくれた。
どうも、もう一人酔って倒れている人がいる様なので、エディが 「 大丈夫ですか? 」
と起こすと、その人は、苦しそうな声で言った。
「 教授・・・ 僕です。 マイケルです・・・ ああ・・・ 」と言って
その場で又、崩れ落ちた。