ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

在宅サービス事業者は一致団結してこの難局に臨むべき(2)

2008年04月23日 | ケアや介護
 「介護保険制度研究会」は、学識研究者、介護保険制度に参入している主要な民間事業者団体、および介護保険サービスを利用支援している団体が結集したことは、前回報告した。調査結果をもとに、舛添要一厚生労働大臣に要望書を提出したことも報告したが、今回は具体的にどのような内容の要望をしたかを、紹介しておく。

 要望内容は、①緊急に実現していただきたい要望、②数年後の法改正に向けての要望、の2点である。

(1)緊急に実現していただきたい要望

 緊急に実現して欲しい要望は、「訪問介護員の介護報酬を大幅にアップしていただきたい」ということである。これについては、調査結果でのお寒い状況を示し、追加的な理由としては以下の通りである。

①訪問介護の介護報酬には、法的に設置が義務づけられている管理者やサービス提供責任者の賃金分を含めたものとなっているが、現状ではそうした賃金分が担保されていない。

②訪問介護は利用者への継続的な支援が重要であるが、低賃金ゆえに生じる現実の離職率の高さは、ケアの質の低下をもたらしている。ケアの質を維持するためにも介護報酬のアップが求められる。

③現在の訪問介護事業所の人件費(比率)は極めて高く、そのことが訪問介護員の賃金の低さに影響を与えており、現状の介護報酬では賃金を上げることが困難である。

④ヘルパーの定着率を高めるためには、サービス提供責任者のスーパービジョンや内部での研修の実施、外部での研修への参加が重要であるとされているが、事業者がそうした研修体制等を確保するためにも、介護報酬のアップが求められる。

⑤社会保障審議会介護保険部会では、訪問介護は将来介護福祉士を基本とすべきという提案がなされており、このことからも介護報酬のアップは必要である。
   

(2)数年後の法改正に向けての要望としては、以下の通りである。

 調査結果では、「介護保険制度の現状はだんだん悪くなっている」と思っている事業者が、法人全体で82.0%(訪問介護事業者:75.9%、通所介護事業者:75.6%、居宅介護支援事業者:78.5%)もあり、「介護保険制度は、将来的に立ちゆかなくなる」と考えている事業者は、法人全体で53.8%(訪問介護事業者:57.3%、通所介護事業者:60.6%、居宅介護支援事業者:66.0%)もある。一方、「介護保険事業の将来の見通しは明るい」と感じている法人はわずか10.7%(訪問介護事業者:5.2%、通所介護事業者:4.3%、居宅介護支援事業者:6.0%)に過ぎない。

 直接利用者にケアを行っている居宅介護事業者がこのように介護保険制度の将来に大きな不安を感じているとすれば、国民の介護保険制度に対する不安は一層大きいと推察される。同時に、現状から考えれば、在宅介護サービス事業者の撤退はあっても、新たに参入してくる事業者は見込めないといっても言い過ぎではない。国民の不安を払拭し、サービスを担う介護保険事業者も、介護保険制度に対する不信感を払拭することが必要である。


 そのために、以下のような4点について、介護保険制度の改革を要望した。


①介護保険制度は利用者の在宅支援を原則としており、在宅介護事業者やその職員は社会資本であるとの観点から、そうした事業者が一定の安定した経営が成り立つ仕組みを作っていくこと。

②介護職が魅力ある専門職種であるとする社会的な意識を醸成していくための施策を推進すること。
 
③利用者にできる限り介護保険サービスに関する情報を公開・提供することに加えて、利用者が介護保険サービスを利用しやすい制度やその運用となるよう進めること。

④介護保険制度は保険原理をもとに成り立っており、地域支援事業については一般財源でもって実施することを検討すること。同時に、居宅介護支援事業についても、一般財源の導入を検討すること。


 なお、この要望書は「介護保険制度研究会」として提出され、研究者委員としては、私以外の、樋口惠子(高齢社会をよくする女性の会理事長、東京家政大学名誉教授)、高木郁朗(日本女子大学名誉教授)、加瀬裕子(早稲田大学教授)、安立清史(九州大学大学院准教授)、 柴田範子(東洋大学講師)であった。事業者・当事者委員としては、兼間道子(NPO法人日本ケアシステム協会会長)、山本敏幸(JA高齢者福祉ネットワーク事務局長)、高田公喜(日本生活協同組合連合会福祉事業推進部部長)、扇田守(有限責任中間法人「民間事業者の質を高める」全国介護事業者協議会専務理事)、北村俊幸(有限責任中間法人日本在宅介護協会研修広報副委員長)、山田和彦(全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会)介護事業室室長)、牧野史子(NPO法人介護者サポートネットワークセンター アラジン理事長)、河口博行(NPO法人ニッポン・アクティブ・ライフ・クラブ専務理事)、中村喜佐子(NPO法人市民福祉団体全国協議会常務理事)であった。

 なお、事務局として全体をまとめる努力をして頂いた、NPO法人市民福祉団体全国協議会特定非営利活動法人の専務理事田中尚輝さんと福原秀一さん(アドヴォカシー担当)等の、黒子の仕事があってまとまったものである。

 こうした利用者と事業者の思いが実現することを願っている。




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