ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

レジデンシャル・ソーシャルワーカー論?(最終回)

2008年04月04日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
 今まで、レジデンシャル・ソーシャルワーカーのあるべき専門職像や、そのために必要な資質について言及してきた。今回は最終回として、レジデンシャル・ソーシャルワーカーの養成を含めて、私が考えるソーシャルワーカー養成の全体像を示したいと思う。これは、社会から求められているソーシャルワークを発展させるために、ここ5年から10年かけて実現しなければならいないソーシャルワーカーの資格再編についてのあり、上記のような図を考えている。(図をクリックして、大きくして見て下さい)

 ソーシャルワーカーを広く捉えるためには、社会福祉六法の世界を超えて、多領域で活躍できる人材であることが必要である。当然、施設のソーシャルワーカーについても明確な位置づけが必要である。この図は例示のため含めていないが、最終的には、一般企業にもソーシャルワーカーが食い込めるように努力すべきと考えている。この図で、レジデンシャル・ソーシャルワーカーはスペッシフィックな他のソーシャルワーカーと同様に、社会福祉士資格を基礎にして、認定のある資格として養成し、社会に輩出していくことで、レジデンシャル・ソーシャルワーカーのレベルが高まっていく要素があるのではないかと考えている。これを他のスペシフィックなソーシャルワーカーもしかりである。これらは全て例示である。

 なお、最近話題になるコミュニテイ・ソーシャルワーカーについては、私の個人的な考え方であるが、社会福祉士そのものがそうであり、特に今回のカリキュラム改正では、コミュニテイで活躍する人材として社会福祉士を位置づけている。そのため、認定する必要はないのではないかと考えている。あえて作るのであれば、特化したジェネリックな養成を社会福祉士資格に付加して実施し、認定コミュニテイ・ソーシャルワーカーを作っても問題はないと考えている。さらに、レジデンシャル・ソーシャルワーカー以外のスペシフィックなソーシャルワーカーも、ある意味、コミュニテイ・ソーシャルワーカーと考えている。
 
 そのため、こうした認定ソーシャルワーカーは、大学や一般養成施設で養成することはもちろん必要であるが、同時に、現在活躍している社会福祉士や潜在社会福祉士を対象をに認定していく仕組みが必要である。前者については、個々の大学は、どの領域での認定ソーシャルワーカーを養成するかで自らの大学の養成での特徴を示すことになる。ある意味では、それぞれの大学が拠点校になることができ、できれば単位互換制度で、他の大学の学生も受講できることが望ましい。後者については、できる限り実務経験を生かすことで、働きながら取得可能な仕組みを作ることが必要である。このような認定制度を作るためには、よりレベルの高い養成教育とより現実的な可能性をマッチさせることが大切である。

 また、こうしたスペシフィックな職場では、他専門職がメジャーであり(例、施設では介護職、医療では看護などの医療職、学校では教諭)、ソーシャルワーカーがマイナーであり、一人職場である場合も多いことから、認定ソーシャルワーカーには、職場を超えた、スーパービジョン体制を、認定資格を出している拠点大学や職能団体が準備する必要がある。あるいは、継続した教育という意味では、更新制度ということで対応することも可能である。 

 さらに、社会福祉やソーシャルワークへの社会からの要請も時代と共に変化していくが、そのためには、現状のソーシャルワーカーへの再教育が不可欠である。これについては、職能団体や可能であれば関係学会が中心となり、時代に即したソーシャルワーカーの課題別研修を体系的に実施し、そこにも認定していくことが求められる。それが、現在求められているような「退所・退院」、「虐待」、「就労支援」といった全領域にまたがるトピック別の認定資格であり、その時代その時代に求められている能力を付与するものである。

 一方、若い職員がキャリアパスのもとで、スーパーバイザー(中間管理職)や施設長になっていくためには、「改正社会福祉士及び介護福祉士法」の衆議院の附帯決議でも書かれ、昨年八月に改正された「福祉人材確保指針」でも言及された「専門社会福祉士」を設置していくべきと考える。ここでのカリキュラムは、スーパービジョン論、施設マネジメント論、地域マネジメント論、会議運営論、法人経営管理論といった科目が考えられる。

 以上は、私個人の私案に過ぎないが、こうした仕組みを作ることにより、ソーシャルワークの広範囲の領域が確定し(福祉六法の領域を中核にしながら)、同時に大学卒の新人から管理職までの職業人生において、一定のキャリアパスを作ることになり、ソーシャルワーク全体のアイデンテイテイの確立につながっていくのではないかと考えている。

 ただ、こうした仕組みを作っていくには、学校等の関係者、多くの職能団体、社会福祉だけでなく様々な施設や団体の皆さん、さらには国・都道府県・市町村の行政職員が力を合わせないと、実現が不可能である。夢でもあるが、その実現に向かって、一歩・一歩歩んでいきたいものである。

 多くの皆さんからのご意見をお待ちしています。






レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(12)

2008年03月31日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
レジデンシャル・ソーシャルワーカーは入退所、特に退所にいかに関与すべきかについて考えます。入所時に利用者に関する情報を得て、安全・安心を狙いにした施設のケアプランを作成するのは、レジデンシャル・ソ-シャルワーカーの仕事である。これと同様、施設退所においても、レジデンシャル・ソーシャルワーカーの役割は大きい。

 具体的には、入所以降、おそらく施設内のケアプランは利用者を担当するケアワーカーが中心になってアセスメント情報を有することになるが、多職種がそれぞれアセスメント情報をもって集まり、利用者の参加も得て、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが司会役になりカンファレンスを行い、そこでケアプランを継続して修正していくことになる。ここまでは、入所中のケアプランである。

 入所者が退所する場合には、本人から退所意向についての気持ちを知ることが必要である。これについては、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが日々利用者と関わる中でキャッチしたり、他職員からの情報から利用者の本意を伺うことことを行う。そのため、レジデンシャル・ソーシャルワーカーは常日頃から利用者とのコミュニケーションを図り、信頼関係をつくておく努力が必要である。

 次に、施設内のケアプランから退所に向けたケアプランに移行していく。これにもレジデンシャル・ソーシャルワーカーが中心になり、ケアプランの内容を、在宅生活を可能にしていくものに大きく変えていく必要がある。時には、ケアプランの中に在宅生活に向けて必要なSST(social skill training 社会生活訓練)を取り入れることが必要になる場合もなる。

 さらに、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが在宅でのケアプランに関わってくれるソーシャルワーカーやケアマネジャーを利用者と一緒に決定し、在宅のケアプランを作成を支援することで、利用者の生活の連続性を保つことになる。

 こうした過程を理論化し、実践していくことで、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが中心になり施設退所を進めていくことができるのではないでしょうか。ただ大事なことは、レジデンシャル・ソーシャルワーカーがこうした業務をする能力があり、同時に他のスタッフが納得してくれることが必必須である。そのためにも、認定レジデンシャル・ソーシャルワーカーの制度が必要ではないのでしょうか。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(12)

2008年03月27日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
レジデンシャル・ソーシャルワーカーは入退所、特に退所にいかに関与すべきかについて考えます。入所時に利用者に関する情報を得て、安全・安心を狙いにした施設のケアプランを作成するのは、レジデンシャル・ソ-シャルワーカーの仕事である。これと同様、施設退所においても、レジデンシャル・ソーシャルワーカーの役割は大きい。

 具体的には、入所以降、おそらく施設内のケアプランは利用者を担当するケアワーカーが中心になってアセスメント情報を有することになるが、多職種がそれぞれアセスメント情報をもって集まり、利用者の参加も得て、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが司会役になりカンファレンスを行い、そこでケアプランを継続して修正していくことになる。ここまでは、入所中のケアプランである。

 入所者が退所する場合には、本人から退所意向についての気持ちを知ることが必要である。これについては、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが日々利用者と関わる中でキャッチしたり、他職員からの情報から利用者の本意を伺うことことを行う。そのため、レジデンシャル・ソーシャルワーカーは常日頃から利用者とのコミュニケーションを図り、信頼関係をつくておく努力が必要である。

 次に、施設内のケアプランから退所に向けたケアプランに移行していく。これにもレジデンシャル・ソーシャルワーカーが中心になり、ケアプランの内容を、在宅生活を可能にしていくものに大きく変えていく必要がある。時には、ケアプランの中に在宅生活に向けて必要なSST(social skill training 社会生活訓練)を取り入れることが必要になる場合もなる。

 さらに、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが在宅でのケアプランに関わってくれるソーシャルワーカーやケアマネジャーを利用者と一緒に決定し、在宅のケアプランを作成を支援することで、利用者の生活の連続性を保つことになる。

 こうした過程を理論化し、実践していくことで、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが中心になり施設退所を進めていくことができるのではないでしょうか。ただ大事なことは、レジデンシャル・ソーシャルワーカーがこうした業務をする能力があり、同時に他のスタッフが納得してくれることが必必須である。そのためにも、認定レジデンシャル・ソーシャルワーカーの制度が必要ではないのでしょうか。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(11)

2008年03月25日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
 レジデンシャル・ソーシャルワークについて論じてきたが、今は在宅の時代にあって、人員配置の観点からも、不要論といった雰囲気も強いが、それでは現状の施設の相談職を見捨てていことになる。同時に、他の国にはあまり確立していない相談職の役割をレジデンシャル・ソーシャルワークの本質的な業務として、世界の国々に発信していくことが、日本の社会福祉の使命である。とりわけ、日本の社会福祉士の大多数は施設の相談職であることを忘れてはならない。

 現在的な課題と結びつけることで、レジデンシャル・ソーシャルワークを蘇らせていくためには、レジデンシャル・ソーシャルワークがコミュニテイ・ソーシャルワークといかにつながっていくかを考えることも一つの方法である。すなわち、、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが施設から地域社会に移行していくことで、どのような手順で実施できるかを明らかにすることである。

 レジデンシャル・ソーシャルワーカーは施設内のケアプランから地域移行に方向付けることができることができれば、コミュニテイ・ソーシャルワーカーとの接点をもつことができる。そのため、施設でのケアプランから地域移行にいかにつながっていくかを次回には考えてみたいと思う。その時に、レジデンシャル・ソーシャルワーカーがいかにこれらに関与するべきかについても言及する。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(10)

2008年03月24日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
児童養護施設では、児童に対する日々のケアだけでなく、いかに家族や地域社会にソフトランデイングするかである。そのことを推進するのが、児童指導員の仕事であり、それはレジデンシャル・ソーシャルワークと言うことができる。

 そのため、児童指導員は、保母と一緒になり、日々のケアプランを作成・実施し、同時に、退所に向けてのデイスチャージ・プランにつなげていくことになる。そのため、児童指導員は、個々の児童の施設での質の高い生活を支援するためのケアプラン作成・実施の責任を担い、同時にケア・カンファレンスを企画・実施していくことになる。そのため、児童指導員がレジデンシャル・ソーシャルワーカーとして活躍するためには、サービス管理責任者同様に、施設のケアプラン、カンファレンスの進め方や保母とのチーム・アプローチ、職員を束ねていく上でのマネジメントといった知識が必要になってくる。

 このように考えると、児童福祉施設、障害者福祉施設、介護保険施設のいずれであろうと、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが必要であり、その職員は既存の相談職が担うことができることが分かった。さらには、どのような施設であろうと、必要とする知識や技術は共通しており、レジデンシャル・ソーシャルワーカーとしての養成が可能であることが明らかになった。最後に、そうした知識や技術をもっている者なり、その知識や技術についての教科を履修した者に対して、資格認定をしていくことを提案してきた。

 能力にある者について、それを社会に知ってもらうためには、こうした認定資格は大きな意味がある。さらには、資格取得者は、他の人々とは異なる能力が発揮できることに自信がもてる制度でなければならない。

 現在、施設で相談職を担っている皆さん、こうした仕組み作りを一緒にしませんか。

 以上の希望的な構想のもとには、実践能力をもった社会福祉士を育成できることが前提であり、そのことを忘れてしまうと、以上のような構想は味気ない幻想で終わることになることを忘れてはいけない。

 次回からは、レジデンシャル・ソーシャルワークがコミュニティベースド・ソーシャルワークといかに接点をもっていくかで、議論を深めたい。乞うご期待下さい。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(9)

2008年03月21日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
社会福祉施設では、今まで述べてきた障害者や高齢者の施設だけでなく、措置制度の残っている児童福祉施設もある。このような施設においても、レジデンシャル・ソーシャルワーカーが必要不可欠なことを論じてみたい。

 私は、30年弱前に、事例研究会で児童養護施設の子どもが施設を退所し、就職していったケースの検討で、今も痛烈に忘れられないことがある。この子どもは、中学校を卒業して就職するが、職場になじめず、職を転々とすることになり、最終的には、やくざの世界に入ってしまった。それで、なぜ失敗してしまったのかを、自問し続けた記憶があります。

 この自問の中で、この事例に対して、様々な「つっかい棒」を作ることができれば、どのような強風にも倒れることなく、このような事態には至らなかったのではないかという印象をもった。その後、私は、当時の事例を頭に浮かべながら、ソーシャルワークの支援としての「つっかい棒」作りを一つの研究テーマとしてきた。

 この「つっかい棒」は、子どものことを最もよく知っている施設の職員が中心に行うことがベストであると確信しています。30年も前の事例で古くさいと言われるかもしれません。確かに、養護施設に入所している子どもの特徴は大きく変わり、被虐待児、学校に適応できない子ども等複雑多様なニーズを有した子どもが多くなっていますが、彼らが、家族に帰るにしても、あるいは就職を含めて社会復帰するにしても、「つっかい棒」作りは重要です。

 こうした仕事を施設でするのは、本来児童指導員といった職種の方が行うのだと思います。同時に、この仕事こそがレジデンシャル・ソーシャルワーカーが実施すべきことのように思います。すなわち、児童指導員は、レジデンシャル・ソーシャルワーカーになるということではないのでしょうか。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(8)

2008年03月18日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
レジデンシャル・ソーシャルワークを確立していくための、私案を思い切って提案してみる。他の国に比べ、日本は施設の生活相談員といった職種が明確にあり(徐々に弱くなっているが)、他国から移入したモデルではなく、日本がモデル化し、海外に発信していく責任があると考える。

 レジデンシャル・ソーシャルワーカーを日本に明確に位置づけるためには、まずは、以前述べたサービス管理責任者に求められる役割を最低限遂行できることになる教科を、社会福祉士の資格科目に加えて修得させることである。具体的は、ケアの理論と実際、施設でのケアプラン、施設マネジメント、カンファレンスを含めたチームアプローチである。当然、これにレジデンシャル・ソーシャルワーク論、その演習、相談員のもとでの実習を、教科に加える。さらに、こうしたそれぞれの教科の質を担保しなければならないことは当然であり、教科内容についてはどこかで審査される必要がある。

 こうした教科をクリアし、大学卒業時に社会福祉士の国家資格を取得した者には、「認定施設ソーシャルワーカー」という資格を授与してはどうだろうか。当然、社会福祉士資格を既に取得している人に対しても、こうした教科が通信やeーラーニング等も活用して提供され、受講すれば、「認定ソーシャルワーカー」の資格が与えられる。社会福祉士の資格を有していない相談担当者には、受験へのインセンテイブが働く仕組みを作ることもにも配慮が必要である。

 ただし、この認定資格制度が機能していくためには、学校等の養成施設や職能団体だけの力では不十分である。これらの組織が、老人福祉施設協議会、障害者施設の団体、さらには老人保健施設協会、社会福祉施設経営者協議会等の協力や支援を得て、この資格を高めていく共同作業が不可欠である。そのため、だれかがこうした団体に理解を得るべく、鈴を付けにいかなければならない。同時に、そうした職員がいないことが現状であるため、「いる」場合に、財政面でも評価される仕組みを作るべきである。

 なお、この「認定ソーシャルワーカー」は、アドバンスの上級ソーシャルワーカーとは異なることの整理も需要である。上級の場合は、経験年数が不可欠であり、さらに教科内容は、スーパービジョン論、施設と社会との関係論、施設マネジメント論(カネ、ヒト、モノ)等の教科に重点が置かれることになる。

 このような提案について、ご意見をください。ソーシャルワークの発展のための、一つのステップであり、資格を得ていくことで、実践レベルが高まることも期待出来るのではないでしょうか。ただし、今回の社会福祉士の制度改革で、基礎となる社会福祉士教育で、基本的な実践能力が担保できることが、こうした議論の前提条件であることは言うまでもない。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(7)

2008年03月13日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
しかしながら、特別養護老人ホームや老人保健施設では、社会福祉士によるレジデンシャル・ソーシャルワークが強く求めあられているのが現実であると思っている。

 例えば、老人保健施設は社会復帰施設として創設されたが、現状は終の棲家的な施設が数多くある。この理由に、認知症の方が増えたからといった発言もあるが、こうした症状の人であっても、単に、身体生理面からだけで退所を捉えず、本人の意欲といった心理面や家族介護者や自宅の住環境といった社会面から退所を促進していくとすれば、本当は社会福祉士以外に、こうした仕事はできないのではないだろうか。

 また、老人ホームであれば、病気の管理といった身体面やADLといった機能面で、入所者を支援するのであれば、病院と類似し、看護師や医師が主流になる。しかしながら、生活施設である特別養護老人ホームでは、身体機能面だけでなく、本人の心理面や介護職員や地域社会を含めた社会環境面での改善を射程にして支援できるのは、社会福祉士以外にの職種はないような気がする。

 そこで、このようなすばらしいことができる社会福祉士を生み出していく仕組みについて、次回は一つの提案をしてみたぃ。お楽しみにしておいてください。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(6)

2008年03月09日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
どうして、生活相談員等と呼ばれたスタッフが社会福祉士でもって配置できなかったかの理由は、厳しく言えば、社会福祉士が施設の運営・経営者、施設の入所者、さらには社会の期待に応えることのできる業務を実施できなかったことが大きいのではないか。さらに言えば、実施できない前に、どのような機能を果たすかの理論的な位置づけが不十分であり、学校が適切な能力をもった人材を輩出できなかったからではないのか。

 これが、介護保険施設で介護支援専門員に取って代わられることになってきたのでないのか。社会福祉士は施設で求められている介護支援専門員の業務をやり、さらには、障害者分野で見られる「サービス管理責任者」に求められている業務を介護保険施設で遂行することができるようにすることが、生活相談員等が生き残るためのポイントではないのか。

 さらに、特別養護老人ホームの方が老人保健施設よりも社会福祉士である相談職比率が低い理由は、老人保健施設の方が設立が新しいため職員採用の際に、新卒の社会福祉士を採用しやすかったこと、また医療施設は資格社会的側面が強いこと、が関係しているのではないか。ただ、残念なのは、特別養護老人ホームでの相談職が社会福祉士の資格取得に向けて必ずしもインセンテイブが働かなかったことである。これは、上記の社会の側がそうした資格者を求めなかったからではないのだろうか。

 もう一度、社会から相談職としては社会福祉士を採用したいといった要請がくるよう、介護保険施設のレジデンシャル・ソーシャルワーカーのために求められる教育なり養成を進めていこう。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(5)

2008年03月08日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
最も数の多い社会福祉施設は特別養護老人ホームであり、同時に医療領域で、社会福祉士と関連があり、この20年間に急激に増えたのは老人保健施設である。

 特別養護老人ホームでは、生活相談員が法的に位置づけられており、老人保健施設では支援相談員が位置づけられている。なお、後者については、入所者100名に1名の介護支援専門員の配置が義務化される中で義務化が崩れたのではないのでしょうか?確認してください。

 いずれにしても、こうした職には社会福祉士が配置されていると思っている者も多いであろう。なぜなら、その職が空席になれば、社会福祉士資格取得者なり、学卒で資格取得のための単位取得予定者を対象に募集したり、現に職に就いている者については、施設側が社会福祉士の受験を勧めることになると思うからである。

 しかしながら、驚くべきことであるが、厚生労働省の調査によると、この職での社会福祉士資格取得者比率は、特別養護老人ホームでは4人に1人、老人保健施設では、3人に1人である。資格取得者が少ないこと、さらに医療の世界より社会福祉の世界で社会福祉士の比率が低いを、私たちはどのように解釈したらいいのだろうか。

 これについて、社会福祉士制度ができてからの20年間に、比率をどうして高めることができなかったのかから、考えてみよう。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(4)

2008年03月07日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
障害者施設でのサービス管理責任者がレジデンシャル・ソーシャルワークを担うことになるが、サービス管理責任者になるためにはどのような教科を学んでおくことが必要かを考えてみたい。

 そこでは、社会福祉士が基礎資格とするなら、当然社会福祉士の受験科目(演習・実習を含む)が基礎となり、そこにレジデンシャル・ソーシャルワーカーとなるためには、どのような科目履修が不可欠かが問われることになる。

 前回のサービス管理責任者の役割から考えると、基礎科目に加えて、あるいは強化するものとして、ケアの理論と実際、施設でのケアプラン、施設マネジメント、カンファレンスを含めたチームアプローチ、といった科目と、経験のない者にはサービス管理責任者としての実習・演習が必要であろう。

 こうしたことが修得できれば、社会福祉士の上に付加された認定レジデンシャル・ソーシャルワーカーが見えてくる。これは、学部卒業生でも可能であろうが、大事なのは、現職の施設で働く社会福祉士へのキャリアパスを作ることである。障害者施設の経営者に参加いただき、こうした構想を実現化していきたいものである。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(3)

2008年03月05日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(3)

 サービス管理責任者の主たる仕事について、厚生労働省は以下のように考えているようだ。
①利用者の状況を把握し、利用者に助言や指導を行う(相談支援・連絡調整)。
②サービス提供職員の支援内容を確認し、職員の適切な助言や指導を行う(ケアに関するスーパービジョン)。
③サービス全体をマネジメントし、サービス内容を相互に活かしていく(施設マネジメント)。
④ケース会議を企画・運営し、サービス提供職員間での意思統一を図る(カンファレンス)。
⑤利用者の意向を把握し、サービス内容が利用者の意向を反映したものになるよう調整する(コーデイネーション)。
⑥利用者の意向と支援方針やプランが著しく異なることになった場合、利用者に説明し、了解を得る(アカンタビリテイ)。
⑦ケアプランの作成や実施について、サービス提供職員を支援できるよう教育する(施設ケアプラン作成および指導)。
⑧サービスの提供開始から終了まで、スケジュール管理を行い、支援内容について優先順位をつける(モニタリング)。
⑨様々な社会資源を活用することで、利用者の地域生活への円滑移行を図り、助言や指導を行う(デイスチャージプランの作成・実施)。
⑩要望の多い個別的サービスを標準的なサービスに移していく(マニュアルの作成・修正)。
⑪サービス終了時に総括を行い、評価を行う(ターミネーション)。

 これらの仕事は、基本的には社会福祉士の仕事内容であり、社会福祉士が最適な職種であり、彼らがレジデンシャル・ソーシャルワーカーとして働くためには、さらに追加して、()で示した内容を深めることが必要不可欠です。具体的には、施設ケアプラン、ケア方法、スーパービジョン、事例検討会、施設経営等が含まれる。こうしたことを学習し習得できれば、「認定サービス管理責任者」という認証資格をだし、学習内容を高めることで、この資格の社会的評価を高めていく努力をしていったらいかがか。
 これは、現実離れした夢なのでしょうか。それとも、大学、施設、職能団体、行政が協力して努力すれば、実現可能なのでしょうか。

現在、サービス管理責任者の研修が都道府県レベルで行われています。この研修にどのような職種が参加しているかと言えば、施設長が多いと聞く。是非、社会福祉士の資格取得者や生活相談業務を行っていた者が参加してほしいと思う。うまくいかないものである。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(2)

2008年03月04日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
障害者領域でも、介護保険施設同様に、施設は夜間の居住部分と昼間の生活を支援する部分に分けられました。この後者には、リハビリ、生き甲斐、就労準備等のメニューがあり、必ずしも居住している施設が行っているメニューを利用しないで、他施設のメニューを選択し利用する場合もありうることになった。このことは、施設はアパートや住宅と変わらないものとなりつつあり、入所者の地域移行を促進していくことになる。

 こうした障害者自立支援法の動向は、利用者のQOLを高めるべく、利用者の意向を伺いながら、自己決定をもとに、ケアプランを作成し、必要な場合には地域移行を支援してことがポイントである。

 こうした業務は、従来の生活相談員や生活指導員と呼ばれてきた人が実施してきた以上の仕事が求められることになる。さらには、こうした業務を核になり推進していくことがレジデンシャル・ソーシャルワーカーの業務であり、制度的には「サービス管理責任者」が行うことになるのであろう。そのため、サービス管理責任者となるべくレジデンシャル・ソーシャルワーカーを養成していくべきである。そのため、まずは、サービス管理責任者の全体像やそこで必要な役割を明らかにし、そこで求められる役割が現状の社会福祉士のカリキュラムでどこまでカバーしており、どこがカバーできていないかの議論を至急するべきである。次に、明らかになったカバーできていない部分の教育を大学等の養成機関で実施するのか、職能団体が実施するのか、施設協議会が実施するのか、それらの団体が協力するのか、は別にして、レジデンシャル・ソーシャルワーカーを養成していくことが求められている。その養成された人材は、社会的に評価され、例えば「認定レジデンシャル・ソーシャルワーカー」あるいは「認定サービス管理責任者」として位置づけていくことができる。

 こうした仕組みを作ることができれば、そうした専門性の高い人材が配置されているかどうかは、利用者が施設入所に対して選択する際の、重要な評価基準の一つとなることができる。

 今、施設のソーシャルワーカーの制度はそうした方向に一直進に進んでいくべき時期にある。なぜなら、福祉人材確保指針改正では、社会福祉施設の相談員に「行政の任用資格」である社会福祉主事を位置づけていることに対して疑義が示されていること、さらに社会福祉士及び介護福祉士法改正での衆議院の附帯決議で、社会福祉施設での社会福祉士の登用をうたっていること、が指定できる。どこかが、奮い立って勇気を持って進めていきましょう。

 次回は、サービス管理責任者の役割について言及し、さらにその職に誰が就こうとしているかについてみていきたいと思う。

レジデンシャル・ソーシャルワーク論?(1)

2008年02月28日 | レジデンシャル・ソーシャルワーク論
 現在は、コミュニテイ・ソーシャルワークの議論が花盛りであり、施設で働くソーシャルワーカーについては、時には施設不要論もあり、影が薄い存在となっている。今後レジデンシャル・ソーシャルワーク論が萎んでいくとすれば、忍びない。さらに言えば、現に多くの社会福祉士はこのような場で働いていく以上、どうしてもレジデンシャル・ソーシャルワークを制度的にも確立していく必要があると考えるし、入所等の社会福祉施設がなくなることは考えられない。個人的には、社会福祉士の資格に追加してさらに施設でのソーシャルワークの知識や技術を有した人に、認証レジデンシャル・ソーシャルワーカーのアクレデーション資格を付与できることに、かすかなる夢をもっている。
 おそらく、社会福祉施設に生活指導員や生活相談員といった専門職らしき職員を配置しているのは、日本ぐらいであろう。この職員は戦後社会福祉施設が創設されるたびに制度化されてきたが、60年間でも、残念ながらレジデンシャル・ソーシャルワーカーとして位置づけられるには至っていない。
 最近の動向として、社会福祉施設での生活相談員といった職種が必置でなくなってきている。それに代わって、障害者施設ではサービス管理責任者なるものが位置づけれている。さらに、介護保険施設では、介護支援専門員というケアマネジャーの配置が義務づけされている。
 その意味では、私のかすかな夢も幻で終ることになるのか。いや、今だからこそ、サービス管理責任者や介護支援専門員の業務を取り込んだ、認証レジデンシャル・ソーシャルワーカーを作り上げたいものである。
 次回以降で、その可能性を探っていく、レジデンシャル・ソーシャルワーカー像を作り上げていきたいと思っている。