土曜クラスでお世話になっている秋元さんという素敵な女性に
子どものいる空間を考える上で
ちょっと参考になるかな、と思いましたので…
と、ご連絡をいただきました。
こういう本物を見る良い機会はなかなかありませんよね。
なのでこちらでもご紹介しちゃいます。
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ドイツでシュタイナー建築を学び、シュタイナー学校の建設などにも携わった
建築家の岩橋亜希菜さんが、東京・三田の知的障害のある子どものための施設を
デザインし、先ごろ完成しました。
色彩に溢れる美しい空間です。
現地で16日(月・祝)に開かれる見学会(オープンハウス)のお知らせを
お送りします。
以下、岩橋さんからのお誘いです。
少々長文ですが、こどもたちが大きく変化した様子が描かれていて
非常に興味深いので、そのまま転載します。
お読みくださいね。
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吉祥寺の 「愛の建築Vol.01」=「平和な気持ちになるいえ」から8ヶ月たちました。
ちいさな内装の設計ですが、おかげさまで、また「愛の建築」が生まれました。
"NPOスキルキャンプ"という、知的障害のある子どもを持った2家族を中心に、同じ悩みを持つ家族が集まって立ち上げたNPOのカウンセリング&セミナーの施設です。
ここは知的障害のある子どものカウンセリングと、そんな子どもとを持つ親が日頃、子どもと関りあうために自分たちも障害についてやそんな子どもたちとの関り方を学んでゆこうという目的にために作られました。
予算の無い中で、1フロア 78m を何処まで子どもの元気のための空間に出来るのか、この1点に焦点を絞って設計しました。
「子どものカウンセリングもしたい、同時に親たちに対するセミナーも開きたい」
と言う2つの要求がありました。
でも出発点は「子どもの元気」、そのための「カウンセリングの場」であり、
それ以外は副次的なものである。
大人は利用法を考えて融通できますが、子どもたちはそうはいきません。
ですから、2つの要求を出来る限り施主の芯を「子どもの元気」にシフトさせることが
先ず私の最初の仕事でした。
出来ることは限られている。既存のまま残さなくてはならないこともある。
後で出来ることは今回は残してもいい。
だけど、子どものカウンセリングに関る主要な部分は兎に角やるしかない。
子どもの視線、行動、そして様々な症状の子どもがここにくることを
考えなくてはなりません。
自閉症、多動症、アスペルガー・・・・・
改めて学ばねばならないことが沢山出てきます。
ドイツでシュタイナー治療をしているカウンセラー、医者・・・
色々な方にリサーチをして、いろんな書籍を読んで、
空間と子どもの疾病との関係を考えて、悩みました。
空間は環境として、無意識にひとと呼応するからです。
でもだからこそ、それに相応しい気分を持った空間が
治療の背後でそれを後押しすることも可能ではと思っているからです。
先に進むにはやってみないとわからないこともあります。
いくつかの空間的提案は実験的でもあります。
過敏症、アレルギーの子どものためには出来る限り自然素材を使いたい。
アレルギーと自閉症とは、ある意味関連がある。
だからここらへんも抑えておかなくてはいけないポイントだと思いました。
壁には一寸高いけど、「ハイクリンボード」という有害物質の吸収性に富んだボードに漆喰仕上で計画しました。
施主も設計も施工もみんなが半分ボランティア、
5月の連休はみんなで壁の漆喰の下塗りをしました。
無理を承知で頼む私。
細かなディテールが命を吹き込むから・・・
「良くなる筈」と思っていても、
もし無理を言ってやってもらって、出来上がった時に職人さんが「なんだぁー」と言ったら最後です。
士気も落ちるし、もう二度とやってくれない。
笑って、「もし出来たらやってね」と頼むけど、
ここは私にとっても、この施設にとても「生きるか死ぬかの勝負」なんです。
図面を見て「やりたい!」と思わないと先ずは動いてくれません。
数日後現場に行くと、ディテールが出来上がっています。
「やっちゃったのー!!」
「だって、かっこいいんだもん!やるっきゃないでしょ!!」
はにかむように答えてくれる若い大工さん。
施設は4つの小さなカウンセリング室とグループワークの場でもあるセミナー室、
待合、エントランス、それだけだけれど資金がない。
「セミナー室は大人のためだからエントランスとこの部屋の間仕はいらない!」そんな言葉に対して、
「子どもが喜んで入ろうと言う意識から、カウンセリングは始まる。
愛に包まれる・・・ハグされる空間の質が大事なんです。
「ここに関る人たちと子どもたちの出会いの場である、エントランスは大事」
そう話すとわかってくださって、予算を出してくださいました。
施主の坊やは、自閉症、そして閉所恐怖症・・・
工事の始まる前、白い壁とグレーのビニルタイルの床のがらんとした広い間・・・
彼は玄関の戸口に立ち止まって、「怖い」と言って入ろうとしませんでした。
工事が進んで間仕切が立ち始めると、部屋はどんどん狭くなって行きます。
エントランス正面に、セミナー室を分ける壁が立ちました。
円弧の壁です。
柔らかく包み込まれる気分をもって迎え、円弧の流れに沿って視線が動き、
自然と6角形の待合室に導かれて行きます。
久し振りに現場にやってきた、その坊や。
扉を開けて、ニコニコしながらスーッと待合室に・・・カウンセリングの小部屋に
次々と入ってゆき遊んでします。
普段しゃべらない彼が、さかんにいろいろと話をします。
これを見ていたお母さんがびっくり!!
「車に乗っていて、トンネルに入るときでさえ悲鳴をあげるこの子が・・・・
この子にとって、ここはもはや狭い場所ではないんですね」
「やっぱり、この壁作ってよかったですね。」
「大人はいくらでも、お世辞を言います。でもこの子たちにはそれは出来ません。
この子たちを見ていれば真実がわかります。・・・・良かったです」
と仰っていたことばに勇気をいただきました。
そして失語症といわれていた子どもが、この空間に入って遊んでいると、大きな声で話を始めた。
たまたま、その子のカウンセリングをしていたかカウンセラーがこのビルの上階に住んでいらして、
「あの子の声が聞こえる!!」びっくりして飛んできた。
そんな話も後日談としてお母様からお聞きしました。
私も改めて「空間の質とその力」と言うものを考えさせられました。
「こんな大変なことできね-よー」と言いながらも、
頑張ってくれた職人さんたちも、出来上がると、
「やっぱりかっこイーッすねぇー、やっぱり苦労した分良くなっています」
とニコニコ、子どもたちの遊ぶ姿を見て、またニコニコしてくれます。
既存のまま残された部分もあります。でも・・・
小さな施設、小さな資金の中で、みんなが愛を込めて頑張ってくれた施設です。
7/16日(月曜)Openhouseをさせて頂きます。
もしお時間がありましたらお越しください。
そして感想などお聞かせいただければ、それを糧にまた精進したいと思います。
13:00-15:00
場所は、
東京都港区三田三丁目-4-18 二葉ビル 2F
都営浅草線、三田線A3出口 徒歩5分
JR 田町 徒歩7分です。
1階は花やさんで、2階に歯医者さんです。
ピロティ-の奥に玄関があります。
各フロア-2室ですから、歯医者さんではないほうが現場です。
Map
http://maps.google.co.jp/maps?q=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E6%B8%AF%E5%8C%BA%E4%B8%89%E7%94%B03-4-18
亜希菜
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いかがでしょう。
よかったら足をお運びくださいね。
ところで、メールして下さった秋元さんのご自宅もシュタイナー建築なのだそうで、フォーラムスリーの会報で紹介された事があるのですよね。
見てみたいなぁ。