詩誌を捲りながら今月もいまひとつ良い詩がないな、と思っていたところに、こんな作品が飛び込んできた。
鏡の諸体
窓のうしろの
このすすり泣き
冬の寒さの中の月
二つの声を持つ
この叫び壁に立って
届く
この粗野
生でも死でもない
大河に凍る吐息
大通りから大通りへ
この憂鬱
黒点
この喪は
からのままの寝台
空は孤独に似る
創刊から20周年を迎えた「世界俳句」76号に掲載された俳句だ。本来は独立した俳句の連作だが、このように並べると、優れた1篇の自由詩になる。誌面にはモロッコ語も記載されているが、今回は割愛した。
ぎりぎりに切り詰められた律が、誰とも特定できない叫びのように、現在と歴史の風景を立ち上げる。夏石の役も良く言葉の接続と切断の連鎖が、緊張感をつくり、奥行きのある風景を声として立ち上げる。
この緊張を立ち上げるのは、内在化した俳句の律であることはいうまでもない。戦後詩の巨人の一人、吉岡実を思う。
言葉はやがて飛翔し、神話的原点にまで絞られていく。
自由詩とは何か、考えさせる秀作。
鏡の諸体
モハメド・ベニス(モロッコ)
和訳 夏石番矢
和訳 夏石番矢
窓のうしろの
このすすり泣き
冬の寒さの中の月
二つの声を持つ
この叫び壁に立って
届く
この粗野
生でも死でもない
大河に凍る吐息
大通りから大通りへ
この憂鬱
黒点
この喪は
からのままの寝台
空は孤独に似る
創刊から20周年を迎えた「世界俳句」76号に掲載された俳句だ。本来は独立した俳句の連作だが、このように並べると、優れた1篇の自由詩になる。誌面にはモロッコ語も記載されているが、今回は割愛した。
ぎりぎりに切り詰められた律が、誰とも特定できない叫びのように、現在と歴史の風景を立ち上げる。夏石の役も良く言葉の接続と切断の連鎖が、緊張感をつくり、奥行きのある風景を声として立ち上げる。
この緊張を立ち上げるのは、内在化した俳句の律であることはいうまでもない。戦後詩の巨人の一人、吉岡実を思う。
言葉はやがて飛翔し、神話的原点にまで絞られていく。
自由詩とは何か、考えさせる秀作。
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