まほろば俳句日記

毎日見たこと聞いたこと感じたことを俳句にします。JーPOP論にチャレンジ。その他評論・エッセー、学習ノート。競馬も。

【死の確実さ】陽炎のたかさ一人逝きまた一人逝き 青木栄子/一句鑑賞

2021-04-06 22:25:12 | エッセー・評論
陽炎のたかさ一人逝きまた一人逝き  青木栄子
1月まで参加していた俳句結社の支部(通信)句会で思わず⦿を打った一句。
作者は当支部の主催者でもある。1月までと書いたが、昨年2月からわずか1年間の参加であった。結社そのものは現在も継続している。陽炎という言葉は春の季語とされているが、春半ばのちょうど今頃桜も散った頃あるいはそろそろ桜の開花の報せも入る頃なのか、少なくとも上京してからは私は見たことがないので判然としない。その陽炎なるものの高さとあるから生き物又は何某かの造形物のような高低差を持つものであるに違いない。そしていったん切れた後に『一人逝きまた一人逝き』とある。陽炎という自然現象の直後に人間の死をアッサリと特段の感情を籠めずに反復した。その反復に照応するのが陽炎の《たかさ》という表現なのである。また同時に上下句の行間には、作者の沈黙の領域が際限も無く拡がっているようにも感じる。この高さは一人また一人と員数としてまるで手毬唄のように数え上げられる。作者ははや80歳という。身近に確実な死はあまた見られるはず。また昨今の新型コロナ禍によって有名人が次々と亡くなってゆく。いずれにしても人間の死の確実さを見事に一句に描くことが叶った。この陽炎の《たかさ》は作者自身の身の丈とも合致しているように思われる。・・・《続く》
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