くまだから人外日記

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【偽書】虹メイル・アン 〔第六話〕 18

2017-03-12 17:41:19 | 【偽書】シリーズ
「マスター。基盤がロック解除信号は受け付けましたが」
「肝心のモーターを動かす動力源はお前のバッテリーでは無理か」
「旧型のバッテリーしか搭載していなくて誠に申し訳ありません」
「仕方が無いさ。これだけ厳重な扉だ。こんな事など想定してはいない時代に機器点検作業用として設計されたお前ではそれだけの動力は備えてはいないのだからな。さて八方塞がりだな」
「技局長。非常用階段方向から金属の崩落音が」
「出られても階段は使えないと。更なる八方塞がりか…まさに十崩(とほう)塞がりかな。ハハハ」
「面白くありません」
「語彙に無理があります。マスター」
技術用メイルにまで突っ込まれる技局長。





「壊しちゃってもいいよね」
「そうするのが最短時間で中部へ入る最良の選択でしょうね」
「どいてて。アン」
メルティは左右開きの扉の隙間を強引に作り両手を入れる。
そして一気に一体が入り込めるだけの隙間を作り出す。

「さあ行くよ、アン」
「助かりますよ、メルティ」
「左右の腕のパワーアシストが使えないから仕方がないよ」
「内部は火災の様子ですね。各種制御盤も爆発の直撃や自動消火装置の薬剤を受けて故障しているでしょうし、せめて原子炉の緊急停止アクセスと、地下へ繋がるエレベーターなどの電源供給が急務ですね」
「どちらを優先する?」
「地下に取り残された職員の人命が最優先です。電源供給を先にしましょう。原子炉の熔解までにはまだ猶予があります」
「どちらにしてもあまり猶予は無いね」
「こんな時は電力供給可能なサニーと制御盤のフォローが出来るセイラが適任なのですが、サニーは地下、セイラは外部へ脱出した技師と外からのアクセス作業中です。どちらにしても私達は可能な限りの電力の回復に専念するのみ…そのセイラからデータ入信…カレンとサニーが崩れた無数の階段用鉄骨材に挟まれ動作不能な様子です。最悪ですね」
「私にも来たよ。急ごう。アン」




「僕もアン達の側へ…」
「この状況で一般市民、ましてや子供を行かせる訳には行きません」
待機中のヘリの中で僕は問答を繰り返していた。
仮に僕が現場に入って出来る事なんて何も無いよね。
でも何とかしたい一心で僕は言い続けるしか出来なかった。






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筆者敬白