同行作業をしていた自衛隊の好意で空路で目的地まで一足飛びに向う事が出来た仁美と悌見は、上空から見る惨状に言葉少なに給水を取りながら着陸を待つ。
「リミットに追われているアタイらの出来る事って本当に少ないよね」
「なら尼虎様を見捨てて探索に戻るかい」
「そ、そんな事出来る訳ないだろ。アタイ達や何より殿様の大恩ある虎千代様を見捨てとあっちゃ、南総里見家臣の名折れだよ」
「なら、愚痴ってないでありがたく体力を温存しよう。尼虎様は待っていて下さるさ。俺達の来る事を。俺達の出来る事を」
「分かった。着いたら起こしてよ、テイ」
そう言うといきなり眠りこける仁美。
「おい、こら…もう寝たのか?」
「長らく牢に閉じ込めた恨み、ここで晴らさでおかぬものか」
広間で手枷を外された細身長身超美形の男性、細川ガラシヤはいきなり両手を天に開くと一気に両脇から左右に振り下ろす。
「殿、だからこやつは危険だと進言致しましたものを」
「ま、待て、ガラシヤ!焦るでない」
「人を散々牢獄に繋いでおいて何を今更。わらわは犬や猫では無いぞ」
切れ長の瞳の奥に映る男の姿は氷の様な冷めたブルーに沈んでいた。
「手を収めよ。今お主を撃ちとうない。ひとつこの国の為に働いてもらいたく枷を外したのだ」
「わらわの知った事か。忠義を無くした国など厄災にあって救われなくて当然。この地を荒れ果てた大地に返してくれるわ」
派手な赤い襦袢を纏った美少年は薄笑いを浮かべて、ワハハハと高笑いを繰り返す。
「あの目を閉じさせよ。あの手を押さえ付けよ」
「殿、もう遅おございます。ガラシヤの魔性は止められませぬ」
容堂が叫ぶのに合せる様に、警護の者達が次々にガラシヤの妖力の前に倒れて行く。
「お逃げ下さい!殿」
そう声を発すると家老頭の容堂も意識を失いその場に倒れ込む。
「容堂!」
「次は貴様もこうなるのだ」
ガラシヤは再び両手を上に上げ、手を翳して怪しげなバテレンの言葉を唱える。
「お待ちなさい。ガラシヤ。殿に手を上げる事、相成りません」
「麝香(じゃこう)!」
「殿様、順序が逆でございましょう。今は大義の為ガラシヤの枷を解いたのなら、こうなるのは自明の理。もう一度言います。手を収めなさい、ガラシヤ」
「女風情が何を」
「殿方はその怪しげな魔力で倒せても、“女ふぜい”には手を振り上げる事も出来ぬのでしょう。直ぐに力を収めなさい。そんな事をする為に神父様より洗礼を受けたのですか?」
「リミットに追われているアタイらの出来る事って本当に少ないよね」
「なら尼虎様を見捨てて探索に戻るかい」
「そ、そんな事出来る訳ないだろ。アタイ達や何より殿様の大恩ある虎千代様を見捨てとあっちゃ、南総里見家臣の名折れだよ」
「なら、愚痴ってないでありがたく体力を温存しよう。尼虎様は待っていて下さるさ。俺達の来る事を。俺達の出来る事を」
「分かった。着いたら起こしてよ、テイ」
そう言うといきなり眠りこける仁美。
「おい、こら…もう寝たのか?」
「長らく牢に閉じ込めた恨み、ここで晴らさでおかぬものか」
広間で手枷を外された細身長身超美形の男性、細川ガラシヤはいきなり両手を天に開くと一気に両脇から左右に振り下ろす。
「殿、だからこやつは危険だと進言致しましたものを」
「ま、待て、ガラシヤ!焦るでない」
「人を散々牢獄に繋いでおいて何を今更。わらわは犬や猫では無いぞ」
切れ長の瞳の奥に映る男の姿は氷の様な冷めたブルーに沈んでいた。
「手を収めよ。今お主を撃ちとうない。ひとつこの国の為に働いてもらいたく枷を外したのだ」
「わらわの知った事か。忠義を無くした国など厄災にあって救われなくて当然。この地を荒れ果てた大地に返してくれるわ」
派手な赤い襦袢を纏った美少年は薄笑いを浮かべて、ワハハハと高笑いを繰り返す。
「あの目を閉じさせよ。あの手を押さえ付けよ」
「殿、もう遅おございます。ガラシヤの魔性は止められませぬ」
容堂が叫ぶのに合せる様に、警護の者達が次々にガラシヤの妖力の前に倒れて行く。
「お逃げ下さい!殿」
そう声を発すると家老頭の容堂も意識を失いその場に倒れ込む。
「容堂!」
「次は貴様もこうなるのだ」
ガラシヤは再び両手を上に上げ、手を翳して怪しげなバテレンの言葉を唱える。
「お待ちなさい。ガラシヤ。殿に手を上げる事、相成りません」
「麝香(じゃこう)!」
「殿様、順序が逆でございましょう。今は大義の為ガラシヤの枷を解いたのなら、こうなるのは自明の理。もう一度言います。手を収めなさい、ガラシヤ」
「女風情が何を」
「殿方はその怪しげな魔力で倒せても、“女ふぜい”には手を振り上げる事も出来ぬのでしょう。直ぐに力を収めなさい。そんな事をする為に神父様より洗礼を受けたのですか?」