傍目と現実のギャップは恐ろしくも、ときに愉快痛快でもある。
「いやぁ、いつもモテモテで羨ましいです!」
ひょんなところを知り合いに見られたらしい。
虎ノ門の大きな交差点を、昼日中から美女二人に挟まれて歩いていたという。
両側から腕を絡ませていた美女は、シャネルの純白スーツに栗色縦ロールのロングヘア、
パールホワイトの長い爪と、付け睫毛が人目をひいていたらしい。
傍目と現実のギャップは恐ろしくも、ときに愉快痛快でさえある。
その日、少々小難しい仕事を頼んだ見返りに、
Y子とP子が要求してきたのは、極上ランチビールであった。
三ツ星ホテルのガーデンレストランでのランチビールは、
値段もそれなりではあるが、何より、今どきとはいえ、昼から酒盛りの客は稀有である。
後ろめたい気持ちもあり、返事をしぶっていると、
「それではこのお話はなかったことにしよう」Y子とP子は断固としていた。
「それは困る。それだけはお許しください」僕は答えた。
「それなら素直に要求にしたがえ!まず金!♪金を出す気はあるな?!」
「出させていただきます」
「一緒に行くな?!付き合うな?!」
「喜んで」
「おっしゃ~!♪」Y子とP子の威勢のよい掛け声が響き渡った。傍目と現実のギャップは恐ろしくも、ときに愉快痛快でもある。
ふたりの姿を目のあたりに、
荒ぶれた海で戦う男たち、解体作業の逞しい男たち、僕はそんな人間を思い浮かべていた。
両側から腕を絡ませられているように見えるのも、
実は捕獲されている状態であったのだ。
ホテルへ向かう途中で、僕が「あっ、用を思い出した!」などと
逃げ出さないためのリード代わり。
遠めには聞こえないであろうが、
Y子とP子は、僕に腕を絡ませながら、
「えいほっ、えいほっ」と掛け声をかけて歩いている。
捕獲された罪人が、籠に乗せられ、番やにひかれていく、の、状態。
江戸時代の悲劇が蘇る。
傍目と現実のギャップは恐ろしくも、ときに愉快痛快でもある。
このような誤解曲解は、はた迷惑ではあるが、
なぜか少しだけ愉快痛快な気もしないでもない。
「いやぁ、いつもモテモテで羨ましいです!」
ひょんなところを知り合いに見られたらしい。
虎ノ門の大きな交差点を、昼日中から美女二人に挟まれて歩いていたという。
両側から腕を絡ませていた美女は、シャネルの純白スーツに栗色縦ロールのロングヘア、
パールホワイトの長い爪と、付け睫毛が人目をひいていたらしい。
傍目と現実のギャップは恐ろしくも、ときに愉快痛快でさえある。
その日、少々小難しい仕事を頼んだ見返りに、
Y子とP子が要求してきたのは、極上ランチビールであった。
三ツ星ホテルのガーデンレストランでのランチビールは、
値段もそれなりではあるが、何より、今どきとはいえ、昼から酒盛りの客は稀有である。
後ろめたい気持ちもあり、返事をしぶっていると、
「それではこのお話はなかったことにしよう」Y子とP子は断固としていた。
「それは困る。それだけはお許しください」僕は答えた。
「それなら素直に要求にしたがえ!まず金!♪金を出す気はあるな?!」
「出させていただきます」
「一緒に行くな?!付き合うな?!」
「喜んで」
「おっしゃ~!♪」Y子とP子の威勢のよい掛け声が響き渡った。傍目と現実のギャップは恐ろしくも、ときに愉快痛快でもある。
ふたりの姿を目のあたりに、
荒ぶれた海で戦う男たち、解体作業の逞しい男たち、僕はそんな人間を思い浮かべていた。
両側から腕を絡ませられているように見えるのも、
実は捕獲されている状態であったのだ。
ホテルへ向かう途中で、僕が「あっ、用を思い出した!」などと
逃げ出さないためのリード代わり。
遠めには聞こえないであろうが、
Y子とP子は、僕に腕を絡ませながら、
「えいほっ、えいほっ」と掛け声をかけて歩いている。
捕獲された罪人が、籠に乗せられ、番やにひかれていく、の、状態。
江戸時代の悲劇が蘇る。
傍目と現実のギャップは恐ろしくも、ときに愉快痛快でもある。
このような誤解曲解は、はた迷惑ではあるが、
なぜか少しだけ愉快痛快な気もしないでもない。